片付け

紫呉はとても…とっても片付けが苦手だ(苦手というレベルを越えてる気がするけど…。)片付けても片付けても──しばらくすると腐海を作り上げてしまう。初めのうちは毎回その光景に絶句していたけど、今ではもう慣れてしまった。慣れてしまっても小言は出るけど。

『なんで毎回、毎回…こんなに散らかせるかなぁ…。ここに寝てるんだよね?寝る場所すらなくない?』

「無いと思うから無いんだよ。寝ようと思えばその辺で寝れるもの。それにこれは意味がある散らかり方をしているって…前も言ったよねぇ?」

『座ったままで必要なものは取れるように…ってそれはただの言い訳でしょ?毎回片付けるこっちの身にもなってよね…』

「別に断っても僕は構いませんよ。文句言いながらも毎回やってるのは百合ちゃんの意思だよねぇ。あれかな?ポイント稼ぎ的なこと?」

まんまと図星を当てられたから言葉は返さないでおいた。にやにやしている顔が腹立つけど、言い返したら言い返す程にこっちの方が分が悪い。惚れた弱みともちがうけど、この男には本当に敵わない。

黙々と集中して片付けて1時間。ようやく生活できるスペースを確保できた。まだ心残りはあるけど、どうせすぐに腐海にされるのでほどほどにしておいた。

『あー!やっと終わったー!疲れたー!』

「疲れてるわりには元気いっぱいの声だねぇ、お疲れ様。それで…見返りは何をお求めかな?」

『……別に何かしてほしくて片付けしてるわけじゃないよ』

「へぇ…?欲深い百合ちゃんだから、何かしてほしくて頑張ってるのかと思ったけど。それともやっぱり僕に好かれたくて、気が利きますアピールかな」

『……ただのボランティア精神ですー!紫呉とちがって下心ありでばかり行動してないから』

「失礼だなぁ…僕もいつも人を利用しようとか考えながら行動しているわけじゃないよ」

『えーー……ウソだぁ…』

「……もっと僕の事を信用してくれても良いと思うんだけどねぇ。これでも優しさの塊なんだけどなぁ」

『それは絶対にウソ』

「まぁ…今のはさすがに盛ったけど。でも優しさも持ち合わせていますって。だから頑張ってくれた百合ちゃんには感謝でいっぱいだし、何かお返ししたいとも思っているよ」

『……本当に何もお返しはいらないよ。ただやりたくてやってるだけだし』

これはウソだけど。見返りを求めているのも事実だし、尽くすアピールをして私に気持ちが向いてくれないかなとも思っている。自分のズルさが嫌になるけど、どうしても期待は抱いてしまう。

「人に嘘とか言っておきながら自分は平気で嘘をつくんだね。そういうの狡いと思うよ。百合ちゃんの考えてる事はだいたいお見通しなんだから…それに素直な方が可愛げはある。変な意地張ってないで、素直に求めておいで」

優しい声で、優しい手で頭を撫でてくれた。でもそれがとても残酷で。求めても本当に欲しいものはくれないくせに、それなのに優しくしてくる。でもその優しさが欲しくて、私はまた彼の為にと勝手に尽くすのであった。

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