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その後簡易的な取り調べや、工藤家を始めとする私の知り合いに心配をかけてしまったことへの謝罪まわりなどに追われて忙しい日々が続いた。いろんな人に怒られてしまったがとくに新一くんにはこってりと絞られた。もうあんなお小言の会はごめんだよ...。しかも最後に泣かれたのがとてもショックだった。姿がコナンくんということも相まって、罪悪感増し増しである。新一くんの幼少期でも泣かせたことがなかったのに...。また工藤夫妻の温情に甘え今まで通り家政婦をさせていただいている。本当に彼らには感謝してもしきれないね。
そんなこんなで一年前のような平和な日々を過ごしているわけなんだが前と少し変わったところがある。降谷さんについてだ。一年前もお付き合いさせていただいていたわけだが、この間のことがあってからというものなんというか、彼と私の距離が縮まった気がする。物理的にじゃなく心情的に...いや最近物理的距離も近い気がするけど。あと私の頭を悩ませていることがあって...降谷さんのなんでもかんでもがかっこよく見えてしまう...!いや、今までも降谷さんはかっこよかったがそれは孫や息子がかっこよくてほっこりする感じだったんだ。それにどちらかというと彼の事は可愛くてしょうがなかった。孫や息子に感じるような慈しみの方が大きかったんだ。それが今となってはどうだ、彼の仕草一つ一つにこうなんだ、胸の奥が痛くなるような思いが溢れる溢れる。これが胸キュンというやつだろう、新一くんに教えてもらったから知ってるぞ!今までこんな経験をしたことが無くて最初は戸惑い一方的にギクシャクしてしまったが見るに見かねた(らしい)新一くんに色々レクチャーされて理解した。こんな歳だけど恋愛初心者なんだ許してくれ。そんなことがあり恥ずかしながら降谷さんへの想いを再確認した後、もう一度しっかりとこの気持ちを伝えようとこの間の残党の後処理をようやく終わらせて久々に帰宅できる降谷さんを彼の家で待っていた。鍵が開けられる音が聞こえて急いで玄関まで行きおかえりなさい、と出迎えると彼は感極まったような泣きそうな笑顔でただいま、と言った。その後作ってあった夕飯を温めて歓談しながら食べ終わり洗い物をしている時だった。後ろから降谷さんに抱き寄せられてキスをされた瞬間今まで感じたことのない痺れが腰から頭へと駆け上がってき耐えきれずへたり込んでしまった。頭がぼーっとくらくらして立ち上がれない。咄嗟に支えてくれた降谷さんが焦った顔でこちらを覗きこんでくる。

「大丈夫ですか!?」
「あ、ああ...なんか良く分からない感覚が...はぁ...」
「!...ナナシさん、その、あの、」
「?」
「勃って、ます...。」
「!?」

咄嗟に股座をみるとゆるくだけど立ち上がっているマイサン。あわわ、と降谷さんを見ると彼はじっと見つめ返して私の肩をがばっと掴んだ。

「ナナシさん!」
「は、はい!」
「今から貴方を抱きます!」
「あ、その、うん、よろしく、頼むよ、」

ぐいっと手を掴まれ寝室へと連れて行かれる時に見た降谷さんの耳が真っ赤で少し可愛らしいと思った私は後にそんな余裕なんてなくなる程になるとは微塵も思っていなかった。