場所はとある河川敷。
『はいエリザベスご飯ですよ〜』
「……」
ベシッ
『あっオイ!食べ物粗末にするんじゃありません!』
「どうした憂」
『コタ…!エリザベスがエサ食べないんだ』
アヒルはミミズが好きって聞いたから土掘り返して探してきたのに叩いて唾吐かれた。唾でマーキングしてから食べるのか?それとも体調不良?
ミミズは今だとばかりに逃げているがエリザベスが動く様子はない。
「憂、エリザベスはアヒルではないし主食はミミズじゃない」
『はあ!?じゃあ何なのこの気持ち悪いの!』
「気持ち悪くない!エリザベスだ」
『アヒルじゃないと思うと一気に不気味に思えてきた…今日はもう帰ろうかな』
せっかく用意した食事を無駄にされて笑顔でいられるほど善人じゃないし、許せるほどの関係も築いてないし…。いや、初対面でこいつはアヒルと自分に言い聞かせてここまでよく頑張ったよな俺。
河川敷に座り込む白い体の足元、見なかったことにしていた人間の足が目に入った。……ダメだ気持ち悪っ。帰ろう。帰る。
「久々の逢瀬なのに寂しいではないか」
『そう思うならペット……ペットなのか?まあいいや。そいつ連れてこないで』
「ペットではない!エリザベスだ!」
『だー!何でもいい!とにかく今日は帰るから』
また連絡してと一言伝えて歩き始める。
コタとは子供の頃からの仲で、銀時と再会するまでは唯一の昔馴染みだったから後ろ髪を引かれる思いだが、今日は帰ると決めたのだ。
……決めたのだが、名残惜しくて振り返ってしまった。
「仕方ないなぁ」っていつも俺を甘やかすときの表情をするコタと目があって、自分が情けない顔をしていることを悟った。
振り返った勢いそのままに走り、隣を空けてくれていたコタの傍に座る。
『コタがテロリストじゃなければいつでも堂々と会えるんですけど?』
「おお、ついに憂も攘夷志士として共に倒幕を目指す気になったか」
『耳ついてますか〜?オーイ』
「勿論。憂の言葉は何一つ取りこぼさん」
『急なイケメン!』
「イケメンじゃない!桂だ」
俺は昔からコタに甘やかされて育ってきたんだぞ、いきなりかっこよくするのやめろ!ぐずぐずになるまで甘えたくなる!
抗議の意を込めて肩に頭をぐりぐり押しつけてやった。ちっとも効いてませんって顔で頭撫でてくる。だからイケメンムーブやめろって言ってるだろ!
「確かにペットを飼わずとも憂と過ごしていれば十分に癒されるな」
『何?癒し欲しさにアレ飼い始めたわけ?』
「きっかけは坂本だがなかなかかわいいだろう」
俺には到底かわいく見えないが、コタがここまで言うならかわいい…のかもしれない。