Episode.01


 がやめく講義室。
 偶然だった。医学部の必修講義。比較的大きな講義室で、端の端に座っていた家入の斜め後ろから女の小さなつぶやきを家入は拾った。

「うわ。ここめっちゃいる」

 わかる、と家入は密かに同調する。ジメジメと日の当たらない研究室というのもあるだろうが、明らかに数がおかしい。人体実験でもしてるのかと疑わしいほどだった。

「#名前#ちゃん、たまにそういうこと言うよね。また例のジュレイってやつ?」
「そうそう」
「どこにいるの?」
「天井にめっちゃぶらさがってる」

 なんかやばい実験とかしてるのかな、とボヤいた彼女。その声色がわりと真剣味を帯びているのが面白い。好奇心に負けた家入は、不自然にならない程度に彼女の声がした斜め後ろを振り返ってみる。
 そこには黒髪の、平凡ながらに見るからに優しそうな雰囲気を与える顔立ちの少女が呪霊が溜まっている天井の隅を見つめていた。
 彼女の横にいた茶髪の少女は、おそらく見えていない人間なんだろう。隣の少女を気にすることなく既に机のルーズリーフと向き合っている。とはいえ、真に受けずとも馬鹿にはしないあたり彼女も人が良さそうだと家入は勝手に予想した。

(#名前#ちゃん、ね)

 家入はそっと頭の片隅に少女の名前を記憶した。