「ふぅ………まだ5月ですけど、流石に身体動かすと暑いですね……」
「直射日光が当たらないのはいいんだけど、体育館の中だと何だか熱が籠っちゃうよね。熱中症には気を付けてね」
「潔子先輩も」
体育館の隅で、右手に抱えたスポドリを飲みながら一息を吐いた。
5月2日、いよいよ待ちに待ったGW合宿が始まった。4日後には音駒高校との練習試合が控えていて、しかもこの合宿が終われば直ぐにインハイ予選が始まる。漸くコーチとチーム全員が揃ったばかりの私たちには余りにも時間が無い。その為、烏養コーチは残されたこの貴重な時間を無駄にしないようにと事細かな練習のスケジュール表を用意し、朝から意気込んでいた。そんなハードな練習メニューが始まり20分休憩が入った今、皆へばってしまっているのではないのかと辺りを見渡すが、スタミナお化けの影山と日向に至ってはこの休憩中、どっちが多く腕立て伏せを出来るかなんて競い合っているではないか。
「あ、そうだ。合宿所って何処にあるんですか?」
「学校を出て少し歩いた所にあるんだよ。……実はそこの合宿所ってね、出るらしいんだ」
「へっ……!?う、嘘ですよね……?」
強ばった表情で語りだす潔子先輩に思わず固唾を呑んだ。私はこの手の話は苦手で、一応そういう存在も信じている方だ。(幸いまだ視たり聴いたりした事はないが)だから、肝試しとか心霊スポットに面白半分で足を踏み入れる事とかも絶対にしない。これが作り話ならまだしも、実話で尚且つそれが身近で起こった話なら尚更。どうか、ただの噂話であってくれと願うが潔子先輩の顔を見れば、嘘を吐いているようには見えなかった。
「……確か去年の話だったかな。夏休みにサッカー部が合宿所を借りててね、深夜の2時頃に部員の一人がトイレで目を覚ましたらしいの。トイレに行こうと思って真っ暗闇の誰もいない廊下を歩いていたら、聞こえてきたんだって。サッカー部は男子部員しか居ない筈なのにどうしてか女の人の声がね。そこで耳を澄ましてみると、"たすけて"って声が――――」
「潔子先輩ストップ!!一旦ストップです!!」
あまりにも話の内容がリアルすぎたのと潔子先輩の話し方が心霊番組のそれっぽかった為、慌てて制止の声を掛ければ、それはすぐに止まった。私の反応に最初こそ豆鉄砲を食らったような顔をしていたが、次第に普段滅多に崩さないその綺麗な顔をくしゃくしゃにして大きく肩を震わせた。
「あはは!ウソウソっ!ただの作り話だよ!」
「今の嘘だったんですか!?潔子先輩、真顔で言ってくるから実話なのかと思いましたよ……!今夜一人じゃ寝られない所でした……!!」
「まさかこんなに怖がってくれるとは思わなかった!夏芽ちゃんってオバケ苦手なんだね、可愛い!」
「都市伝説とかだったらまだしも、これから自分が生活する場所が心霊スポットだったら誰だって生きた心地がしないですよ……!!」
「ふふっ、ごめんね。少しからかいすぎちゃったね」
「ちょっとトイレ行ってくるね。本当にごめんね……?」と怖がっていた私の姿を見て流石にやりすぎたと思ったのか、バツが悪そうな顔をする潔子先輩は再度私に謝罪をしながら席を外して、女子トイレへと向かった。何はともあれ作り話だった事が分かり、ホッと胸を撫で下ろす。それにしても潔子先輩も、普段はクールで御淑やかな人ってイメージだったから、まさかあんな冗談を言う人だったなんて、思いもしなかった。
「おい夏芽!!」
「ヘイ椎名!!」
潔子先輩にも、私が知らないだけでまだまだ意外な一面って沢山あるのだろうかとぼんやり考えていると、突如その彼女を崇拝する先輩二人組が私の前に立ちはだかってきた。
「……田中さんと西谷さん?どうかしたんですか?」
