俺の恋人がいなくなった日6


恥ずかしながら降谷さんと抱き合いながら大泣きした多田内ナナシです。いい歳こいて何やってるんだ私は..。もう逃げませんとゲッシュ()を立てて手錠を外してもらいぼーっと公安の人に電話をかける降谷さんを見ていた。はぁ、結局降谷さんのところに戻ってきてしまった。彼に上手く丸めこまれた感じがあるが仕方がないだろう、私は元々彼のお願いは断れない質なんだ。なんだか照れくさくなってそれを誤魔化すように周りを見ると黒の組織の残党が転がっていた。うわぁ、意識は無いとしても他の人がいる横で私たちはあんなことしていたのか。恥ずかしさ倍増である。この野郎と半ばやつあたり感覚で拘束の確認をしてもっときつくしてやる。後は公安の皆さんが此処まで来て身柄を引き渡せばおしまいだ、と座り込むとドッと疲れが出てきた。さっき全速疾走したから乳酸が...。手持無沙汰なのと疲れを癒す為に煙草を取り出すがそういえばさっきのが最後の一本だったのを思い出す。...うん?なんだか即視感を感じる。その正体に気付いた瞬間ひゅっと息をのんだ。ああ、そうだこれは、この場面は夢で見たところじゃないか。落ち着け、取り乱すな。まだ、まだ間に合う。もう二度と、降谷さんを死なせてたまるか。夢ではどこにいた。確かあそこの陰だったはずだ。まだ気づいていないふりをしてゆっくりと近づく。ある程度までいってから一気に距離を詰めて陰を覗く。嗚呼、

「みつけた」

***

「あれ、ナナシさんどこに行ってたんですか?」
「気になるところがあったから見に行ってたんだ。でも杞憂だったみたい。」
「そうですか。今から俺の部下が組織の奴らを回収しに来ますので後は任せてください。」
「ああ、頼むよ。」

さあ行きましょう、と言い歩く降谷さんの後ろに続いて歩く。そうだ、私が守ればいいんだ。降谷さんのすぐ側で。彼に降りかかる全ての厄災から私が。それでいい。私が、守る。