今年はお花見できないので、数年前のお花見の思い出を。

お花見と言っても紫呉の家の近くにある桜を夜に見に行っただけ。お花見してないと何気なく呟いたら連れて行ってくれた。

『夜だしライトアップされてないけど……しっかり見えるものだね。綺麗…』

「桃色が夜闇に浮いて見えるから昼とはまた違った風情があるよねぇ」

『……紫呉も風情とか感じるんだね』

「酷いなぁ、僕は小説家ですよ?風情や侘び寂びとかよく感じる方だと思うけどなぁ。そういう君こそ、お花見とか興味無いと思ったよ。毎年桜は見たいタイプ?」

お花見に興味ないって…どういう風に見られてたの私。冷めてる人間?誰よりも熱情向けてるのに心外だ。まぁ…紫呉以外にあまり興味を示さないからそう思われるのも仕方がないと思うようにした。

『桜…と言うより花は好きだよ。見ていて癒やされるし、花言葉とか見るのも結構好き』

「へぇ…じゃあ桜の花言葉は何でしょうか」

『え?えー……いきなり言われてもわからないよ。なんとなく調べたりするだけだから』

「それは好きと言うのかなぁ?」

『好きと知識量はちがうの』

「好きこそ物の上手なれ、だよ。…でも花言葉で考えると桜は君には似合わないね」

『……ちなみに桜の花言葉は?』

「”精神の美”と”優雅な女性”。種類によっては他にもあるけど、桜全体的の花言葉はこれ。面倒くさくて欲深い百合ちゃんとは正反対な言葉だよねぇ」

『…うるさいなぁ。どうせ私は美しくも優雅でもないよ』

「もう…そうやってすぐに拗ねる。あっ、でもフランスの花言葉は君に合っているかも」

『フランス?国によっても花言葉ちがうの?』

「違うよ。意味が真逆になる事も多い。ちなみにフランスでの花言葉は”私を忘れないで”」

『………………』

「重たい女代表の百合ちゃんにはピッタリな花言葉だねぇ』

『結局、嫌味だし…もういいよ。せっかくの気分が台無しなるから。紫呉の前では花言葉の話しない』

「すぐそうやって目を逸らすよね、君は。…綺麗なものばかりでは無いんだよ、花も花言葉も。暗いものもあるから、綺麗なものはより輝く」

図星な言葉に口を閉じる。また見透かされた。切ないや悲しいよりも、悔しいが際立つ。自分は見せてくれないのに、そうやって私の全てを暴こうとする。私だって、紫呉の全てを見たいのに。

仕返しに(ならないことは知っていたけど、)桜を見ていた紫呉の腕を引く。少し驚いたようにも見える表情を見て気分は良くなった。だけど、仕返しはやめない。

『大好きだよ』

突然告げた言葉は結局仕返しの意味はなくて。すぐにやり返される私はこの日も彼によって心を乱されていた。

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