※2人とも風俗にいく描写があります
※阿部に関してはモブとの絡みがあります
※大学卒業までには花井くん以外は名前呼びかと思いますが全員そうすると訳わかんなくなったのでアベミハの2人だけ名前呼びにしてます
「おい隆也!大学デビューだ、イイとこ連れてってやるよ」
「……は?」
ルームシェア
絶対に忘れることができない3年間を過ごした高校生活が終わり、大学へと進学した俺たちはそれぞれの道に進み始めた。
とはいいつつ、バッテリーであるレンとは卒業してもルームシェアという形でまた一緒に過ごすことになったのだ。
大学は別なもののそれぞれのアクセスしやすい場所にある部屋で2LDK。ありがたいことに家賃は親に出してもらえており、自分達は生活費と光熱費を稼いでやりくりすることになっている。
進路を考えた時にどうしてもレンの事が頭から離れなかった。レンは推薦で来てるところにするかもそうなると寮か、一人暮らしかな、と言っていた。
いざ今の距離が変わると思うと変な感じがした。
野球やってる時は親よりずっと一緒にいた感覚がしてたし、離れるってどんな感じなんだろうか。案外気になんねーのかな、とか考えたりした。
家で大学のパンフレットを眺めながらその事をふと思い出して、小さくこぼれた「…レンはどうすんのかな」という言葉を親が拾う。
母親が「いい距離の大学同士なら三橋くんにルームシェア誘ってみたらどう?別に4年間ずっととかじゃなくてもいいし、折角仲良くなれたんだから離れるのなんか勿体無いわよ」と。
いや、別に俺そんなにレンと一緒にいたいわけじゃねえけど…と返したがアイツが実家を出て自分で生活の管理が出来るとは思えなかったし、高校よりもっと上の野球をする事になるんだから質を下げてほしくないし、色々サボりそうだし、勿論レンが望むなら大学が変わってもサポートしたいと思っていたし……と色々出てきて、
とりあえず言うだけ言うかと放課後に話すとアイツはすんごい嬉しそうに笑って元気よく「うん!」と返してきた。
そこからポンポンと話が進み、やっぱりと思うレベルでレンの親も心配していたらしく「阿部君が一緒なら安心だわ!あ、でも嫌だったらすぐに辞めて良いから!この子呆れちゃうほど生活能力なくって…」というおばさんに大丈夫っすよ慣れましたし、と返したのを覚えている。
家賃も浮いたし、部屋も綺麗で広いし、レンと野球観戦出来るし、なんだかんだで浮き足立てる自分に気付いてはいた。
高校の同級生とお泊まり感覚で楽しく思えてくる。最初だけかもしれないがそれはそれで経験として受け止めておこう。
「レン、今日晩飯いらねえから」
「え!あ、う、うん!分かった!」
「大学の先輩と飯行ってくるわ。夜遅く帰ると思う。起こしちまったらごめんな」
「お、俺、大丈夫!」
おう、とレンの頭にぽんと手を置いて家を出た。
案外、生活はストレスじゃなかった。アイツが飯担当、俺が掃除担当と大まかに分けつつ、気付いた方が出来る方がやる、できない時は共有するとか最初に決めたらレンは割とちゃんとやっていたのだ。
相手が俺だからってのもあるみたいで、引っ越して半月くらいにそのことをつつくと、レンは嬉しそうにニヘニヘしながら
「た、タカヤ、くんと、いっ、しょに生活、楽しい、くて、お、おっ、お互いに力、合わせて、なんか、うっ嬉しい、んだ!」
と言ってきてなんか変に俺も嬉しくなってそうかと頭をぐしゃぐしゃにした。
まあ、散らかしたままだったりゴミ捨て忘れた度にウメボシ喰らわしまくってたのもあるけど、アイツも俺のキレるラインが分かり始めているようだった。
「ふん、やるじゃねーか」
まあ、俺が育てたみたいなもんだしな。こんくらいはやってくれなきゃ俺の時間が無駄だったみてーになるしな。
鼻歌を溢しながら大学へ向かった。
そして、大学終わりに飯食いに行く予定の先輩から言われた冒頭のセリフ。
「おい隆也!大学デビューだ、良いとこ連れてってやるよ」
「……は?」
「は?ってなんだよ。は?って!
先輩に向かってなんだそれは!良いとこ連れてってやるよ!っつってんだろ!」
「いや、別に興味ないって言うか…」
クソ…取り込んで神ノートとか過去問のプリントとかくれねーかなとかワンチャン飯奢ってくれんのかと思って来たのに変なこと言ってきやがって…!
イライラしていると先輩が肩に手をかけてきて「ほら、お前童貞だろ?可愛いボインのねーちゃん教えてやるからさ」とか言ってきてふと思う。
「(いや…まあ…興味がないとは言わないけど…)」
だとしてもすぐに童貞を捨てたいとかヤりたいとかそんなもん考えたことも無くて、タイミングがきたらでいいだろ…てか童貞を知らんプロの女に捧げるのもなんか嫌な、気もしない…とか自分で気色悪い思考をしだして考えることをやめた。
そして先輩に引きずられて、気付いたら風俗の前に立っていたのだ。
「(いざ目の前にすると…なんか……)」
凄いドキドキしてきた自分がいる。
やりたいやりたくないの前に人生経験としてどんなもんか興味がとまらなかった。
田島なら真っ直ぐに入っていきそうだな…とか色々考えていると先輩にトン、と背中を押される。
「楽しんでこいよ」という言葉が変に耳に残った。
薄暗い廊下と案内された部屋に入ると、いかがわしいライトに照らされて薄いもはや透けてるキャミソールを着た女が笑ってこっちをみていた。
いざ入ると固まってしまい、扉の前でただ棒立ちしてると女が寄ってきて俺の首に手を回してきた。
「わあ!君凄いかっこいいね〜。嬉しいな〜私今日ラッキーかも」
「はぁ…」
ムニムニと俺の鳩尾あたりにでけえ胸を当ててきて感じたことのない感覚に胸がすげえバクバクし始めた。呼吸も上手くできなくて、女から香ってくる甘い匂いにクラクラしそうになる。
そっと避けようとすると余計に引っ付いてきて「コースは…挿入までになってるから目一杯楽しんでね」うっとりしながらベタベタ俺の体を触ってきて俺じゃ無くてなんなら女がもてなされてるみたいになっ…………待ってくれ挿入までとかなんの話だ。
「お、俺…挿入とか別に…………」
「えー!もう料金もらってるしダメだよ〜!それに私超楽しみなのに!お兄さんも凄いドキドキしてるし…」
「ここも大きそうだし…」と俺の股間に手を伸ばしてきて思わず肩を掴んで離した。
ぐっと歯を食いしばって脳を回そうとするが変に緊張して動かない。女も「もー!さっさとヤろうよ〜!時間ないんだからさ〜」と手を伸ばしてくる。
こ、この女いい加減に…!!!!と声をあげそうになった瞬間に俺のポケットに入ってた携帯が鳴った。バッと見るとレンからで『帰りに買えたらボディーソープお願いします』とだけあった。
ふと頭にそういえばストックも無くて買わなきゃなと思ってたんだったわ、と浮かんで速攻で『分かった』とだけ返す。
すると横から女がのぞいてきて「なに、彼女?」とニヤニヤしてきてまた腕にひっついてきた。
「分かった!マンネリでここ来たの?まあ、そうだよね君みたいなかっこいい子に女の子いないとかないよね〜」
「違いますけど。コイツはそんなんじゃねーし…!つか、離してください」
「いいじゃんいいじゃん〜!…あ、もう時間結構過ぎちゃったし、しょうがない。手と口で終わらせてもいいからさ。料金変わらないけどいいよね」
女は痺れを切らしたのか俺を強引に引き立って床に座らせ足の間に割って入ってきた。
「イイ思いさせてあげるね」
***
帰宅すると電気が消えていた。
そっと入って、ギリギリ間に合ったドラックストアで買ったボディーソープをテーブルに置き、椅子に座って大きくため息を吐いた。