仁王立ちをしながら私を見下ろす先輩二人は、どうしてか悔しそうに下唇を噛み締めていた。はて、私はこの人たちに何かしただろうか。顔を合わせれば挨拶はきちんとしているつもりだし、会話をすれば敬語も欠かさず使っている。……もしや、この間日直で放課後練遅刻した事を怒ってる……!?などとこれまでの自分の言動を振り返っていると、彼らは重い口を開いた。
「夏芽よ……。どうしたら潔子さんをあんなに笑わせる事が出来るんだ!?」
「……はい??」
「俺達の前では潔子さんはクールビューティーなお姿しか見せてくれない!いや、それも最高だが今の無邪気な潔子さんは初めて見た!!椎名!!お前は一体どんな手を使ったんだ!?」
「手……??」
どんな手と言っても、潔子先輩の怪談話に私が本気でビビってたら、面白がられてただからかわれただけです、などとは言えなかった。これで私の弱みを知って今夜田中さん達から怪談話をされて寝られなくなったらそれこそ洒落にならない。どうしたものかと考え込んでいれば、田中さんと西谷さんはそんな私にお構い無くじりじりと詰め寄って来る。慌てて距離を置こうと後退りをするが、元々隅っこに居たのだから逃げられる筈もなく、二人から両肩をがっちり掴まれて壁際へと追い込まれてしまった。
「俺達はなぁっ……女子という、同じフィールドに立つお前が正直ちょっと……いや、かなり羨ましい……!!」
「ひっ……!?え、えと……二人とも距離が近くないですか……?しかも、肩………」
「くう……!椎名には触れたりこんなに近付く事も出来るのにどうして潔子さんには出来ないんだ……!!」
「もしや聞こえていない感じですか……!?」
自分より体格の大きい、しかも男子二人から迫られて落ち着いていられるはずがない。澤村さんなり菅原さんなり、騒ぎを聞きつけた誰かが助けに来てくれないかと密かに期待を抱くが、そんな筈もなく。きっと私の体が小さいから田中さんと西谷さんで死角になっているのだろう。……まぁ、何れ潔子先輩がトイレから戻って来るだろうし、潔子先輩が来ればそっちに行くだろうと、それまでは何とかこの場を凌いでいようと諦めた時だった。
「ちょ、おい!急に何処行くんだよ!勝負まだ終わってねぇぞ!」
「…………」
激しく音を立てながら足早にこちらに近付いてくる人物。きっと澤村さん辺りが気が付いてくれたのだろうと安堵の息を吐いた。
「今すぐ離れて下さい」
敬語……?
――――それにこの声、澤村さんじゃなくて、
「影山?何だよいきなり、そんなに怖い顔してどうしたんだよ?」
「聞こえませんでしたか?今すぐ夏芽から離れろって言ってるんです」
怒りを含んだようなその言葉には棘があって、助けられている筈の私までも身震いをしてしまう。
田中さんと西谷さんがその声の主の方に振り返った時、冷ややかな眼でこちらを見る影山がそこに立っていた。
「お前、何でそんな怒ってんだよ……?」
「別に怒ってないですけど」
「いやいやメチャクチャ怒ってるじゃねーか!」
無表情で淡々と返す影山はいつになく怖かった。部活以外の事で、しかも中学の時みたいに声を荒げる事なく静かに怒りを露にするのは初めてだった。……多分これは、本気で怒ってる。
「……田中さんも西谷さんも、清水さんが好きなんですよね?」
「当たり前だろ!」
「だから今椎名に潔子さんの事を聞いてたんだよ!」
「だったら何でコイツにちょっかい出してるんですか?その気もないのに夏芽に迫って触れるって行為が、俺には理解出来ないです」
「ちょっとちょっと!お前ら何やってんの!?」
「お、おいっ、大地に見つかったらヤバイぞ……!?」
