弟分から自立したいお話


IFジンの兄貴分幼馴染設定

突然だけれども私は住み込み家政婦と言う名のヒモ状態にある。今世は中々平和な世界に産まれた私は平凡な人生を、平和な幸せを噛みしめていた。...インポだけど。今までの人生の疲れを取るようにそこそこに頑張って普通の生活を送っていた。次産まれる世界は今世みたいに平和なわけじゃないから今のうちに休まないと。けれどもそんな幸せも長くは続かなかった。いきなり会社にクビを切られ(理由は全く教えてもらえなかった)、労基に訴えてやると悲しみに沈みながら帰ればアパートが全焼。うっそだろおまえ、と泣きっ面に蜂やら石やらクラゲ状態の俺に声を掛けてきたのは久々に会った幼馴染、黒澤陣君だった。物凄く厳つ...イケメンになってて吃驚した。君急にいなくなって心配したんだぞ、とか、物凄く背高くなったな、とか色々話している内に外車に入れられなんか物凄い高級そうな家にお邪魔することになった。そこからもうあれよあれよと言う間に陣君の家に居候させてもらうことになりズルズルとこの状態である。自立する為に仕事を探そうとすれば金が必要なら俺に言え、と言われ札束を渡される(流石に受け取らなかった)。これからずっと世話になるわけにはいかない、働いて世話になってる間はせめて家賃分は収めたいし貯金して自立しなければ、と話せば俺がアンタ1人養えない甲斐性なしだとでも言いてぇのか、と凄まれる。陣君に黙って面接に行って内定が取れて内心小躍りするぐらい喜んでいたのに後日内定取り消しになったのは流石に泣いた。その後他の職場に面接に行ってもいつも申し訳なさそうに駄目な電話がくるのは本当に辛い。もう日に日に死にそうになってる私を見兼ねた陣君は俺の家政婦として働け、と言って私を雇ってくれた。嗚呼、この世に私を必要としてくれてる人はいたんだ...!と、当時は思ったが冷静になって考えるとこれはヒモなのでは...。ただなんだか陣君は家事がさっぱりのようで今までどうやってたんだろうか、と心配になるレベル。私がいないとこの人衣食住何もかも乱れまくるのでは...と日に日に離れ辛くなっている。モテるだろうから今までは彼女さんとかが世話していたんだろうか...。ただ見た目は丸っきり変わってしまったけど中身は相変わらずのようで、なんだか昔に戻ったようで嬉しいのは内緒だ。昔は天使かと思うぐらい可愛くて弟分としてそれはもう猫可愛がりした。陣君の家庭は結構複雑でいつもうちで世話していたんだけど中学生を卒業してから急に行方不明になってしまった。置き手紙に働くから探すな、と書いてあって事件ではないとは思っていたもののとても心配していた。今じゃこんなに大きくなってその上、こんな立派な家に住めるぐらい良い仕事に就けてるみたいで兄貴分として感慨深い...。未だに何の仕事してるのかは教えてくれないけど。

「...」
「!?びっくりした!お、おかえり。」
「...ああ。」

いつの間にか帰ってきていたらしい陣君が真後ろに立ってて危うく鍋をひっくり返すところだった。保温にして陣君に向き直れば無言で頭を私の肩に乗せて一息つく陣君。小さい頃からの習慣みたいなもので、外から帰ってきたらいつもこうしていた。昔と同じようにギュッと抱きしめて頭を撫でる。よしよし。見た目は変わってしまったけどこんなところを見ると中身はあまり変わってないんだな、と少し微笑ましくなるのは内緒。