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「ん、」
「起こしてしまいましたか。おはようございます、ナナシさん。」
「ぅん、おはよ、う」
「嗚呼、声が掠れてますね。水を持ってきます。」

心地よい感覚を頭や顔に感じてゆっくりと目を開けると頬笑みながら私を撫でている降谷さんがいた。嗚呼、朝日に照らされて髪の毛がキラキラして綺麗だ...。ぼーっと見つめていると挨拶されたから返すと声が掠れていてしっかり喋れなかった。見かねた降谷さんが水を取ってきてくれるのをこれまたぼーっと眠気眼で追い、起きあがろうとした瞬間腰に痛みが走る。突然の痛みに唸りながらまたベッドへと逆戻りをしていると慌てた降谷さんが支えながら起こし水を飲ませてくれた。痛みで完全に覚醒した頭は腰だけではなくお尻や体の節々の痛みまで認識し始める。

「ぐぬ、」
「体痛みますよね?すいません、昨日無茶させてしまって...。」
「嗚呼、大丈夫だ大丈夫。こんな痛みすぐに慣れる。」
「でも、」
「それにね降谷さん、昨日はその、君とできて幸せだったよ。」
「うう、ナナシさぁん!!!」
「よしよし、ただ回数を減らしてもらえるとありがたいな。私もういい歳(中身はじじいだが)だからね...。」
「そこは約束できませんね!」
「!?」

私に抱きついて頬ずりしてくる降谷さんのされるがままにぐりぐりされているとそう言えばなんでインポが治ったんですかね?と降谷さんが聞いてきたのをきっかけに昨日伝えようとしたことを思い出す。

「降谷さん、そのことで心当たりがあって...それで君に伝えたい事があるんだ。」
「...はい、なんでしょうか。」
「私は君の事が好きだ。」
「はい。」
「今までもそうだった。君は私の中で大切な存在だった。これ以上ない程に。でも、それはまだなんというか好きという感情だったんだろう。」
「はい。」
「それが私の中で最上の感情だと今まで思っていた。いたんだが、その、この間の件で君に惚れ直してしまったみたいで...。」
「っはい。」
「あの日から君のことを今まで以上に愛しく思うようになったんだ。」

何故だか涙がこみ上げてきてしまいぽろりぽろりとシーツに落ちてしまう。はは、格好悪いな...でも胸がいっぱいになって止まらないんだ、許してくれ。降谷さんの目をしっかり見つめて昨日から言いたかった言葉を心をこめて伝える。

「降谷さん、愛してる。」

そう言った瞬間力いっぱい抱きしめられた。ぎゅうっと感じる痛みも心地よくて、嗚呼幸せだなぁと感極まった涙をぼろぼろ流しながらこの想いを伝えるように私も力いっぱい抱きしめ返した。