やっちまった。やられてしまった。
変にスッキリしてる頭にずっとドキドキしている心臓、俺は大人の階段を登ってしまったのだ。いや、登りかけてしまったのか。
口が柔らかかった、他人に初めて触られて擦られてどうにかなりそうだった。あんなん、確かに一回やったらもう沼る気がしてならない。
帰りに先輩に「よ!脱、童貞くん」と言われ適当に流してそのまま逃げるように帰ってきてしまった。
興奮したか、しなかったかと言えば興奮した。なんなら少し胸を触ってしまった。凄いドキドキした。
ただ、やっぱり風俗というキーワードが引っかかってしまって居心地が悪かった。
そしてそのままその足でこの家に帰ってきた瞬間になんか凄い悪いことをしてしまった気分になってしまってどうしようもなかった。別に悪いことをしているわけではないのに、ある意味普通のことをしてきただけなのに。
ドラックストアでレンのメールを見返してる時が1番なんか居た堪れなかった。
あの真っ直ぐ見つめてくる目に今の俺を見せるのが凄い、なんか、なんか…!!!とぐるぐる考えていると奥からガチャリと音が響いた。
「た、かや、君…?」
その声に変に体が固まった。
返事をできずにいると近寄ってきて「あ、ぼ、ぼでぃーそーぷ!あり、ありがと!」と嬉しそうに笑って向かいのレンの席に座った。
「ご、ごはん、おいし、かった?」
「…………………………ああ」
馬鹿、んなもん食べてないだろ俺。
気付いたら腹がなりそうで必死に抑えようと呼吸をしていると「な、に食べ、食べた?」といつもよりすげえ会話を投げかけてくるレンになんで今日に限ってと逆ギレを起こしかける。コイツ多分寝ぼけてるだけなのに。
「…まあ、……肉」
「に、にく……!」
「いいなあ」とニヘニヘして涎を垂らすレンが直視できなくてテーブルの上の自分の手を眺める。そんな俺に違和感を感じたのか「大丈夫…?」と心配そうな声で問いかけてきて「食い過ぎかも」とか状況と正反対なことを答えて立ち上がった。
変に自分に匂いがついている気がしてならない。一刻も早く流したい!スッキリしたい……………!と足を進めようとすると腕を掴まれた。
ギギギ…と首を回すとレンが焦ったように顔を染めてこっちを上目遣いで見上げていた。
「(バレたか…!?)」
と反射的に思ったと同時にレンが「熱、?体調…悪い?」と手を額に当ててきてその手を避けるようにして「大丈夫だよ。食い過ぎただけだって、あんがとな」と返すとまたニヘニヘと笑って「うん!」と言った。
「あ、タカヤくん、いい匂い、する」
クンクンとレンが俺の服に顔を寄せてきてもう耐えきれず「風呂!!!!!!」と近所迷惑な声を出して風呂場へ駆け込んだのだ。
***
「いや、バレたバレないとかじゃなくね」
思わず声に出て、ハッと口を押さえた。
そうだろ、昨日何故か罪悪感を持って家に帰ってレンにバレた!?とかビビり散らかしていた自分がわけわかんなさ過ぎて頭を抱えた。
いや、別に俺悪いことしてないし、男なら行く奴は行くだろ、普通だろと落ち着かせようとしてもレンのニヘニヘした変な顔が浮かんできて泣きそうになる。
こんな思いすんなら行かなきゃよかった…!とまた頭を抱えると隣に花井が来た。
「何さっきから百面相してんだよ怖ぇよ」
「うるせえ………………」
「…つ、つかさ、お前昨日先輩に風俗つれてって貰ったんだって?」
「ッハァ!?!?!?」
「ば、ばか!うるせえな!!!」
ムッツリ頬を染めて俺に耳打ちで聞いてきた花井に向かって思わず腹から声が出た。
花井はそんな俺の頭を机に押し付ける。
「なんで知ってんの!」
「いや、先輩が言ってたから『隆也が童貞卒業したって』って」
「あンのクソカス…!!!!」
「あー!ばかばかばか!落ち着けって!」
たまらず立ちあがろうとする俺を強引に花井は席に戻した。
「なんでお前そんな焦ってんの」
「あ、焦ってねえよ!」
「…じゃあなんでそんなこの話題につっかかんの。まあ、童貞うんぬん知らねえところで話されるのすげえ嫌なのは分かるけど」
「…別に」
「ハァ〜〜〜〜もう俺も聞いて悪かったよ」
何かを察したのかポンポンと俺の肩を叩く花井は「まぁ、なんかあったら言ってくれよ。聞くくらいはできるからさ」と言ってノートを開いて作業を始めた。
人に話せるなら話してえけど、なんか口が開かない。ただぼそりと出たのは、
「…レンに、聞かせたくない」
その言葉に花井は変な顔して「アイツ、俺たちと同い年って知ってるか?」と返してきて思いっきり足を踏みつけた。
知ってるっつうの!
***
あのままバイトに行って帰宅すると凄い美味そうな匂いが部屋に漂っていた。
「お、おかえり!」
「ただいま。…今日はカレー?美味そう」
「ウン!あ、お、俺もさっきかえ、ってきたばかり、で、お風呂ない…よっ!」
「分かった。疲れてんのに飯ありがとな」
「ウン!」
またニヘニヘして俺から視線を鍋に移した。
レンは帰宅してささっとシャワーを浴びたのか髪が半乾きで大きめサイズのTシャツにボクサーパンツの姿のままでエプロンを付けてカレーを作っていた。
家だとコイツ結構こんな感じだしあんま意識したことなかったけどなんか………
とぼーっと眺めていると三橋が「あ!」と声をあげた。
「そ、そいえば、来週、合宿で1週間いなくて、ちょっと、当分、ま、任せちゃうかも…ご、ご飯とかできな、い…と思う…ごめ、ん……なさい」
「…」
「…………タカヤ、くん?」
レンが不思議そうに呼んできてハッとして、なんも聞いてなかったのに「わかった」曖昧に笑ってシャワーに向かった。
次の日。
大学の休憩スペースに座ってると花井がまたきて「今日楽しみだよな〜。お好み焼きの口だわずっと」と機嫌よさそうにしていた。
そう、急遽集まれるメンバーでお好み焼き食いに行くことになったのだ。
水谷発信で泉、花井、俺、レンで集まることになった。
昨日、シャワーから出ると興奮したようにレンが携帯を俺に向けながら「みっ、水谷くんが、お好み焼き、た、食べよう…って!」
と言ってきて俺の携帯にもその連絡が来ていた。俺的にレンの飯の方が満足に食えるし、ゆっくりしてぇ気もするけどレンが嬉しそうにしてるし「お前行けそうなら行くか」と言うとニヘニへして「うん!」と頷いたのでまあいいかと思ったのだが、花井があれを知っているのを忘れていない。
「レンに漏らすなよ」
そうとだけ言うとめんどくさそうに「言わねえよ!つか半分忘れてたわ。どんだけ気にしてんだよお前…」とため息をついてきて肘で横っ腹をどついた。
「なあ!阿部さ、この前風俗行ってたっしょ!」
興奮したような声で水谷の言った言葉に俺は思考が停止した。
「え、まじ?とうとう卒業した?やるねー阿部。どんな子だったの?」
顔を赤くして騒ぐ水谷、時が止まった俺、ニヤニヤと質問してくる泉、俺じゃないからな!!と騒ぐ花井…そして、目を見開いて固まるレン。
ジュー…といい音がして、いい香りが漂う中、すこぶる落ち着かない気分になって、息を吐きサラッと「別になんも」と答えてお好み焼きを食べた。
「嘘つけよ!阿部が入ってったとこさ、可愛い子いるって有名らしいよ〜!先輩に連れてって貰ったの?」
「…そうだけど」
そういう横でレンが「先輩…」と小さく呟いた。ギクリ、変に体が揺れてしまう。俺は横目でレンを見ると食べる手を止めて何かを思い返すようにぼーっと焼かれているお好み焼きを眺めていた。
グッと顎に力が入り「(思い出すな…!)」と念を送るがピンときたのか顔を揺らしてレンは食べ始めた。特に何も言われないのが逆に居心地が悪くて俺は何事もなかったかのように烏龍茶を飲んだ。
