季節は流れ追い越し−−…7年後、11月22日。世間を騒がすニュースが一面を飾った。ある家族は、朝の情報番組で流れたそれに朝ご飯そっちのけで会話の中心になり。 「えー!!お母さん見て見て!みっちー結婚だって!!」 「えー?誰それ」 「みっちー!!なにわ男子の!!私ずっと好きだった人じゃん!!」 「あ〜…そうだったね。結婚?早いわね」 「そうなの。みっちーまだ30だもん…。でも相手が一般人だって……。でも調べたら名字名前で!だからまだ…ギリ!許せるっていうか」 「名字名前?…」 「めーーっちゃ前に共演した相手!随分前に芸能界引退してるけど、私この人ならまだ許せる……気がする!!」 「あっそうなの。泣いてるの気のせいね?」 「気のせいなの〜〜〜!!!」 ある女子高校生は、通学中の電車の中で話題になり。 「えっ!みっちー結婚て」 「相手一般人って。でも元芸能人で名前割れてるっぽい…名字名前?知ってる?」 「知らない。でもトレンドになってる。あと、"わた婚"…も一緒に」 「わた婚?何それ」 「Abemaの配信番組らしいよ。芸能人同士が結婚してみたらどうなるか…っていうやつ。10年前ぐらいに放送されてたらしい」 「へぇー。なんか面白そう。見てみよ」 「でもさ、そんな前から付き合ってて結婚って…なんか、まだ推せるね」 「一途だから?」 「そそ。変にグラビア女優とかアイドルとかと結婚されるよりなんかマシ。」 「おぉ〜。道枝ファンにそう言わせる推しとは。」 「………でも30で結婚はまだ早い………!」 「アハハ本音」 あるOLは、仕事中なのにも関わらず衝撃的過ぎて話題になり。 「ちょっ………!私の推しがけっ………けっ………!」 「あージャニーズの?何結婚でもしたの」 「言うなぁぁぁ!えっ…えっマジで?どうしよう生き甲斐が」 「だからさぁ、俺でよくない?」 「マジで黙れ心から黙れ相手は……名字名前!?昔共演してた女か……しかも年上!?……」 「まぁ、お前の推しも人間だったってことだな」 「えぇどうしようマジで無理……生きていけない………」 「アイドル辞めるわけじゃねーんだろ?」 「えー………、……そう書いてはあるが……」 「だろ?ならOK。生きて貢げ」 「むりむりむりむ そんな世間の声はその一瞬を綺麗に彩って、流れるように消えていく。その繰り返しが重なって、穏やかな色に変わっていく。それを私に教えてくれたのは、他の誰でもない。 「名前ー。出るでー」 「ごめん!もうちょい…!」 「やから昨日の夜中に役所行っとけばよかったやん。」 「だって!せっかくやねんからお日様にも祝福してほしくて……」 「……え?」 「、えっ?何?」 「アハハ!いーや、何でもない。まだ?」 「えっ絶対なんかバカにしてるやん!まだ!」 「どんな髪型でも可愛いって」 「まーいっか。じゃイヤやの!今回だけは…!」 「はいはい。好きにしてください。」 「ごめんって〜〜!」 急いで部屋を出ると、玄関扉に凭れていた彼と目が合う。30歳になって大人の色気が出てきたようで、全体的に落ち着いている。それでも表情はあの頃を彷彿とさせて、勝手に頬が緩む。出会った頃は20歳で、まだまだ子どもだったのに。ちょっと呆れたような、でも、その奥に愛おしい何かを見るような視線は大人になった証のようだ。 「さ、行きますか。」 「はい!旦那様」 「えー。じゃあ…奥様?」 「なんで疑問文なんよ」 「アハハ。なんでやろね」 「ねえ、途中でコンビニ行こ。」 「ん?いいけど」 「"10年越しの真実の愛"、買いに行こうかと…」 「アハハ!俺らの記事ね。本人らが買うってめっちゃおもろいやん」 「だって話題なのって今だけやし。記念に?」 「名前ちゃん強なったなぁ…。」 「駿くんのおかげですね。」 「えっ俺?…なんか照れるな」 「これからも一つよろしくお願いしますぅ〜」 「こちらこそですぅ〜」 「「アハハ」」 2022.12.29 |