俺の恋人がいなくなった日4


なんだか凄い寒気がした後にくしゃみを盛大にしてしまった。黒の組織の残党を縛りあげながら腕を擦る。風邪でもひいたかな...。未だにもがもが暴れている男の首をトスッと殴り眠らせてパソコンを弄る。ふむ、前回の乗り込みではあまり情報を得られなくて今回少し手間取ってしまったけど情報量は良い感じだね。USBを繋げて情報を移す。これはいつも通り公安の皆さんに届けるかな。椅子に深く座り込んで煙草を取り出す。赤井さんが前に置いていったのを結局返せなくてちびちびと吸っているんだがこれが最後の一本かぁ、買って吸うほどでもないんだが時たまに吸いたくなるんだよな。深く息をして体の緊張を解しながらパソコンの画面を見る。公安...降谷さんは元気そうで良かった。最初のうちは目に見えてやつれていてとても心配し、それと同時にそれほどまでに愛してくれていた降谷さんから逃げるように姿を消してしまったことに罪悪感があった。いくら彼の為と言っても何も知らない彼からすれば私に捨てられた様なものである。それでも、それでも私は彼を守りたかった、夢のような冷たくなっていく彼を見たくなかった。私が傍にいて訪れる不幸より、私が離れていつかくるであろう幸福を望む。いつでも君の幸せを願っている、この言葉通り彼の幸せを願い、そしてその幸福を彼と一緒に守りたい。それで私は幸せなんだ。...まあ少し寂しい気もするけど。
データ移行完了の音と共にUSBを引きぬいて立ち上がり扉に向かう。少し感傷に浸りすぎたね。なにがどうあれ私は彼を遠くから守るわけで、あんな夢のようなことは起こさせない、絶対にだ。ドアノブを回し、廃墟だからか少し耳触りな音を立てて開いたドアをくぐるとチャキという金属音が聞こえ咄嗟に身構える。おかしい、一応全員拘束したはずなのに...どこかに潜伏していたか?そのまま音の方向へ視線を向けると驚きで煙草を落としてしまった。

「え、降谷さん?」
「ぁ、」

ここで会うはずもない降谷さんがこちらに銃を向けた状態で呆けていた。降谷さんが小さく何かを呟いた瞬間、私は我にかえり咄嗟に逃げ出した。

「やっと、見つけた。」