一度ザップ・レンフロは地獄を見るべきだと思う。
午後23時過ぎ、そろそろ寝ようかと仕度をしている最中に響いたインターホン。こんな時間に誰だろうと開けると物凄く酒臭いザップ。私の第六勘がこれは関わってはいけない案件だ、と告げ、そのお告げに従って扉を閉めるが時既に遅し。ガッっと足を挟まれ閉まらないようにされてしまった。おうじーざす。そんな足構うもんか、千切れたら師匠みたいに血法でなんとかすればいいんだ。ギリギリと攻防戦を続けていたけどそれは血法まで使い始めたこの酔っ払いおさるさんによって幕は閉じた。しかも、しかもだ!
「エミリー、なんて冷たいんだ。さっき電話した時はノリノリだったじゃないか。」
「どんだけ飲んだのよ、私はエミリーちゃんじゃないよ。」
「なに言ってるんだ。君はこんなにも可憐なのにっぷ...」
「ああ、もうほら吐くならトイレ行って、はいはい。」
愛人の家と間違えてやがる...!おぼろろと吐いてるザップの背中を擦りながら深く溜息を吐く。どれだけ飲んだらこんなになるんだろうか。粗方吐き終わったザップにコップと歯ブラシを渡して漱がせる。少し酔いが醒めたらしいザップは私を見てエミリーじゃねーじゃねぇかなんだナナシかよ、とか言う始末。こいつ...。呆れて頭を軽く叩いてから閉め出そうとすると慌てたように縋りついてくるものだからどうしようもできない。非戦闘員の非力さを舐めないでいただきたい。
「なんだよぉ〜ナナシお前俺を追い出す気か!?」
「そりゃそうよ。エミリーちゃんでもジェシカちゃんでも好きなところ行きなさい。私は眠いの。」
「は〜!?こんなに弱ってるザップ様をよくも放っておけるなぁ!?」
「私は貴方のママじゃないの。」
飯をつくれーやら酒盛りに付き合えーやらやんややんや言って腰に引っ付くザップを引き摺りながらベッドに入ると漸く諦めたのか腰から離れた。ふぅ、やっと眠れる...明日早いんだよね...。
「鍵は玄関の棚の上にあるから閉めて郵便受けに入れておいてね。」
「...だーっ!気が変わった!テコでも動いてやんねーからな!」
「あっ、ちょっと!入ってこないで、狭いでしょ!」
「うるせー!相手しねーんだったら枕にでもなってろ!」
ああもう、これじゃ寝れない!潜りこんでくる体をぐいぐいと押すがビクともしない。逆に腕を取られて抱き枕状態になってしまう。そのまま私を抱え込んで眠ってしまった。せめて風呂に入ってからにしてほしいんだけど...なんだか寝顔見てたらどうでもよくなってきちゃった。はぁ...もうしょうがないな。顔にかかっている髪を軽く払って寝顔をガン見する。...むかつくぐらい可愛い寝顔してるなぁ。そう言えば小さい頃もよくこうやって寝たな..焚火の横で修行で疲れたザップを労わるようによしよししながら寝かしつけてたなぁ...。懐かしさに任せてザップの頭を撫でる。さらさら動く髪の毛がとても綺麗でつい見惚れてしまう自分に気づき咄嗟に手を引っ込めた。はぁ、もうやだやだ寝よう。せめてもの仕返しに涎たくさん付けまくってやろう。酒と煙草と女物の香水の匂いがする胸に頭をぐりぐりして寝やすい位置を探す。ふとザップ自身の匂いが鼻を掠めてなんだか泣きたくなった。