ただならない雰囲気に流石に周囲に居た人たちも何かを察したのか、菅原さんと旭さんがこちらにやって来た。これ以上大事にはしたくないので影山の方に視線を送るが、当人はいまだ田中さんと西谷さんを睨み付けたままで私の視線には気付かない。兎に角これは無かった事にしたい。潔子さんと仲良くしててその事でいきなり二人に絡まれたから驚いてしまっただけだと弁解しようとした時、救世主が現れた。
「こらっ西谷、田中!怯えてる女の子に迫っちゃダメでしょ!」
「「っ?!」」
突如現れたその人は、二人の後頭部に拳骨を落とした。何と、拳骨を落としたのは意外にも潔子先輩だった。
「潔子さんから"こらっ"いただきました……!」
「潔子さんのゲンコツ……!しびれるぜ……!!」
潔子先輩からの叱責が余程嬉しかったのか、今までのやりとりなんて無かったかのように雄叫びを上げながら「うおおおおおお!!」と体育館内を走り出した彼らはまるで嵐が過ぎ去った後のようだ。その様子を潔子先輩は呆れたように「全くあの子達は……」と呟きながら眺めていた。
「あ、夏芽ちゃん。さっき武田先生が夏芽ちゃんの事探してたよ。西谷達に囲まれてたから気が付かなかったのかもしれないけど……。多分、今日の夕食の事だと思うから、職員室に行ってみて?」
「!あっ、分かりました。潔子先輩!今の、ありがとうございました……!影山もありがとう、ホント助かった……!」
時計を見れば休憩が終わるまで10分を切っていた。……話の内容にもよるが、練習の開始時間までには間に合うだろうか。何れにせよ武田先生は私に用があるのだから、急いで職員室に行かなければ。助けてくれた二人に大きく何度も頭を下げて、私は慌てて先生の元へと向かった。
▼
「清水さん。あの、ありがとうございました」
夏芽ちゃんが居なくなった後、影山は律儀に私に対して深々と頭を下げた。真っ先に割って入って夏芽ちゃんを助けたのは影山のはずなのに、何だかそんな姿が面白くて吹き出してしまった。
「影山って、夏芽ちゃんの事好きでしょ?」
「んなっ!?何で知ってるんですかっ……!?」
「さっきの言動を見れば分かるよ。夏芽ちゃんが心配だったんでしょう?それに影山、西谷と田中が夏芽ちゃんに触ってたから嫉妬してたんでしょ?」
「っ!いやっ、あのっ……」
「そもそも二人共、最初から如何にも"俺達何かあります"って顔してるから分かりやすい。何なら他の何人かにもバレてるし」
「んな!?」
素直に伝えれば、「マジか、バレてたのか……」と項垂れる影山。それがまた面白かった。頭を抱えたままの影山はぶつぶつと独り言を呟いた後「でもまぁ、その方が都合が良いか……」と何か吹っ切れた様子で静かに語り始めた。
「……中学の時、付き合ってました。初めて好きになった人で初めての彼女でした。……最初は上手く行ってたつもりでした。でも、俺がチームメイトと関係が悪くなって、それでお互い気まずくなって、別れました」
「……振ったのは夏芽ちゃんの方から?」
「……いえ、俺からです。俺が中学の時のチームメイトと仲が拗れ始めると、夏芽はあまり笑わなくなりました。いつも俯いてて、苦しそうな顔してて、俺はそれを見ないようにしてました。……ある日、夏芽が仲の良いチームメイトから俺と別れた方がいいって言われてるのを聞いて、そこで思いました。俺は夏芽にとって重荷だったのかもしれないと。それに俺、二人がデキてるんじゃないかって誤解して……だから、別れを決意しました」
意外だった。てっきり想像では夏芽ちゃんが辛くなって別れを切り出したものだと思っていたから。まさかあの影山から、あろうことかそこまで考えていたなんて。
「もう一度気持ちは伝えないの?」