「いやーでも阿部が行くなんて思わなくてさ5度見くらいしちゃったよ〜!」
「確かに興味なさそうなのにな。まあ一回は経験してみたいよな」
泉と水谷がワイワイ盛り上がる中、居た堪れなさそうな花井は呆れたように2人を眺めて食を進めている。
レンも普通に食べてるので、そんな気にすることでもなかったなとフッと笑みが溢れた。
俺は何をドキドキしていたのか、別にレンも普通だし聞かれて悪いことでもないし、絶対連絡しなきゃいけない事項でもないし、レンが知ったところで…だよな。
そう思って肩の力がやっと抜けた気がした。
「そうだよ、経験。出来るならしといた方がいいだろ」
「病気とか大丈夫なもんなの?ああいうのって」
「先輩いわくあそこ入る時に検査されるし、徹底してるからオススメらしいぜ」
「へー!いいこと聞いた〜!」
「まあ、大学入って割と周りの奴ら行ったことあるっての多いよ。普通普通」
泉、水谷、花井と会話をしてると横から「経験……普通……」とふむふむと話を静かに聞いてるレンにやっぱり居心地の悪さを感じながらチラリと見ると頬を染めて興味津々にしていた。
「…」
なんだこの、なんとも言えない感覚は。
解散すると満足したのかレンはお腹を撫でて幸せそうにしていた。
その気の抜けた顔に俺もなんか気が抜けてきて笑みが溢れる。ぽん、頭に手を乗せると少しびくりと肩を揺らして俺の方を見つめてきた。目があって、大きな目とへにょりとした眉に思わずガシガシと頭を撫でて「美味かったな」と声をかけるとレンはへにょっと笑って「うん!」と返した。
ここ数日へんに力んでたのがやっと抜けて、ちゃんとレンのことが見れた気がした。
それがしっくりきて、やっぱりレンといると呼吸がちゃんと出来る気がする。
***
「ふ、風俗、いっ行ってきた!よ!」
顔を赤くしてハフハフしながらドヤ顔するレンに思わず腹から「ハァアアアアアアアアッッ!?!?」と声が出た。
「な、え、ど………っ」
「タカヤくん…?」
混乱と衝撃と謎の吐き気に襲われて俺がレンみたいな言葉を発してしまった。
な、………え?こいつが風俗に行った…?言葉がうまく頭に入ってこなくてずっと俺は脳天からぶん殴られてる感じがする。
なんでこうなった、どうしてそうなった、叫びたいことは沢山頭に浮かんでくるのに口からは何も出てこなかった。
そんな様子にレンは戸惑いながらもニヘと気持ち悪い笑みを浮かべてトドメにくる。
「こ、このまえ!み、水谷くん、達と、経験は、したい…って、普通だ、って!言って、たから、お、俺も……って、お、おもっ、思って…!」
とハフハフして話すレンにこれまでにない言葉にならない怒りが湧いてきてどうにかなりそうだった。ぶん殴りたいとも思った。なんかの仕返しをされた感じがした。
でもレンは自信ありげな様子でいるし、俺もついこの前やったし、人のこと言えないし、俺がなんでレンが風俗に行った事を怒らなければならないのかも意味がわからなくて必死に呼吸をした。
少し落ち着いた時に怒鳴らず淡々とレンに声をかけた。
「…な、にしてもらったんだ」
「えっ、えっとね!…えっと、ぎゅってして、くれるのと、な、…なめてもらうの、と、手と…………い、いれ、」
「入れたのか!?!?!?!?!?」
馬鹿でかい声が出てしまってレンはカーッと顔が赤くなった。小さな声で「田島、く、ん………がっ、やれん、なら、やっちゃ、おう、ぜ…!って……………」言ったレンの顔横にある壁をドンっ!と叩いた。
それにハヒッ!と固まるレンに向かって俺は言い放った。
「お、俺は入れてねえのに……!!!」
なんでそれが出てきたのかわかんないがウワァ!と声が出た。レンはびっくりして固まっていたけど「え、あっ………ご、ごめん………」と目線を落としていて、俺もこの溢れそうになるモンをレンにぶつけるわけにもいかずそのまま携帯と財布を持って家を出てしまった。
ふざけんなふざけんなふざけんな!
そんなバカみてえな単純な言葉しか出てこなかった。最初聞いた時の裏切られた気分がずっと残っててなんか泣きそうになった。なんで泣くんだこんな事で。レンも同い年だし、男だし、興味あんのはわかるし、でも、だとしても、なんか受け入れたくない何かがあって、道の真ん中で「アーーーッッ!!」と叫んだら遠くで犬が吠えた。
やってらんなさ過ぎて俺も勢いで童貞捨ててやる…!と思ったのに風俗に金使うならレンとどっか飯行きてえよ…とか思ってしまって足が上がらなくなるほど走りまくった。
1人残されたレンが「先に童貞を捨ててしまったからタカヤくんは先越されたと思って怒った」と最悪な勘違いをしてアワアワして料理作って待っててくれたのに俺が帰宅したのは次の日の夜だった。
***
「……阿部?どうしたんだよ」
花井の声が頭の上から聞こえてきて伏せていた顔を上げた。俺を見た花井がびくりと肩を揺らして「なんちゅう顔してんだよ…」とため息を吐いて、また隣に座ってきた。
「なに、三橋と喧嘩でもしたのか?」
「してねーよ」
「じゃあなんでやさぐれたような顔してんだよ」
ムスリとした顔をしているのは分かっている。別に俺だってこんな顔したくてしてるわけじゃない出てしまうのだ。
発散爆走をして次の日の夜に帰宅するとレンは部屋にいなかった。
爆走後、疲れ果てすぎて動けず近くのビジホに泊まりそのまま大学へ行って帰ったのだ。
月曜日に何してんだろうと切ない気持ちになりながらレンはおかえりと言ってくれるだろうかとか考えて、一応連絡入れていたが『わかった』と簡潔な返事が来てなにもアクションが無かった。
心臓をバクバクさせながらドアを開けると部屋は暗く、拍子抜けした。そのまま携帯を見ても特に連絡が来てるわけでもなくレンに『どこいんの?』とメールを送ったが返事は来ず、電話を入れても出なかった。
日が変わるまで待てども帰ってこなくて、恐る恐るレンの部屋を見ると変に整っていて服が減っていたのだ。どういうことだとまた電話を入れるとレンは出た。
問い詰めるとレンも怒ったように『言った、のに!聞い、てなかった、の!俺、こ、この前、合宿っていっ、た!』と寝ようとしていたタイミングだったのか怒ったように言われ思わず謝罪をし、そのまま電話を切ると無事だったことへの安堵と、いつまでか聞くのを忘れたのと、1人でいる空間がとてつもなく広く感じた。レンが居ないのこの部屋に来て初めてかもしれないと気づいた時に酷く寂しさを感じたのだ。
腹減ってるから変なこと考えるんだなと思って冷蔵庫を開ければ煮物や和物が何個か作り置きされていて、やるじゃんレンと食べる分温めてテーブルに並べて食べ始めると余計に孤独を感じた。
レンがいても特に話すこともしてないのに、なんでこんななってんだよと自分に呆れながら過ごしたのだ。
「…三橋がいないことはしょうがないだろ。合宿なんだったら」
「わーってるよ」
「お前そんなにガキだったっけ」
「違う」
「だよな…なんか、聞き分けの悪いガキと話してる気分になるんだけど」
「誰が聞き分けのガキだ!」
「お前しかいねえだろ!」
勘弁してくれよ…とめんどくさそうな顔した花井が「はっきり聞くけど、お前何?三橋が好きなの?」と言ってきて、眉間に皺がよる。
「好きだよ。好きじゃねーのにルームシェア誘うわけねえだろ。元バッテリーだし」
「いや、そうじゃねえ。恋愛の話だよ!」
頬を気持ち悪く染めて聞いてくる花井にハッと笑って「んなわけねえだろ。あいつ男だし、そんなふうに思ったことねえよ」と返すと納得しない顔した花井が拳をテーブルに叩きつけた。
