そりゃあ、どこにも行ってほしくないわ。ここにいてほしい。でも仕事だもの、仕方ないわよ。
昨日の雨が嘘みたいに晴れた今日、煉獄は任務でまたどこかに行くらしい。どんな任務かは聞かなかった。帰ってきてから十分に話してほしいのだ。
行きがけに寄ってくれたのでそんなことを言うと、また一段と嬉しそうな顔をする。この人、本当に私のことが好きなんだなあ。そう思うと、私まで嬉しくなる。というより恥ずかしくなる。
「では、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
こんな見送りの仕方はしたことがなかったから慣れないけれど、結構好きだ。夫婦みたい。…うん、それもそれで恥ずかしい。

彼の背が見えなくなってから家に入る。途端に力が抜けて座り込んでしまった。なんでもない顔をしていたけれど、いつ顔が熱くなるか分からなかった。
昨日のことはやっぱり夢じゃない。台所には飲みかけのお茶が入った湯呑が二つ。体にも記憶にも、煉獄に愛された感覚がある。半年も待てなかったのは私も煉獄も一緒。帰って来たらそれとなく結婚の話を持ち出すのもいいかもしれない。