俺の恋人がいなくなった日2
ナナシさんが消えた。
そう朝コナンくんから連絡があり、残っていた書類全てを風見に押しつけ工藤邸へとすっとんでいった。顔を青くしているコナンくんからナナシさんが残していった手紙を受け取り読む。
「なんだよ、これ。」
「...降谷さんならナナシさんから何か聞いているかもしれないと思ったけどその様子だと...。」
「ああ、何も聞いていないよコナンくん。」
手紙には短く、ごめんなさい、今までありがとうございました。とだけ書かれていた。コナンくんによると工藤夫妻には仕事の退職願いと謝罪の留守電が入っていたらしい。一体何があったんだ。まさか誘拐でもされたのか?脅されてこんな手紙まで書かされて?いやそれならばナナシさんのことだ、犯人にばれないように何らかの痕跡を残すことぐらい...
「谷さんっ、降谷さんっ!」
「ん、ああ、ごめんよコナンくん。考え込んでしまっていて...。」
「あの、実は降谷さん宛てにもう一通あるんだ。」
「うん?」
「はいこれ...。」
コナンくんからその手紙を受け取り封を切り中を見ると先程と同じく短めの文章が書かれていた。
降谷さん、何も言わず急にいなくなってしまい申し訳ない。私は君の側にいてはいけないんだ。でもこんな私のことを愛してくれてありがとう。私も愛しく思っていた。
「いつでも君の幸せを願っている...。」
「...降谷さん、僕少し博士の所に行ってくるね。なにか手がかりを掴めるかも。」
「ああ...。」
嗚呼、コナンくんに気を使わせてしまったな。できるだけ笑顔を保ちコナンくんを見送ってから何かが決壊した。足に力が入らず床に座りこむ。
「はは...」
目の奥がぐっと熱くなり視界がぼやける。ナナシさん、と呼んでもいつもの彼の頬笑みと声は返ってこない。