「風俗行ったこと聞かれたくないとか、部屋に1人でいると寂しいとか、三橋が風俗行って怒るとか…普通はただのルームメイトにんなこと思わねえんだよ!その変な執着どうにかしろよ!面倒くせえな!」
そう言われて反射的に何かを言い返そうとしたが口からは何も出なかった。
あれから1週間レンから特に連絡は来ない。元々メールをたくさんする間柄でもないし、ずっと話してるわけでもない、いつもと変わらないのに最後にあった日といい、電話といい、レンが帰ってきたくないとかルームシェアやめたいとか言われたらどうしようかと考えてしまう日が続いた。
相変わらず部屋に戻ると暗く変に静かな空間になんとも言えない気持ちになり、紛らわすようにさっさとシャワーを浴びて適当なコンビニ飯食ってボーッとテレビ見てさっさと寝る生活をしていた。
今日も今日とてさっさと寝ちまおうと飯を適当に食べて風呂行くかと立ち上がったタイミングでドアがガチャリと開く。
「た、だいまぁ…」と疲れたようにレンが入ってきて反射的に駆け寄って「おかえり!」と声が出た。
レンは声にばかりと肩を揺らして戸惑ったような泣きそうな顔をして「お、…おっ」と口をぱくぱくした。
「…何、どうした」
「あ、…えっと…あ、あ、…」
「荷物重いだろ、貸せよ。…わりい、飯最近コンビニばっかでさ、何もねえから腹減ってんなら買ってくるわ。その間に風呂………すぐ、洗うから待ってろ。早く上がって、手洗いうがいして少しゆっくりしてろ」
そう言ってレンから荷物を取り、脱衣所に前に置いて風呂場へ向かう。後ろからレンが「た、タカヤくん!」と呼んできて何かあったのか!?と慌てて戻るとまだレンは靴を脱がずに玄関に立ってた。
「何してんだよ疲れてんだからさっさと…」
「お、おこっ、てる…?」
「は?」
またビクッと肩を揺らして俺を見るレン。
頬を染めて涙目で恐る恐る見てくるその顔は何度も見たことあるし、いつもイラつくのになんだか今日はいじらしく見えて、小さく息を吐いてゆっくり近づいた。
「…なんも怒ってねえよ」
「で、でも……っ、でん、で、んわで俺、怒っ、ちゃ、…………ふ、風俗、も、」
「また行ったのか!?!?!?」
「ヒッ!いっ行ってない、よっ!」
また込み上げそうになった怒りが急停止する。「じゃあなんなんだよ」と音量を抑えて言うとレンはこの前、風俗の話して俺が家を出てった時のことを話してたようだった。
俺が先越されて怒って風俗に行ったのかと思っていたらしい。
んなわけねぇだろ!と怒鳴ろうとしたが冷静に考えると確かにあの状況だったらレンがそう思ってしまうことも納得してしまい、とりあえずそんなことは微塵も思ってないことと電話も合わせて俺が悪かったよと言うとあからさまにホッとした様子でレンはニヘニヘと笑った。
「よ、かった…」
その言葉に思わずレンを抱きしめてしまった。
レンは「へっ」と声をあげて体を固くしたが俺は胸がキュウっとなってどうしようとできなかった。
コイツが今よかったと言ったのは俺が怒ってなくてよかっただと頭では分かってるのに瞬間的には「俺がまた風俗に行ってなくてよかった」と言われたような気がしてたまらなくなった。
「た、かや…くん?」
レンは体を固くしたがすぐに力を抜いてきて様子のおかしいと心配し始めたのか俺の背中に手を回してきて「だ、大丈夫?」とさすってくれた。
それが余計にぐわっときてより力を込めて抱きしめた。
レンの匂い。
レンの声。
レンの温度。
全てがキた。
「へ、え、ちょ……!タカヤく、ん!」
「…もう少し」
「なん、なんか…っお、腹に刺、さって、て……」
「は?」
少し空間を空けると俺の股間が元気になっていた。それをみたレンが「ヒッ…!」と声をあげて離れようとするだがさせるまいとまた俺は力一杯抱きしめた。
というか、やっとここ数日感じていたことの正体が分かった気がしてスッキリした気持ちとムラムラした気持ちと……とりあえずまたスゥとレンを嗅いだ。
少しして落ち着いたタイミングで解放すると顔を真っ赤にしてもじもじするレンに懺悔をする。
「…あのさ、本当はでてった日、風俗行こうとしたんだよ」
その言葉にレンはぴくっと反応して視線を下げた。小さな声で「……だ、だよね…」と。
「…でもさ、そんな金使うんならお前と飯食いに行きたいと思って死ぬほど走って動けなくてホテル泊まったんだよ。バカだろ」
「…お、俺と………?」
「そう、お前に時間も金も使いたくて………っつうか!風俗だって行きたくて行ったわけじゃねえんだよ!あんなとこ居心地悪いし、変にドキドキするし、疲れるっつうの…!」
「…………」
「そしたらお前に行ったこと知られるし、お前が行って知らねえ女とヤったとか言うし、なんか、なんかすげえ裏切られた気になったんだよ、勝手に。…変に不安にさせて悪かった」
「………あ、」
レンは俺の話を静かに聞いていたが何かに気づいたように声をあげた。
どうした?と声をかけるとレンは俺の顔を見てボッと顔を赤くして目線を下にそらした。
その様子に眉を寄せるとレンがもじもじと指を遊ばせながら言った。
「お、俺も…………あ、あのと、き、すご、いモヤモヤ、したん、だ…タカヤ、くんが、ふ、ふ、風俗行った、てき、い、て………」
「…」
「お、れが、知らな、くて、きっと…み、水谷くん、が、言わ、なかったら、タカヤくん、ず、っと、言う気なかっ、たんだな、って………」
「……それは、」
「いっ、いいんだ!…俺に、いっ、ても…もり、上がるようなこと、返せ、ないし、」
まあ、それはそうだけどそう言う感じで言わなかったわけじゃ…、と思ったが変に挟むとレンは言葉を飲み込むので黙って聞く。
「でも、なんか、すごい、嫌だった…」
割とはっきり伝えられたそれに俺は胸が罪悪感で埋め尽くされてしゃがみ込んで頭を抱えたい気持ちを抑えてゴクリと唾を飲んだ。
「知ら、ないと…ころで、さ、先に、進んで、る、タカ、ヤくんに、置い、てかれた気が、して、嫌なん、だって、思って、たけど、ち、違うかも………」
「違う?」
「お、俺もっ、」
「かっ、勝手に、裏切、られた、って思ってた、のか、かも…」
そう言ったレンはしっくりきたのか「そ、そうだ、そうだっ、たんだ…」と独り言を漏らして頷いてた。
そうか、俺はあんな吐きそうになる気持ちをレンに感じさせてしまったのか。しかも、他人の口から。自分に変換すんのも嫌でたまらずまた抱きしめて「ごめん」と言うとレンもまた背中に手を回して「う、ん…」返した。
「俺もご、ごめんなさい、」
「何でお前が謝るんだよ」
「お、俺も…行ったし…」
元凶は俺だし、謝らなくていいと思う反面もうお前の口からその話を聞きたくなくてぶっきらぼうに「もういい」と返すと「うん」とだけ帰ってきた。
「俺ももう行く気ないし、お前も行かねーだろ?」
「へ、あ、うっ、うん!」
「………あ?行く気だったのか?」
「ない!お、俺も…その……おちつ、かなくて………緊張して、……さ、さみしくなる、から………」
「寂しい?」
「タカヤくんに会いたくてたまらなくなって」と恥ずかしそうに言うレンの頭を撫でてそのまま目元にキスをする。
レンはビクッとしたが嬉しそうにニヘニヘして俺の首に擦り寄ってきた。
またスゥとレンを嗅いで、耳元でコソコソと話しかける。
「でも、俺まだ童貞なんだよ」
「へっ、あ、う、うん…!」
「お前は処女だよな?」
「しょっ…………!!!!」
顔を真っ赤にして固まるレンにニヤニヤして収まりかけてたそれをレンの腹にこすりつけた。
「なあ、貰ってくれね?」
そういうとレンは「ピャア!」と変な声を発して崩れ落ちた。
おわり
この後、しけ込もうとする阿部隆也は挿入寸前で興奮しすぎて鼻血出して誤射します。
