おれの基準なんてぜんぶアンタなんだけどさ



デート中に気付いたことがひとつある。真澄はだいぶモテるみたいだということ。

いつもの性格からは全く想像がつかないけど、よく考えたらわたしはカンパニーの中にいるときの真澄しか見たことがない。たとえば、咲也とか綴に対する言葉遣いはかなりクールでさして興味ないという感じではあるけど、気心知れた仲だしそれが普通なのだと思っていた。実際は別にそういうわけではなく、好きな子以外にはあんな表情や態度を見せないのか…と今更ながらに痛感した。真澄は、本気でわたしのことが好きなのかもしれない。まだ、かもしれないという段階だけど。
映画の後でお手洗いに行きたいと、少しだけ真澄と離れて彼のもとに戻れば、かわいらしい女の子2人組から声をかけられているところを発見した。うそ、あの真澄が女の子に声をかけられている。なんて最初は驚いたけど、あの見た目で女の子の目を引かないわけがない。女の子たちはニコニコと笑って真澄に話しかけているのに対し、真澄はといえばほかのカンパニーメンバーに見せるような無表情、時々めんどくさそうな眉間にしわの寄った顔。じいっと観察をしていると、「あきら!」と花の咲くようなかわいい笑顔で呼ばれてしまった。(こそこそ見守っていたのにばれた…)



「何してるの、早くいこ」
「え、あ〜っと、あの人たちは?いいの?」
「知らない、どうでもいい」
「(どうでもいいってことはないでしょ…)」



ちらりと振り返れば、彼女たちはがっかりとした表情を浮かべてこちらを見ていた。公演もひとつこなしたし、ファンの子がついてもおかしくない。ファンにもこんな態度だったらどうしよう…その時は、ちゃんと言って聞かせねば。そう思っていれば「どうしたの?」と覗き込んでくる真澄。(あまりにも顔が近くて変な声がでた)



「もしかして嫉妬した?」
「は?」
「俺、アンタしか見えてないから」
「ちょ、ここ外…!」
「心配しなくても俺の一生かけてアンタを幸せにする…好き…」
「ど、どこか入ろう真澄!」



このままだと路上で告白劇が行われてしまう!焦ったわたしはまわりの人の視線を感じながら、カフェに入るように促した。「あきらと一緒ならどこでもいい」と握った手を離さない真澄は、従順にわたしに着いてくる。カフェに入ると冷房が効いているのかひんやりと涼しくて、もう夏も近いんだなあと感じた。席に座るとなんだかおなかが空いてきて、目についたパフェをひとつ頼む。きらびやかな見た目のフルーツパフェなんて、いつぶりだろう。わたしがぱくぱくと食べているのをニコニコとして見ている真澄は、もういつもの真澄に戻っていた。



「あ、あきら」
「ん?……えっ、なに?」
「クリーム、ついてた」



「かわいい」そう言ってぺろりとわたしの口元から奪ったそれを舐める仕草は色っぽくて、とてもじゃないけど高校生には見えなかった。顔がぶわりと赤くなるのを感じて、すこし俯けば、ふふんと楽しそうに笑う真澄の声がした。




(180620)