俺の恋人がいなくなった日3
ナナシさんが姿を消してから1年程が経った。依然として彼の消息は不明。公安の情報網を持ってしても彼の居場所は掴めなかった。ただ一つ、気になることがある。黒の組織の残党を検挙するためにアジトに乗り込むと大抵残党が拘束されているのだ。拘束されていた者達に訊くと皆一様に男一人単身で乗り込んできて構成員を拘束し情報を全て持っていく、と答えるのだ。しかもその情報はご丁寧に公安部に届けられている。最初は何かの罠か、と怪しんでいたがこの一年でその情報の正確さは身に染みて理解した。それと確証は持てないがこんな事が可能なのはナナシさんぐらいだろう。俺はナナシさんを見つけられないのに彼は俺の事を見ている(見守っているつもりか...?)。これがとても腹立たしい。この一年ずっと悲しみに暮れていたと思うなよ。俺は元来悲しみを怒りに変えて糧にする人間だ。ナナシさんがいなくなった悲しみはとっくに怒りに変わっている。絶対に見つけ出して文句の1つや2つ、いやそんなものじゃあ足りない。もう二度と俺の下から去ろうと思わないぐらいに怒って怒って怒って、それでおかえりなさいと、言いたい。抱きしめたい。力いっぱい。何か思う所があってのことだと思うがそんなの知ったことではない。俺の幸せを願っている?そんなの貴方がいないと幸せになんかなれるわけがない。
「降谷さん行きましょう。」
「ああ。」
今日の検挙はその匿名さんからの情報ではなく公安のみの情報によるものだ。もしかしたら匿名さんがまだ手に入れていないアジト情報の可能性が高い。上手くいけば鉢合わせることもできるかもしれないからその時は覚悟してもらいたいナナシさん。