※阿部に関してはモブとの絡みがあります
※大学卒業までには花井くん以外は名前呼びかと思いますが全員そうすると訳わかんなくなったのでアベミハの2人だけ名前呼びにしてます
「おい隆也!大学デビューだ、イイとこ連れてってやるよ」
「……は?」
ルームシェア
絶対に忘れることができない3年間を過ごした高校生活が終わり、大学へと進学した俺たちはそれぞれの道に進み始めた。
とはいいつつ、バッテリーであるレンとは卒業してもルームシェアという形でまた一緒に過ごすことになったのだ。
大学は別なもののそれぞれのアクセスしやすい場所にある部屋で2LDK。ありがたいことに家賃は親に出してもらえており、自分達は生活費と光熱費を稼いでやりくりすることになっている。
進路を考えた時にどうしてもレンの事が頭から離れなかった。レンは推薦で来てるところにするかもそうなると寮か、一人暮らしかな、と言っていた。
いざ今の距離が変わると思うと変な感じがした。
野球やってる時は親よりずっと一緒にいた感覚がしてたし、離れるってどんな感じなんだろうか。案外気になんねーのかな、とか考えたりした。
家で大学のパンフレットを眺めながらその事をふと思い出して、小さくこぼれた「…レンはどうすんのかな」という言葉を親が拾う。
母親が「いい距離の大学同士なら三橋くんにルームシェア誘ってみたらどう?別に4年間ずっととかじゃなくてもいいし、折角仲良くなれたんだから離れるのなんか勿体無いわよ」と。
いや、別に俺そんなにレンと一緒にいたいわけじゃねえけど…と返したがアイツが実家を出て自分で生活の管理が出来るとは思えなかったし、高校よりもっと上の野球をする事になるんだから質を下げてほしくないし、色々サボりそうだし、勿論レンが望むなら大学が変わってもサポートしたいと思っていたし……と色々出てきて、
とりあえず言うだけ言うかと放課後に話すとアイツはすんごい嬉しそうに笑って元気よく「うん!」と返してきた。
そこからポンポンと話が進み、やっぱりと思うレベルでレンの親も心配していたらしく「阿部君が一緒なら安心だわ!あ、でも嫌だったらすぐに辞めて良いから!この子呆れちゃうほど生活能力なくって…」というおばさんに大丈夫っすよ慣れましたし、と返したのを覚えている。
家賃も浮いたし、部屋も綺麗で広いし、レンと野球観戦出来るし、なんだかんだで浮き足立てる自分に気付いてはいた。
高校の同級生とお泊まり感覚で楽しく思えてくる。最初だけかもしれないがそれはそれで経験として受け止めておこう。
「レン、今日晩飯いらねえから」
「え!あ、う、うん!分かった!」
「大学の先輩と飯行ってくるわ。夜遅く帰ると思う。起こしちまったらごめんな」
「お、俺、大丈夫!」
おう、とレンの頭にぽんと手を置いて家を出た。
案外、生活はストレスじゃなかった。アイツが飯担当、俺が掃除担当と大まかに分けつつ、気付いた方が出来る方がやる、できない時は共有するとか最初に決めたらレンは割とちゃんとやっていたのだ。
相手が俺だからってのもあるみたいで、引っ越して半月くらいにそのことをつつくと、レンは嬉しそうにニヘニヘしながら
「た、タカヤ、くんと、いっ、しょに生活、楽しい、くて、お、おっ、お互いに力、合わせて、なんか、うっ嬉しい、んだ!」
と言ってきてなんか変に俺も嬉しくなってそうかと頭をぐしゃぐしゃにした。
まあ、散らかしたままだったりゴミ捨て忘れた度にウメボシ喰らわしまくってたのもあるけど、アイツも俺のキレるラインが分かり始めているようだった。
「ふん、やるじゃねーか」
まあ、俺が育てたみたいなもんだしな。こんくらいはやってくれなきゃ俺の時間が無駄だったみてーになるしな。
鼻歌を溢しながら大学へ向かった。
そして、大学終わりに飯食いに行く予定の先輩から言われた冒頭のセリフ。
「おい隆也!大学デビューだ、良いとこ連れてってやるよ」
「……は?」
「は?ってなんだよ。は?って!
先輩に向かってなんだそれは!良いとこ連れてってやるよ!っつってんだろ!」
「いや、別に興味ないって言うか…」
クソ…取り込んで神ノートとか過去問のプリントとかくれねーかなとかワンチャン飯奢ってくれんのかと思って来たのに変なこと言ってきやがって…!
イライラしていると先輩が肩に手をかけてきて「ほら、お前童貞だろ?可愛いボインのねーちゃん教えてやるからさ」とか言ってきてふと思う。
「(いや…まあ…興味がないとは言わないけど…)」
だとしてもすぐに童貞を捨てたいとかヤりたいとかそんなもん考えたことも無くて、タイミングがきたらでいいだろ…てか童貞を知らんプロの女に捧げるのもなんか嫌な、気もしない…とか自分で気色悪い思考をしだして考えることをやめた。
そして先輩に引きずられて、気付いたら風俗の前に立っていたのだ。
「(いざ目の前にすると…なんか……)」
凄いドキドキしてきた自分がいる。
やりたいやりたくないの前に人生経験としてどんなもんか興味がとまらなかった。
田島なら真っ直ぐに入っていきそうだな…とか色々考えていると先輩にトン、と背中を押される。
「楽しんでこいよ」という言葉が変に耳に残った。
薄暗い廊下と案内された部屋に入ると、いかがわしいライトに照らされて薄いもはや透けてるキャミソールを着た女が笑ってこっちをみていた。
いざ入ると固まってしまい、扉の前でただ棒立ちしてると女が寄ってきて俺の首に手を回してきた。
「わあ!君凄いかっこいいね〜。嬉しいな〜私今日ラッキーかも」
「はぁ…」
ムニムニと俺の鳩尾あたりにでけえ胸を当ててきて感じたことのない感覚に胸がすげえバクバクし始めた。呼吸も上手くできなくて、女から香ってくる甘い匂いにクラクラしそうになる。
そっと避けようとすると余計に引っ付いてきて「コースは…挿入までになってるから目一杯楽しんでね」うっとりしながらベタベタ俺の体を触ってきて俺じゃ無くてなんなら女がもてなされてるみたいになっ…………待ってくれ挿入までとかなんの話だ。
「お、俺…挿入とか別に…………」
「えー!もう料金もらってるしダメだよ〜!それに私超楽しみなのに!お兄さんも凄いドキドキしてるし…」
「ここも大きそうだし…」と俺の股間に手を伸ばしてきて思わず肩を掴んで離した。
ぐっと歯を食いしばって脳を回そうとするが変に緊張して動かない。女も「もー!さっさとヤろうよ〜!時間ないんだからさ〜」と手を伸ばしてくる。
こ、この女いい加減に…!!!!と声をあげそうになった瞬間に俺のポケットに入ってた携帯が鳴った。バッと見るとレンからで『帰りに買えたらボディーソープお願いします』とだけあった。
ふと頭にそういえばストックも無くて買わなきゃなと思ってたんだったわ、と浮かんで速攻で『分かった』とだけ返す。
すると横から女がのぞいてきて「なに、彼女?」とニヤニヤしてきてまた腕にひっついてきた。
「分かった!マンネリでここ来たの?まあ、そうだよね君みたいなかっこいい子に女の子いないとかないよね〜」
「違いますけど。コイツはそんなんじゃねーし…!つか、離してください」
「いいじゃんいいじゃん〜!…あ、もう時間結構過ぎちゃったし、しょうがない。手と口で終わらせてもいいからさ。料金変わらないけどいいよね」
女は痺れを切らしたのか俺を強引に引き立って床に座らせ足の間に割って入ってきた。
「イイ思いさせてあげるね」
***
帰宅すると電気が消えていた。
そっと入って、ギリギリ間に合ったドラックストアで買ったボディーソープをテーブルに置き、椅子に座って大きくため息を吐いた。
やっちまった。やられてしまった。
