瞼越しの朝

ぎゅう、ぎゅう、とただ白いキャンバスの上に足跡を残す音だけが響く。広くどこまでも続く、雪に覆われた白い大地がまぶしくて目がチカチカする。今日は吹雪いていないし、寒さは突き刺すようだけど晴れている分とても過ごしやすい。ふう、と一息ついて荷物を降ろし悴んだ両手を擦り合わせる。
晩御飯の足しになればと思って野うさぎかもしくは鴨でも獲れたらと思い出てきたが、本日の収穫はゼロだった。また尾形さんに嫌味を言われそうだと考えただけで眉間に皺が寄った。(「俺を連れて行かんからだ、残念だったなあ蘇芳?」という彼の嫌みたらしいニヤニヤした顔が思い浮かんだ)その瞬間、ガサリと木々が揺れた。咄嗟の判断で銃を構えそちらに銃口を向ければ、そこにいたのはアイヌの女の子。



「なんだ、アイヌか…」



ポツリと呟いた瞬間、後ろから木々の揺れる音がしたと思った時には既にわたしの身体は完全に拘束されていた。力が強すぎて、もがけばもがくほど締め付けられるように身体が痛む。羽交締めにされたかと思えばそのまま首を絞められ息が上手くできない。なんだこの男、馬鹿力すぎる。離してもらいたくて彼の腕をバシバシと力なく叩くが全く効果はなく、締め付けは強くなる一方だ。



「テメェ、アシリパさんに何してやがる」
「ぅ、はっ…な、に」
「あの子に手を出す奴は許さねえ」
「は、 話を くっ…」



意識が遠のきかけた頃、わたしが初めに銃口を向けたアイヌの女の子が「杉元!何をしてる!」と声を荒げた。その瞬間にパッと手が緩み、ゲホゲホと情けなく咳き込むわたしを見た男は、「え、お、女の子…?」とショックを受けたように突然狼狽え始めたのだった。







「ほんっとうに悪かった!!」
「…良いですよもう、顔を上げてください」
「いやでも…俺の気がすまないよ」
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