開演寸前に会場入り。席に着くと、どうやら関係者席のようだ。その一番端で、いつものスタッフさんがライブ関係者のように紛れてカメラを回していた。いつの間にかライブTシャツ着ている…。

と、いう私も空き時間にちゃっかり買いました。Tシャツとペンライトと道枝さんのうちわ。もちろんそれを装着・手に持っている。…関係者席でこれはなかなか恥ずかしいものがあるが。これも仕事(必死に言い聞かせてる)。

席でいえば、バックスタンドの右寄り。最前列から3列ぐらいまで孤立されていて、いかにも。な席である。アリーナを囲む通路が設置されていて、そこに来た時が一番のチャンスだ。

「あ、始まった…」

カメラが回っているので、テレビ用の独り言。暗がりの中で照らされた正面ステージから、なにわ男子のみなさんが登場するともう悲鳴の嵐が鳴り止まない。ピンク色の衣装に身を纏っていて、キラキラも眩しい。初心LOVEから始まったライブは、仕事とはいえ結構テンションが上がるなぁ。

その何曲か後、歌いながら皆さんが回ってくるでないか!これは見つけてもらうチャンスだ。道枝さんにアピールして驚いた表情を貰わなければ…。今回の醍醐味はそこだもんな。まず大吾くんと目が合って、咄嗟にうちわを大吾くんのに持ち替えた(先程購入済み)。

「ええ!?アハハ!ちゃっかりやな!」

私を指差して大爆笑してて、隣にいた藤原さんが不思議そうにしてたのを知ると、チラチラこちらを見ながら小声で説明。二人でゲラゲラ笑ってて平和でした…。あっこれファンサ!ファンサだ!!うれしい!なんて手を全力で振っていると(もはやファン)、道枝さんがやってきた!

「駿くーん!!」

もうほぼファン状態でうちわ振って呼んでみるも、この歓声の中だとやっぱり難しいようだ。なかなか見つけてもらえない。次の機会に期待するか…とちょっと諦めていたら、不意に振り返ってきた夫役。

「……………えっ!?」

えーーーー!!えっ、え?…〜〜ちゃん!?なんて、驚いた声と共に発見されて満足。ただ名前の部分は聞こえなかった。…あ、わざとかな。さすがだなぁ、と思いながら手を振ると、隣にいたいつものスタッフさんにも気付いたようで、全力でなにわ男子ファンの格好をする私たちに照れながら笑ってた。

「…かわいいなあもう」

呟く頃にはもう道枝さんは移動した後で、もう後ろ姿しか見えない彼はちゃんとアイドルをしていた。我が夫役ながらギャップが尊い。…あっ大吾くんのうちわ持ったままだった。

**

アンコールで帰らなければならないのが、大人の都合上仕方ない。けれどこんなに名残惜しいとは…。ロケ車に戻ると、コメント撮りの再開だ。ライブを見てどうだったか?という質問に、カメラより先に視線を投げて答える。

「いつもかわいい…って感じが先行するんですが、今日は全く別で…格好良い部分がたくさん見えて…、なんかドキドキしちゃいました」

そう答えると、スタッフさんからあの・・アルバムをもらう。私が大吾くんからもらったやつだ。あれは、本当は先にスタッフさんに渡って、今、私に初めて回ってくるはずのものだった。大吾くんのかわいい悪ふざけで、私が先に貰ってしまった…というわけだ。なので、中に入っていた例のカード・・・・・も確認済みとなってしまった。大吾くんめ。

「えっ?これって…。私にですか!?えっサインもある!ありがとうございます……。うれしい」

今初めて貰いました感をちゃんと演じなければならない。ので、ごく自然に…アルバムを開けてみる。もちろん、中には先程見たあの紙が入っている。

「………えっ?アハハ、えぇ?」

カメラに見えるようにミッションカードを手に持つと、先程読んでしまった内容を再度読み上げる。なんか、ある意味分かりやすいミッションだ。

「"このアルバムに夫のサインをもらって完成させてください"…。この空いたところに駿くんのを貰えってこと…かな?」

アルバムの表面。サインが並ぶ中、真ん中だけぽっかり空いた空間を見て呟く。次の撮影いつだっけ…明後日だったかな。その時にこのミッションを伝えたらいいのか。その後カットが掛かって、今日は終了となった。少し呆れた顔のマネージャーが、近くまで車を回してくれていて助かった。つ、疲れた…。

「名前。」
「あーお願い今はやめて。めっちゃ疲れてる」
「怒られることしたって認識はあんのね?」
「……まあ。」

帰りぐらい静かにさせてよ。と思いながらも予期していたマネージャーのお叱り。だって妻として思いっきりファンしなきゃって思って…。なんて言ったらもっと怒られそうだから、静かに怒られるとしよう。


2022.7.30
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