変にスッキリしてる頭にずっとドキドキしている心臓、俺は大人の階段を登ってしまったのだ。いや、登りかけてしまったのか。
口が柔らかかった、他人に初めて触られて擦られてどうにかなりそうだった。あんなん、確かに一回やったらもう沼る気がしてならない。
帰りに先輩に「よ!脱、童貞くん」と言われ適当に流してそのまま逃げるように帰ってきてしまった。
興奮したか、しなかったかと言えば興奮した。なんなら少し胸を触ってしまった。凄いドキドキした。
ただ、やっぱり風俗というキーワードが引っかかってしまって居心地が悪かった。
そしてそのままその足でこの家に帰ってきた瞬間になんか凄い悪いことをしてしまった気分になってしまってどうしようもなかった。別に悪いことをしているわけではないのに、ある意味普通のことをしてきただけなのに。
ドラックストアでレンのメールを見返してる時が1番なんか居た堪れなかった。
あの真っ直ぐ見つめてくる目に今の俺を見せるのが凄い、なんか、なんか…!!!とぐるぐる考えていると奥からガチャリと音が響いた。
「た、かや、君…?」
その声に変に体が固まった。
返事をできずにいると近寄ってきて「あ、ぼ、ぼでぃーそーぷ!あり、ありがと!」と嬉しそうに笑って向かいのレンの席に座った。
「ご、ごはん、おいし、かった?」
「…………………………ああ」
馬鹿、んなもん食べてないだろ俺。
気付いたら腹がなりそうで必死に抑えようと呼吸をしていると「な、に食べ、食べた?」といつもよりすげえ会話を投げかけてくるレンになんで今日に限ってと逆ギレを起こしかける。コイツ多分寝ぼけてるだけなのに。
「…まあ、……肉」
「に、にく……!」
「いいなあ」とニヘニヘして涎を垂らすレンが直視できなくてテーブルの上の自分の手を眺める。そんな俺に違和感を感じたのか「大丈夫…?」と心配そうな声で問いかけてきて「食い過ぎかも」とか状況と正反対なことを答えて立ち上がった。
変に自分に匂いがついている気がしてならない。一刻も早く流したい!スッキリしたい……………!と足を進めようとすると腕を掴まれた。
ギギギ…と首を回すとレンが焦ったように顔を染めてこっちを上目遣いで見上げていた。
「(バレたか…!?)」
と反射的に思ったと同時にレンが「熱、?体調…悪い?」と手を額に当ててきてその手を避けるようにして「大丈夫だよ。食い過ぎただけだって、あんがとな」と返すとまたニヘニヘと笑って「うん!」と言った。
「あ、タカヤくん、いい匂い、する」
クンクンとレンが俺の服に顔を寄せてきてもう耐えきれず「風呂!!!!!!」と近所迷惑な声を出して風呂場へ駆け込んだのだ。
***
「いや、バレたバレないとかじゃなくね」
思わず声に出て、ハッと口を押さえた。
そうだろ、昨日何故か罪悪感を持って家に帰ってレンにバレた!?とかビビり散らかしていた自分がわけわかんなさ過ぎて頭を抱えた。
いや、別に俺悪いことしてないし、男なら行く奴は行くだろ、普通だろと落ち着かせようとしてもレンのニヘニヘした変な顔が浮かんできて泣きそうになる。
こんな思いすんなら行かなきゃよかった…!とまた頭を抱えると隣に花井が来た。
「何さっきから百面相してんだよ怖ぇよ」
「うるせえ………………」
「…つ、つかさ、お前昨日先輩に風俗つれてって貰ったんだって?」
「ッハァ!?!?!?」
「ば、ばか!うるせえな!!!」
ムッツリ頬を染めて俺に耳打ちで聞いてきた花井に向かって思わず腹から声が出た。
花井はそんな俺の頭を机に押し付ける。
「なんで知ってんの!」
「いや、先輩が言ってたから『隆也が童貞卒業したって』って」
「あンのクソカス…!!!!」
「あー!ばかばかばか!落ち着けって!」
たまらず立ちあがろうとする俺を強引に花井は席に戻した。
「なんでお前そんな焦ってんの」
「あ、焦ってねえよ!」
「…じゃあなんでそんなこの話題につっかかんの。まあ、童貞うんぬん知らねえところで話されるのすげえ嫌なのは分かるけど」
「…別に」
「ハァ〜〜〜〜もう俺も聞いて悪かったよ」
何かを察したのかポンポンと俺の肩を叩く花井は「まぁ、なんかあったら言ってくれよ。聞くくらいはできるからさ」と言ってノートを開いて作業を始めた。
人に話せるなら話してえけど、なんか口が開かない。ただぼそりと出たのは、
「…レンに、聞かせたくない」
その言葉に花井は変な顔して「アイツ、俺たちと同い年って知ってるか?」と返してきて思いっきり足を踏みつけた。
知ってるっつうの!
***
あのままバイトに行って帰宅すると凄い美味そうな匂いが部屋に漂っていた。
「お、おかえり!」
「ただいま。…今日はカレー?美味そう」
「ウン!あ、お、俺もさっきかえ、ってきたばかり、で、お風呂ない…よっ!」
「分かった。疲れてんのに飯ありがとな」
「ウン!」
またニヘニヘして俺から視線を鍋に移した。
レンは帰宅してささっとシャワーを浴びたのか髪が半乾きで大きめサイズのTシャツにボクサーパンツの姿のままでエプロンを付けてカレーを作っていた。
家だとコイツ結構こんな感じだしあんま意識したことなかったけどなんか………
とぼーっと眺めていると三橋が「あ!」と声をあげた。
「そ、そいえば、来週、合宿で1週間いなくて、ちょっと、当分、ま、任せちゃうかも…ご、ご飯とかできな、い…と思う…ごめ、ん……なさい」
「…」
「…………タカヤ、くん?」
レンが不思議そうに呼んできてハッとして、なんも聞いてなかったのに「わかった」曖昧に笑ってシャワーに向かった。
次の日。
大学の休憩スペースに座ってると花井がまたきて「今日楽しみだよな〜。お好み焼きの口だわずっと」と機嫌よさそうにしていた。
そう、急遽集まれるメンバーでお好み焼き食いに行くことになったのだ。
水谷発信で泉、花井、俺、レンで集まることになった。
昨日、シャワーから出ると興奮したようにレンが携帯を俺に向けながら「みっ、水谷くんが、お好み焼き、た、食べよう…って!」
と言ってきて俺の携帯にもその連絡が来ていた。俺的にレンの飯の方が満足に食えるし、ゆっくりしてぇ気もするけどレンが嬉しそうにしてるし「お前行けそうなら行くか」と言うとニヘニへして「うん!」と頷いたのでまあいいかと思ったのだが、花井があれを知っているのを忘れていない。
「レンに漏らすなよ」
そうとだけ言うとめんどくさそうに「言わねえよ!つか半分忘れてたわ。どんだけ気にしてんだよお前…」とため息をついてきて肘で横っ腹をどついた。
「なあ!阿部さ、この前風俗行ってたっしょ!」
興奮したような声で水谷の言った言葉に俺は思考が停止した。
「え、まじ?とうとう卒業した?やるねー阿部。どんな子だったの?」
顔を赤くして騒ぐ水谷、時が止まった俺、ニヤニヤと質問してくる泉、俺じゃないからな!!と騒ぐ花井…そして、目を見開いて固まるレン。
ジュー…といい音がして、いい香りが漂う中、すこぶる落ち着かない気分になって、息を吐きサラッと「別になんも」と答えてお好み焼きを食べた。
「嘘つけよ!阿部が入ってったとこさ、可愛い子いるって有名らしいよ〜!先輩に連れてって貰ったの?」
「…そうだけど」
そういう横でレンが「先輩…」と小さく呟いた。ギクリ、変に体が揺れてしまう。俺は横目でレンを見ると食べる手を止めて何かを思い返すようにぼーっと焼かれているお好み焼きを眺めていた。
グッと顎に力が入り「(思い出すな…!)」と念を送るがピンときたのか顔を揺らしてレンは食べ始めた。特に何も言われないのが逆に居心地が悪くて俺は何事もなかったかのように烏龍茶を飲んだ。
