つまさきでつついて恋心


「好きってどういうことだ?」



なあ仁科…と前置きを置いて、神妙な面持ちで先ほどの言葉を発した轟くん。まさかそんなことを聞かれるなんて、と口をぽかんと開けたままにしているわたしはさぞ滑稽だろう。「なあ、どうなったら好きっていうことになるんだ?」とさらに聞いてくる彼は至って真剣で、きっと本当に疑問に思っているんだろうなと感じた。ただ、轟くんからこういう好きの話なんて出てきたことがない為、ただただ驚いてしまう。なんとなくアンバランスだ。



「え?どうしたの轟くん、好きな子でもいるの?」
「いや、そういうわけじゃねぇけど」
「う〜ん…わたしもよくは分からないけど、」



例えばその人がほかの人と仲良くしてるとモヤモヤしたりとか、その人にはずっと笑顔でいてほしいとか、単純にそういうことでいいんじゃないかなと伝えれば、余計に眉間のしわが深くなってしまった。別にわたしは恋愛上級者でもなんでもないし、まともなアドバイスができているかは不安だ。男の子にドキドキすることはあっても、それが恋愛感情なのかと聞かれたら違うと思う。(現に夏休み中にあった轟くんとの出来事は、忘れられないくらいドキドキした)



「そういうもんか?」
「そういうもんだよ」
「…友達とは、また違うのか」
「違うと思うなあ その人にもっと触れたいとか、その人といるとドキドキするとか!人によって様々だとは思うけどね」



そう言って笑えば、一瞬動きの止まる轟くん。ちょっと生意気なことを言ったから引いてるのかもしれない…。そう思い、「ごめんね、わたしも実際に男子のこと好きになったりとかあんまりないから、参考にならないかも」と付け加えておいた。「好きって難しいんだな…」と呟く彼の頬は、少しだけ紅潮していた。




20220610