思い出すのならもっと早めに思い出してもらいたかった、と私はとても、とっても思う。小さい頃に思い出しておけば羽生蛇村を出たし、これから起きることに巻き込まれることなんてなかっただろうし、なにより目の前の人に殺されなかっただろう。
「ナナシさん誕生日おめでとうございます。」
「あ、ありがとうございます宮田先生。」
「これつまらないものですが。」
「今年もありがとうございます。」
「いえ。」
毎年恒例の宮田先生からの(つまらないものなんかじゃ決してないとても高価な)プレゼントをいただいて頑張って笑顔を作り、一礼してから医院長室から出た。少しぎこちなかっただろうか...出る前に見た宮田先生の顔が怪訝そうだった。以前の記憶の無かった私だったら嬉しくて嬉しくて何回もお礼を言ってにこにこ笑顔でスキップでもしそうな軽い足取りでナースステーションに帰っていただろう。だって宮田先生を慕っていたのだから。でも今は純粋に喜べない。元々ここには私ではなくて美奈さんがいたはずだ、彼女が今ここで笑っていたはずなのに私が彼女の立場を奪ってしまった。美奈さんに申し訳がなくてしょうがない。後宮田先生とは距離をとろうと思う。今でも(美奈さんへの罪悪感はあれども)宮田先生のことをお慕いしてるし、プレゼント貰って飛び跳ねそうなぐらい嬉しい。だが殺されるのはごめんである。彼の気に障る事を言わなければいいことだけども生憎ゲームをやったのは随分前の事、細かいことはもう忘れている。彼にとっての気に障ることが思い出せない。それならばいっそのこと彼から離れてしまった方が良いだろう。
プレゼントを持って歩いている私を見て患者さん(村のおばあちゃん達)が若いっていいわねぇ、来年のプレゼントはプロポーズかしら、とかきゃあきゃあ談笑していて、
毎年の様に付き合ってませんよーからかわないでくださいよー、とにこにこできるはずもなく苦笑してしまった。