あからさまに動揺を見せたのは、隼人だった。アイドルならよく聞かれる質問と言っても過言ではない。だが、隼人はこの手の質問に答えるのが苦手だった。例を挙げるとするならば、初デートはどこに行きたいか。夏のデートはどこに行きたいか、冬のデートは。そのアイドルの恋愛観を聞き出すだけで、ファンサービスとして成立する。あるアイドルは自分の求められている理想を。あるアイドルは、その時の気分で。仕事として答えることが最善策である。
しかし、隼人は至極真面目な恋愛観を持っているが故に嘘はつけないのであった。
「す、好きなタイプはよく笑ってる子かな!
俺が歌うの好きだから、歌好きな子とかも良いなって思うし……あ! あとはしっかり者だけどリードもさせてくれる人かなぁ。お、俺も男なんだぞ!ってところを見せられる子が、いいかなって思います 」
*
インタビューを終えた楽屋は四季を筆頭に、話し声が耐えなかった。そんな中、旬が小さく息を吐き隼人の名前を呼んだ。まるで、子供をしかるような目をしている。
「ハヤト、さっきの質問。また同じ人のことを答えましたね」
「え、え? 何の質問のこと?」
「とぼけないでください。好きなタイプの話ですよ」
「うっ、それは……」
「ほんっと、ハヤトは分かりやすいよな? だってあれって前に付き合ってたあ…」
「あーーー!! ハルナ!!」
春名が躊躇わず名前を出そうとした瞬間、隼人は春名の口を塞ぐ。春名はケラケラと笑っていて、完全にからかっている。その光景を見て、旬はまた息を吐いた。
「まぁ確かにコロコロタイプが変わるよりは一貫してていいのかもしれないけど……ファンの子は結構気にする項目ですし、たまには変化を付けてもいいと思います」
「そうだぞー? ライブの参戦服の参考とかにされたりしてるんだしさ」
「ハルナっちはコロコロ変えすぎじゃないすか? この前は清楚な子って言ってたのに、今日はギャルって言ってたじゃないすか」
「そうですよ。ハルナさんはコロコロ変えすぎです。SNSでも突っ込まれてるんですから」
「ハルナのファンの子たち、いつも服装が違う……」
「キャー! 女の敵っすよ!」
ぎゃーぎゃーと話の論点が春名へとすり変わるが、隼人の表情は晴れないままであった。変えろと言われて、簡単に変わるものでは無い。そして、彼の中でも仕事として、アイドルとして気をつけなければいけないことなのは、重々承知しているつもりだ。
いつまでもあの頃にすがっている自分が、情けないことも。
「いっそのこと、今までのハヤトからは考えられないタイプとか言ってみたら? あー今人気の女優ぽい感じとかさ!」
「む、無理だって。俺そんな器用じゃないし……というか仕方ないだろ。好きになったのなんて、一人しかいないんだから……」
隼人がぽつりと零すと、しんっと静まり返ってしまった。そうして、子供をあやす様に四人が隼人の肩に手を置いた。
「ハヤト、引きずりすぎです」
「ハヤトっちって意外と女々しいんすね!」
「ハヤトの曲……最近恋愛ソングが多いのって……」
「ハヤト〜お前そんだけあの子のこと好きなら今から連絡してみろよ」
「なっ!! おい! やめろよ!」
春名の手に握られていたのは、隼人のスマホであった。そしてその画面に映し出されている名前は何度も見た彼女の名前だった。