結局、桃鉄20年コースをやり切って決心。吹っ切れたようで、でも逃げられない現実。ある程度酒が入っていないと厳しくて、また帰ってくるね、とみちに伝えた。彼氏の家に戻ると案の定の言葉が降ってきて、頷いて荷物を持って出た。みちの家に着くまでに泣いておきたくて、歩きながら結構泣いた。周囲はドン引きしているだろう。けれど、

「名前ちゃん」
「……み、…みち……。」

そんな思考を先読みされたらしい。みちは自宅マンションの下でしゃがみ込んでいた。大号泣の頬は、誰が見ても汚い。それでも、この子だけは。頬を指で撫ぜて抱き寄せてくれる。

「…よくがんばりました。」
「〜〜〜……!…ゔぇ……」
「アハハ。どんな声よ」

可愛くない泣き声。服を汚してしまうほど泣いた。その間、みちは一言も喋らなかった。ただやさしく、背中を撫ぜてくれるだけ。それが、染みすぎて、いたい。15分ぐらい泣き喚いて、やっと収まってきたとき。みちが私の頭の上で言った。

「俺も、やめる。」
「…え?」
「もうやめるから。」
「……?」

聞いても、答えてくれないと思った。それほどの強い意志。その後みちと一緒に家に戻った。桃鉄は飽きたから、マリパしようかって話と共に。ピザでも取ってジャンキーデーにしよう!と笑う私に、頷いてくれたみちがみちじゃないように見えた。

「今日ずっと飲んでんね…やばい?」
「たまには論でセーフとみた。」
「はぁぁ〜〜おみち様ぁ〜〜!」
「お代官様じゃ!」
「ははぁ〜〜〜!」

22時過ぎ。マリパも飽きて、残ったお酒を嗜む。こんなしょうもない話が楽しくてたまらない。あの人の彼女でいたい、なんてしらがみに捕らわれすぎていたんだろう。あの人と別れると、もう次は無いって思い込んで。別に独りでも、友達が、みちが居てくれたらそれで良かったのに。

「名前ちゃん、お風呂入っとく?」
「あーそうだね。入ろっかな…私のパジャマー」
「うん、あれ俺のね。名前ちゃん用みたいになってるけども」
「でもみち用だとあれ小さすぎるね?」

知ってるんだぞ。私用に買っててくれたの。みたいな視線を投げると分かりやすく、知らないとばかりに鳴らない口笛吹いてる。いちいち可愛いので、いちいち構ってしまう。弟離れできない姉みたい。

「………まぁ、その、かくかくしがじかですよ。」
「へぇ〜?かくかくねぇ〜。」
「うっさいうっさい。持ってくから待ってて」
「アハハ。ありがと。」

洗面所に入って、持ってくとは?と首が傾げる。まるで一緒にお風呂入るみたい。……いや無いなふざけた。とりあえずコンタクトを取った。上の服を脱いで、キャミソールになったとき。扉が開く。

「ちょ!みち!」
「あっごめん。…一緒に入る?」
「…どうした?マリパしすぎて頭パーティなった?」
「アハハ!それおもろい。頭パーティって…」
「はいはい。早く出て行く」
「んー行かんかな。」

無駄に背の高いみちを追い出そうとして、逆に手を取られる。あの、くりっくりの目が、可愛らしく光っていない。例えるなら狩りをする前の動物みたいで。あの時感じた違和感は、これを予知していたのか。

「みち……?」
「もう、こういうのやめへん?」
「え」

取られた手が引かれて、目の前が真っ暗になる。唇が一瞬温かくて目を見開いた。視界いっぱいに、みちの顔。

「友達、やめよう。」


問い正したい2分前/2023.3.10
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