隠れてないで出てこい本音


「勝己ってさ、どうしてわたしのこと好きになったの?」
「あ?」



わたしの聞いたことに対して、驚くほど顔を歪める勝己。この間告白され、お断りを入れたばかりだというのに彼は全く諦める様子もなく、以前よりもさらに近くにいるようになった。基本的には焦凍くんといることの方が多いけれど、その間も少し離れたところからじいっとガン飛ばしてくるもんだから居心地はかなり悪い。…べつにわたしは特別な容姿でもなければ成績も上位ではない。一体、彼はわたしのどこを好きになったんだろう。



「いや、なんか気になって…最初の印象お互いに良くなかったしさ」
「………入試の時から、多分気になってた」
「え、そんな前から…」
「お前が他のヤツと話してんの見て、だんだんイライラした」
「!」
「特に轟に対してニコニコしてんのもすげームカつく、つまりそういうことだろ」



思いがけず素直に答えてくれる彼の目は真剣そのもので、赤いまなざしがばちりとわたしの瞳を捉えた。爆豪勝己という人間は、変なところで真面目なのだ。好きになった理由なんて聞くんじゃなかった。顔を手で覆って俯いて、ため息をつく。そんなわたしの頭をゆっくりと撫でる勝己。



「…おいなんか言えや」
「ごめん、うれしくて…」
「……付き合う気になったかよ」
「それとこれとは別!」
「アァ!!?」



わたしの言っていることは矛盾しているだろう。勝己からの気持ちはすごく嬉しい。嬉しいけれど、きっとわたしは勝己の邪魔になる。ヒーローの勉強もまだまだ未熟だというのに、彼の気持ちになんか応えられるわけがないのだ。



「勝己には、もっといい子がいるよ」



そう伝えたけれど、頭に乗っかった手はやさしくわたしの頭を撫で続けたのだった。




20220630