「いやーでも阿部が行くなんて思わなくてさ5度見くらいしちゃったよ〜!」
「確かに興味なさそうなのにな。まあ一回は経験してみたいよな」
泉と水谷がワイワイ盛り上がる中、居た堪れなさそうな花井は呆れたように2人を眺めて食を進めている。
レンも普通に食べてるので、そんな気にすることでもなかったなとフッと笑みが溢れた。
俺は何をドキドキしていたのか、別にレンも普通だし聞かれて悪いことでもないし、絶対連絡しなきゃいけない事項でもないし、レンが知ったところで…だよな。
そう思って肩の力がやっと抜けた気がした。
「そうだよ、経験。出来るならしといた方がいいだろ」
「病気とか大丈夫なもんなの?ああいうのって」
「先輩いわくあそこ入る時に検査されるし、徹底してるからオススメらしいぜ」
「へー!いいこと聞いた〜!」
「まあ、大学入って割と周りの奴ら行ったことあるっての多いよ。普通普通」
泉、水谷、花井と会話をしてると横から「経験……普通……」とふむふむと話を静かに聞いてるレンにやっぱり居心地の悪さを感じながらチラリと見ると頬を染めて興味津々にしていた。
「…」
なんだこの、なんとも言えない感覚は。
解散すると満足したのかレンはお腹を撫でて幸せそうにしていた。
その気の抜けた顔に俺もなんか気が抜けてきて笑みが溢れる。ぽん、頭に手を乗せると少しびくりと肩を揺らして俺の方を見つめてきた。目があって、大きな目とへにょりとした眉に思わずガシガシと頭を撫でて「美味かったな」と声をかけるとレンはへにょっと笑って「うん!」と返した。
ここ数日へんに力んでたのがやっと抜けて、ちゃんとレンのことが見れた気がした。
それがしっくりきて、やっぱりレンといると呼吸がちゃんと出来る気がする。
***
「ふ、風俗、いっ行ってきた!よ!」
顔を赤くしてハフハフしながらドヤ顔するレンに思わず腹から「ハァアアアアアアアアッッ!?!?」と声が出た。
「な、え、ど………っ」
「タカヤくん…?」
混乱と衝撃と謎の吐き気に襲われて俺がレンみたいな言葉を発してしまった。
な、………え?こいつが風俗に行った…?言葉がうまく頭に入ってこなくてずっと俺は脳天からぶん殴られてる感じがする。
なんでこうなった、どうしてそうなった、叫びたいことは沢山頭に浮かんでくるのに口からは何も出てこなかった。
そんな様子にレンは戸惑いながらもニヘと気持ち悪い笑みを浮かべてトドメにくる。
「こ、このまえ!み、水谷くん、達と、経験は、したい…って、普通だ、って!言って、たから、お、俺も……って、お、おもっ、思って…!」
とハフハフして話すレンにこれまでにない言葉にならない怒りが湧いてきてどうにかなりそうだった。ぶん殴りたいとも思った。なんかの仕返しをされた感じがした。
でもレンは自信ありげな様子でいるし、俺もついこの前やったし、人のこと言えないし、俺がなんでレンが風俗に行った事を怒らなければならないのかも意味がわからなくて必死に呼吸をした。
少し落ち着いた時に怒鳴らず淡々とレンに声をかけた。
「…な、にしてもらったんだ」
「えっ、えっとね!…えっと、ぎゅってして、くれるのと、な、…なめてもらうの、と、手と…………い、いれ、」
「入れたのか!?!?!?!?!?」
馬鹿でかい声が出てしまってレンはカーッと顔が赤くなった。小さな声で「田島、く、ん………がっ、やれん、なら、やっちゃ、おう、ぜ…!って……………」言ったレンの顔横にある壁をドンっ!と叩いた。
それにハヒッ!と固まるレンに向かって俺は言い放った。
「お、俺は入れてねえのに……!!!」
なんでそれが出てきたのかわかんないがウワァ!と声が出た。レンはびっくりして固まっていたけど「え、あっ………ご、ごめん………」と目線を落としていて、俺もこの溢れそうになるモンをレンにぶつけるわけにもいかずそのまま携帯と財布を持って家を出てしまった。
ふざけんなふざけんなふざけんな!
そんなバカみてえな単純な言葉しか出てこなかった。最初聞いた時の裏切られた気分がずっと残っててなんか泣きそうになった。なんで泣くんだこんな事で。レンも同い年だし、男だし、興味あんのはわかるし、でも、だとしても、なんか受け入れたくない何かがあって、道の真ん中で「アーーーッッ!!」と叫んだら遠くで犬が吠えた。
やってらんなさ過ぎて俺も勢いで童貞捨ててやる…!と思ったのに風俗に金使うならレンとどっか飯行きてえよ…とか思ってしまって足が上がらなくなるほど走りまくった。
1人残されたレンが「先に童貞を捨ててしまったからタカヤくんは先越されたと思って怒った」と最悪な勘違いをしてアワアワして料理作って待っててくれたのに俺が帰宅したのは次の日の夜だった。
***
「……阿部?どうしたんだよ」
花井の声が頭の上から聞こえてきて伏せていた顔を上げた。俺を見た花井がびくりと肩を揺らして「なんちゅう顔してんだよ…」とため息を吐いて、また隣に座ってきた。
「なに、三橋と喧嘩でもしたのか?」
「してねーよ」
「じゃあなんでやさぐれたような顔してんだよ」
ムスリとした顔をしているのは分かっている。別に俺だってこんな顔したくてしてるわけじゃない出てしまうのだ。
発散爆走をして次の日の夜に帰宅するとレンは部屋にいなかった。
爆走後、疲れ果てすぎて動けず近くのビジホに泊まりそのまま大学へ行って帰ったのだ。
月曜日に何してんだろうと切ない気持ちになりながらレンはおかえりと言ってくれるだろうかとか考えて、一応連絡入れていたが『わかった』と簡潔な返事が来てなにもアクションが無かった。
心臓をバクバクさせながらドアを開けると部屋は暗く、拍子抜けした。そのまま携帯を見ても特に連絡が来てるわけでもなくレンに『どこいんの?』とメールを送ったが返事は来ず、電話を入れても出なかった。
日が変わるまで待てども帰ってこなくて、恐る恐るレンの部屋を見ると変に整っていて服が減っていたのだ。どういうことだとまた電話を入れるとレンは出た。
問い詰めるとレンも怒ったように『言った、のに!聞い、てなかった、の!俺、こ、この前、合宿っていっ、た!』と寝ようとしていたタイミングだったのか怒ったように言われ思わず謝罪をし、そのまま電話を切ると無事だったことへの安堵と、いつまでか聞くのを忘れたのと、1人でいる空間がとてつもなく広く感じた。レンが居ないのこの部屋に来て初めてかもしれないと気づいた時に酷く寂しさを感じたのだ。
腹減ってるから変なこと考えるんだなと思って冷蔵庫を開ければ煮物や和物が何個か作り置きされていて、やるじゃんレンと食べる分温めてテーブルに並べて食べ始めると余計に孤独を感じた。
レンがいても特に話すこともしてないのに、なんでこんななってんだよと自分に呆れながら過ごしたのだ。
「…三橋がいないことはしょうがないだろ。合宿なんだったら」
「わーってるよ」
「お前そんなにガキだったっけ」
「違う」
「だよな…なんか、聞き分けの悪いガキと話してる気分になるんだけど」
「誰が聞き分けのガキだ!」
「お前しかいねえだろ!」
勘弁してくれよ…とめんどくさそうな顔した花井が「はっきり聞くけど、お前何?三橋が好きなの?」と言ってきて、眉間に皺がよる。
「好きだよ。好きじゃねーのにルームシェア誘うわけねえだろ。元バッテリーだし」
「いや、そうじゃねえ。恋愛の話だよ!」
頬を気持ち悪く染めて聞いてくる花井にハッと笑って「んなわけねえだろ。あいつ男だし、そんなふうに思ったことねえよ」と返すと納得しない顔した花井が拳をテーブルに叩きつけた。