「……今は、言いません。夏芽が俺に対する罪悪感が薄れてくるまでは。今伝えたらきっと夏芽は"NO"を言えない。断ったら俺をまた傷付けるんじゃないかとか、変な事考えると思うんで。だからまだ、言わない。でも、意識はしていてほしいんで、何もしないわけではないです」
「……驚いた。影山って正直、バレーしか眼中にないんだと思ってた。そっか、影山もちゃんと人の事好きになるんだね。だったらその想い、大事にしないとね。もう一度失わない為にも」
「……ッス」
そろそろ休憩も終わるだろう。準備に取りかかろうとその場を離れようとすると、影山から呼び止められる。
「清水さん」
「……?」
「俺、今でも分からないんです。関係を続けていくべきだったのか、終わらせて良かったのか、どっちが正解だったのか、分からないままなんです。どっちだったらアイツは、幸せだったんでしょうか?」
「……どっちが正解とか間違ってるとか、そんなの無いよ。教科書の問題じゃないんだから。別れても別れなくても、きっとその時は苦しい思いをしていたはず」
「……そう、っすね」
「ただ二人共、細かい事を考えすぎだと思う。もっとシンプルでいいんじゃない?」
「……?はぁ、」
首を傾げる影山に私のこの言葉の意図が伝わったのかどうかは分からない。でも純粋に二人にはいつか想いが通じ合ってくれるといいと、この時は思った。恐らくきっとこれは時間の問題だろう。
しかしながら近い未来、波乱の展開が起こる事をこの時の私は知る由もなかった。
▼
午後8時、長かった練習を終えた俺達には待ちに待った晩御飯の時間がやって来た。
「椎名、ご飯多いから減らしてほしいんだけど」
「ごめん、俺のもいいかな……?」
「あれ?ツッキーと山口、お腹空いてないの?」
「日中あれだけ気持ち悪くなるまで動いて食欲なんてあると思う??」
「寧ろ動いたからこそ食欲が湧くのだと……。ほら、日向達の食べっぷりを見てごらんよ?既にご飯3杯もおかわりしてるよ」
「何 か 言 っ た ?」
「スミマセン、今スグ減ラシマス」
「……ごめん、椎名。さっき西谷さんにも同じ事言われたから今のツッキー機嫌悪くて……。悪気はないんだけどね……」
「……成る程、理解したよ」
山口にフォローされつつ、渋々ご飯の量を減らし始める椎名の表情は少し複雑そうだった。
「椎名、亭主関白・月島の尻に敷かれる」
「ちょっ、スガ!それ影山の耳に入ったらヤバいんじゃないか……!?」
確かにこんなの冗談でも口にすれば影山が黙ってないんだろうなぁ、と昼間の事件を思い出しながら影山の方へ視線を向ければ、相変わらず日向とどっちがより多くご飯をおかわり出来るか対決に夢中で、アイツらのやりとりには気付きもしない。
「そういや清水、さっきの休憩の時に影山と何話してたんだ?」
俺達3年生組のテーブルに麦茶を注ぎに来た清水にそう問えば、一瞬考える素振りを見せた後、口を開いた。
「甘酸っぱい話?」
「まさかお前……本人に椎名との事聞いたのか!?」
「そうだけど……?」
「初めて会った時から違和感はあったけど、やっぱりあの二人ってワケアリだったの!?」
「清水…….お前度胸ありすぎかよ……。で、何て言ってた?」
肝が座っている清水に拍手を送りたい。しかもまさかあの影山が自分の恋愛事情を赤裸々に話してくれるとは。話の内容が気になって仕方ない俺達3人は次の清水の言葉にゴクリと固唾を呑んだ。
「ざっくり言うと、二人は付き合ってたんだけど影山のチームメイトとのいざこざの関係で別れて、でも影山は復縁を望んでる……感じ?でも時機が来るまではまだ本人には言わないって言ってた」
「……成る程、それなら3対3の時の椎名の態度も納得がいくよなー。……まあ確かに影山って、椎名の事しか見えてない感じだよなぁ……。今日のあの事件だって男前すぎて正直羨ましいわ」
