「"好きとか言ったら困る?"やったねぇ〜。」 「おいおい待て待て、いじんなってー」 「アハハ!何年前やったっけ、あれ」 「7…8年前?知らんけど」 「関西人すなって。」 「ただ振られたのだけは覚えてんで。」 「え!?知らんけど…」 「それは知ってるやろ。」 20XX年、夏。もう大阪では40度を超す真夏日続き。先ほど買ったカリカリ君を二人で食べながら、涼しい部屋でクールダウン。アハハと笑いながらデロデロに溶けている。 「しかし、謙杜くんの片思い長かったねぇ」 「ちゃうわ。名前がアホ過ぎて心配しとっただけ。」 「えっ…好きとか言ったら困「あ〜〜〜〜もういいもういい」 「女の子好きな奴によく言ったよね。勢い?」 「勢いって…あん時花火してたやん」 「まぁ確かに。でも雰囲気の勢いとかあるやん」 「まぁそれもあるかもやけど…俺も俺で色々あったんやって。」 「え?それ深掘りしよかな」 「もう随分前にしたやろ…何回言わせんねん」 「何回でも聞きたいのが、愛でしょっ!」 「きっしょ…」 ソファに座る謙杜の膝枕で見上げてみる。言葉とは裏腹な表情が可愛くて、茶化したくなる。でも少し前まで犬っころみたいな顔だったのに、いつの間に凛々しくなったんだろうか。頬に触ろうと伸ばした手は、オヤジが食べているカリカリ君が溶けて、私の頬に垂れてきたせいで消滅。 「うわっ!謙杜!カリカリ君が!汁!!」 「あーごめんごめん舐めといて」 「…食べるの忙しいので私にはしかねます。」 わざと可愛い顔をして再度見上げてみる。と、少し照れて困った顔の彼がいてニヤニヤ。頬を突き出すと、その意図を汲み取ったのかすぐ降りてくる唇。未だに控えめに舐められる頬は、なんだか物足りない気もする。でもそれが謙杜で、謙杜なのだ。 「甘かった?」 「……まぁそれなりに。」 「アハハ。照れてやんの」 「お前なぁ…「あ!」 「今度はなんやねん、」 膝枕から跳ね上がると、棒アイスを口に咥えながら先ほどの買い物袋を漁る。…やっぱりそうだ。アレがない。今日の主役の、アレがない! 「何?なんか買い忘れたん?」 「……卵がない……。」 「えっ。マジ?今日天津飯作るって意気込んでたのに」 「うわーん最悪。ジャンケンしよ」 はいはい、と呆れられながらもジャンケンして、いつも通り負けました。ハァ…。と深い溜息を付きながら玄関でサンダルを履いて、またクソ暑い外に出る憂鬱さに項垂れているとふと謙杜が隣に来た。 「?」 「俺も行くわ」 「え…いいん?」 「暑さで溶け死ぬ時は一緒や。」 「アハハ!死なんわ!待ってろ天津飯ー」 「美味いの作るでー!」 暑さに負けずハイテンションで、握られた手を引かれて玄関を開けた。西陽が指すなか、左手の薬指が静かに光った。 愛とか恋とか/2022.10.6 |