「風俗行ったこと聞かれたくないとか、部屋に1人でいると寂しいとか、三橋が風俗行って怒るとか…普通はただのルームメイトにんなこと思わねえんだよ!その変な執着どうにかしろよ!面倒くせえな!」
そう言われて反射的に何かを言い返そうとしたが口からは何も出なかった。
あれから1週間レンから特に連絡は来ない。元々メールをたくさんする間柄でもないし、ずっと話してるわけでもない、いつもと変わらないのに最後にあった日といい、電話といい、レンが帰ってきたくないとかルームシェアやめたいとか言われたらどうしようかと考えてしまう日が続いた。
相変わらず部屋に戻ると暗く変に静かな空間になんとも言えない気持ちになり、紛らわすようにさっさとシャワーを浴びて適当なコンビニ飯食ってボーッとテレビ見てさっさと寝る生活をしていた。
今日も今日とてさっさと寝ちまおうと飯を適当に食べて風呂行くかと立ち上がったタイミングでドアがガチャリと開く。
「た、だいまぁ…」と疲れたようにレンが入ってきて反射的に駆け寄って「おかえり!」と声が出た。
レンは声にばかりと肩を揺らして戸惑ったような泣きそうな顔をして「お、…おっ」と口をぱくぱくした。
「…何、どうした」
「あ、…えっと…あ、あ、…」
「荷物重いだろ、貸せよ。…わりい、飯最近コンビニばっかでさ、何もねえから腹減ってんなら買ってくるわ。その間に風呂………すぐ、洗うから待ってろ。早く上がって、手洗いうがいして少しゆっくりしてろ」
そう言ってレンから荷物を取り、脱衣所に前に置いて風呂場へ向かう。後ろからレンが「た、タカヤくん!」と呼んできて何かあったのか!?と慌てて戻るとまだレンは靴を脱がずに玄関に立ってた。
「何してんだよ疲れてんだからさっさと…」
「お、おこっ、てる…?」
「は?」
またビクッと肩を揺らして俺を見るレン。
頬を染めて涙目で恐る恐る見てくるその顔は何度も見たことあるし、いつもイラつくのになんだか今日はいじらしく見えて、小さく息を吐いてゆっくり近づいた。
「…なんも怒ってねえよ」
「で、でも……っ、でん、で、んわで俺、怒っ、ちゃ、…………ふ、風俗、も、」
「また行ったのか!?!?!?」
「ヒッ!いっ行ってない、よっ!」
また込み上げそうになった怒りが急停止する。「じゃあなんなんだよ」と音量を抑えて言うとレンはこの前、風俗の話して俺が家を出てった時のことを話してたようだった。
俺が先越されて怒って風俗に行ったのかと思っていたらしい。
んなわけねぇだろ!と怒鳴ろうとしたが冷静に考えると確かにあの状況だったらレンがそう思ってしまうことも納得してしまい、とりあえずそんなことは微塵も思ってないことと電話も合わせて俺が悪かったよと言うとあからさまにホッとした様子でレンはニヘニヘと笑った。
「よ、かった…」
その言葉に思わずレンを抱きしめてしまった。
レンは「へっ」と声をあげて体を固くしたが俺は胸がキュウっとなってどうしようとできなかった。
コイツが今よかったと言ったのは俺が怒ってなくてよかっただと頭では分かってるのに瞬間的には「俺がまた風俗に行ってなくてよかった」と言われたような気がしてたまらなくなった。
「た、かや…くん?」
レンは体を固くしたがすぐに力を抜いてきて様子のおかしいと心配し始めたのか俺の背中に手を回してきて「だ、大丈夫?」とさすってくれた。
それが余計にぐわっときてより力を込めて抱きしめた。
レンの匂い。
レンの声。
レンの温度。
全てがキた。
「へ、え、ちょ……!タカヤく、ん!」
「…もう少し」
「なん、なんか…っお、腹に刺、さって、て……」
「は?」
少し空間を空けると俺の股間が元気になっていた。それをみたレンが「ヒッ…!」と声をあげて離れようとするだがさせるまいとまた俺は力一杯抱きしめた。
というか、やっとここ数日感じていたことの正体が分かった気がしてスッキリした気持ちとムラムラした気持ちと……とりあえずまたスゥとレンを嗅いだ。
少しして落ち着いたタイミングで解放すると顔を真っ赤にしてもじもじするレンに懺悔をする。
「…あのさ、本当はでてった日、風俗行こうとしたんだよ」
その言葉にレンはぴくっと反応して視線を下げた。小さな声で「……だ、だよね…」と。
「…でもさ、そんな金使うんならお前と飯食いに行きたいと思って死ぬほど走って動けなくてホテル泊まったんだよ。バカだろ」
「…お、俺と………?」
「そう、お前に時間も金も使いたくて………っつうか!風俗だって行きたくて行ったわけじゃねえんだよ!あんなとこ居心地悪いし、変にドキドキするし、疲れるっつうの…!」
「…………」
「そしたらお前に行ったこと知られるし、お前が行って知らねえ女とヤったとか言うし、なんか、なんかすげえ裏切られた気になったんだよ、勝手に。…変に不安にさせて悪かった」
「………あ、」
レンは俺の話を静かに聞いていたが何かに気づいたように声をあげた。
どうした?と声をかけるとレンは俺の顔を見てボッと顔を赤くして目線を下にそらした。
その様子に眉を寄せるとレンがもじもじと指を遊ばせながら言った。
「お、俺も…………あ、あのと、き、すご、いモヤモヤ、したん、だ…タカヤ、くんが、ふ、ふ、風俗行った、てき、い、て………」
「…」
「お、れが、知らな、くて、きっと…み、水谷くん、が、言わ、なかったら、タカヤくん、ず、っと、言う気なかっ、たんだな、って………」
「……それは、」
「いっ、いいんだ!…俺に、いっ、ても…もり、上がるようなこと、返せ、ないし、」
まあ、それはそうだけどそう言う感じで言わなかったわけじゃ…、と思ったが変に挟むとレンは言葉を飲み込むので黙って聞く。
「でも、なんか、すごい、嫌だった…」
割とはっきり伝えられたそれに俺は胸が罪悪感で埋め尽くされてしゃがみ込んで頭を抱えたい気持ちを抑えてゴクリと唾を飲んだ。
「知ら、ないと…ころで、さ、先に、進んで、る、タカ、ヤくんに、置い、てかれた気が、して、嫌なん、だって、思って、たけど、ち、違うかも………」
「違う?」
「お、俺もっ、」
「かっ、勝手に、裏切、られた、って思ってた、のか、かも…」
そう言ったレンはしっくりきたのか「そ、そうだ、そうだっ、たんだ…」と独り言を漏らして頷いてた。
そうか、俺はあんな吐きそうになる気持ちをレンに感じさせてしまったのか。しかも、他人の口から。自分に変換すんのも嫌でたまらずまた抱きしめて「ごめん」と言うとレンもまた背中に手を回して「う、ん…」返した。
「俺もご、ごめんなさい、」
「何でお前が謝るんだよ」
「お、俺も…行ったし…」
元凶は俺だし、謝らなくていいと思う反面もうお前の口からその話を聞きたくなくてぶっきらぼうに「もういい」と返すと「うん」とだけ帰ってきた。
「俺ももう行く気ないし、お前も行かねーだろ?」
「へ、あ、うっ、うん!」
「………あ?行く気だったのか?」
「ない!お、俺も…その……おちつ、かなくて………緊張して、……さ、さみしくなる、から………」
「寂しい?」
「タカヤくんに会いたくてたまらなくなって」と恥ずかしそうに言うレンの頭を撫でてそのまま目元にキスをする。
レンはビクッとしたが嬉しそうにニヘニヘして俺の首に擦り寄ってきた。
またスゥとレンを嗅いで、耳元でコソコソと話しかける。
「でも、俺まだ童貞なんだよ」
「へっ、あ、う、うん…!」
「お前は処女だよな?」
「しょっ…………!!!!」
顔を真っ赤にして固まるレンにニヤニヤして収まりかけてたそれをレンの腹にこすりつけた。
「なあ、貰ってくれね?」
そういうとレンは「ピャア!」と変な声を発して崩れ落ちた。
おわり
この後、しけ込もうとする阿部隆也は挿入寸前で興奮しすぎて鼻血出して誤射します。