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「ナナシさん、」
「ん、ハグかな?いいよ、おいで。」
「...ありがとうございます。」

最近の降谷さんは甘えん坊さんで私に抱きしめてもらうのがトレンドのようだった。普通のハグではない、私の胸に耳を当てて心臓の音を聴くような、それでいて私にすがり付くような...そんな抱きつき方。彼はきっと生きていることを実感したいんだろう。長い事組織に潜入して、日々危険と隣り合わせで休む暇もなく、本当の自分を心を隠して演じてきた降谷さん。その彼の胸の内は想像はすれども私が思う以上のものだろう。それを完全に理解することはできないだろうけど寄り添うことはできるかな、とは思う。少しでもいい、彼の背負っている重みを取り払ってあげたい、分けてほしい。
すがりついてくる降谷さんを少し痛く感じるだろう程度に力いっぱい抱きしめる。突然の圧迫感と痛みに驚いて呻く降谷さんににんまりと笑ってやる。どうだ痛いだろう、痛いというのは生きている証拠だぞう!

「ナナシさん...。」
「ははは、どうだ私の抱き締め攻撃はなかなかだろう!」
「っぷ、あはは!」
「ふふ、愛しい愛しい私の降谷零さん、私のハグは如何かな?」
「...とても、心地がいいです。」
「それは良かった。」

知ってるかな?ハグしてるとね密着してるから君の心音も聞こえるんだよ。とくんとくんとね。私も心地がいいよ。