「あれって、状況によっては修羅場になってたよな……」
「ん?俺がコーチに呼ばれてる間に何かあったのか?」
「「イヤ、別ニ何モ無カッタヨ??」」
思わず口を滑らせてしまった旭と俺は、慌てて大地から視線を逸らした。そんな時、先程の役割を終えた椎名が影山に近付いていくのが見えた。
「影山」
「どうした?」
「お風呂上がった後、ちょっといい……?」
「……分かった、なるべく早く済ませる」
「うん。じゃあ21時頃に自販機の所で待ってるから」
「分かった」
影山とほんの少しの会話を交わした後、椎名はその場を離れて厨房へと戻ってしまった。
「もしやあれは、逢い引き……?」
「もしやあれは、不純異性交遊……?」
「いや、アイツらに限ってそれは無いだろ」
▼
約束の21時、風呂から上がって自販機の場所に向かうと、ベンチに座って俺を待つ夏芽がそこには居た。
「ごめんね、急に呼び出して」
「いや、いい」
隣に静かに腰を下ろすと、突然夏芽から手渡されたのはキンキンに冷えたサイダーだった。
「今日はありがとう、助けてくれて」
「……別に。何か、悪いな」
「ううん、さっきちゃんとお礼言えてなかったから。助けてくれたのが影山で良かった。私、嬉しかった」
何故西谷さんと田中さんがあれほどまでに夏芽に迫っていたのか。夏芽は先程の事の経緯を細かく話してくれた。多分二人の事を怒らないでほしいと言いたいのだろう。
「コワイ話が苦手だって弱みを握られるのがどうしても嫌で黙ってたからあんな事になって――――って、あ、」
何かを思い出したのか、急に黙り込んでしまった夏芽の顔色は次第に悪くなっていった。
「どうした?体調悪いのか?」
「あ、いや、あの……今日、潔子先輩がしてきた怖い話……その内容、今思い出して……それで………」
「怖くなって眠れなさそうなのか……?」
「うっ……」
気まずそうに小さく頷いては俯く夏芽。
3年間一緒に居たのに知らなかった。まさかこいつがこんなに怖がりだったなんて。
「……じゃあもう少しだけ、此処で二人で話してるか?」
「!……うん、話しする」
それから俺達は色々な話をした。俺が白鳥沢に進学出来なかった理由とか、夏芽は最近、スマホが上手く使いこなせなくて悩んでいるとか、そんな他愛のない話をした。
「そういえばね、部活引退した後に偶然本屋で及川さんと会ったんだよ。あの時全力で逃げたんだけど捕まっちゃってさー、」
「げっ……!及川さんに会ったのかよ……」
お互いの知る事の出来なかった部分を知ろうと、一緒に居なかった空白の時間を埋めようと、沢山話をした。俺は口下手だし、人とコミュニケーションを取る事なんて苦手だが、夏芽と居る時だけはすんなり言葉を発する事が出来る。この時間は俺にとっては貴重で、充実したものだった。
あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか、時間を忘れる程、それくらい俺は夢中になっていた。
「夏芽……?寝たのか?」
突如肩に感じた重み。隣を見れば夏芽は規則的な寝息を立てていて、声を掛けても反応は無かった。徐に夏芽の髪に触れてみる。指を通せば、コイツの髪はサラサラで柔らかかった。
「……俺は、お前ともう一度やり直したい。ずっとそう思ってる」
弱い部分を知るのも、無防備な姿を見せるのも、触れるのも、こうやって頼ってくれるのも、全部全部俺だけならいいのにと、あの日再会した時からそんな想いばかりが膨らんでいく。いつか膨張しすぎて風船のように割れてしまった時、俺は一体どうなってしまうのだろうか。
「夏芽、お前は俺をどう思ってる?」
深い眠りについた夏芽からその答えが返ってくる事は無かった。
(2019.05.01)
ALICE+