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「貴方が好きです、ナナシさん。」
「ははは、ありがとう。私も君の事は好きだよ降谷さん。」
「む、likeだと思ってますね?」
「うん?」
「愛しているの方の好きですよ。」

ナナシさんとサシの飲み、3徹明けだからか普段ならこんな量で酔っぱらうはず等無いのにみょうにふわふわした頭とナナシさんと二人っきりで舞い上がった頭で普段なら絶対にしないだろう行動をしてしまった。酒に任せてなんて告白だなんて、その上ただでさえ男同士で慎重になければならなかったはずなのに。むしろずっと俺の中に仕舞い込んで伝えるつもりも無かった。友人として傍にずっといようと思ったのに。タガが外れた頭と口はまだ少し残っていた理性を押しのけて止まらなくなっていた。

「あ、今酔っ払いの戯言とか思っただろう。」
「(バレテーラ)いやぁ、その、なんだ、仕事が忙しくて疲れているのかな?それで人肌恋しいとか...」
「なぁに言ってるんですか!俺は本気だ!」
「ほ、ホー、」
「貴方のことが愛しいと自覚してからもう随分経つんですよ!そろそろ俺を受け入れてもらえませんかねぇ!」
「い、いや、私は今初めて聞いたしなぁ、」
「そりゃ今初めて言ったからな!」
「(酔っ払いはいつの時代もめんどくさいものだなぁ...)」
「組織壊滅したら言おう言おうと思ってたがいざ壊滅したとなったら事後処理に忙しいし飲みに行くとしても何故か赤井とかついてくるしでなかなか二人っきりになれずじまいでどれだけ待たされたと思ってるんですか!」
「そ、そうなんだね。」
「赤井のやつ絶対確信犯だ、赤井ィィイ!」

何か自分でもよく分からないことを口走っている気がするがもう止まらない。今更取り繕う言葉なんてものも思いつかない。もうどうにでもなれと思考は投げ出した。叫んでいる俺を宥めながら水を飲ませてこようとするナナシさんぐう聖。好き。

「で、どうなんですか、返事は。」
「ああ、その、」
「...やっぱり男同士ですもんね。気持ち悪いですよね、知ってました。すいません、」
「いや、その驚きはあったが君だからかな。嫌悪感など全くないよ、むしろ私のような人間を好いてくれてありがとう。だが、その、」
「そうですよね、無理ですよね。分かっていました。今日の事は忘れて下さい、それで友人として俺を置いておいてください。俺の我儘だし気持ち悪いだろうがお願いします。」

やっぱり言わなきゃよかった。そんな困った顔をさせたくなかった。もう会うこともないのか。嫌われた。そんなことが頭の中をぐるぐるまわっている。目の奥が熱くなってナナシさんの姿が歪む。俺は泣いている、のか、はは、情けない。

「いや、違うんだああ泣かないで降谷さん。私は感謝しているんです、私なんかを好いてくれる本当に嬉しいんだよ。」

そう言ってにこりと俺に笑いかけるナナシさん天使かよ、天使だな。頭の中ではもうおかしなことを考え始めているなんて気づいていないぐう聖ナナシさんは俺の頬を包んで目を合わせてきた。あーこの目が好き。吸い込まれそう。

「ただ、私のような(中身的におじいちゃんな)人間に(未来ある有能な)安室さんはもったいと思う。」
「ナナシさん...。」

どこか悲しそうに笑うナナシさんに胸の奥がぐっと痛くなった。そんな顔をさせたかったわけじゃない。嗚呼、この人はきっと俺が思っている以上に優しい人なんだ。知っていた彼はこういう人だと。だからこそ俺はこの人に惹かれたわけでそうですか、と引き下がるわけがない。嗚呼、好きだ愛してる。独りよがりでもいい、こんなに愛をくれる優しい人にたくさんの愛を逆にあげたい。

「それに、」
「?」

急に神妙な面持ちになったナナシさんに俺も身構える。もっと深い事情があるのか。もう酔いなんて覚めた。シラフで受け止める。彼の全てを受け入れて包み込んでやる。

「私はインポなんだ。」
「」

予想の斜め上の発言をぶちこまれた気がする。