荼毘とトガと多重転生

五条悟の担当クラス……歌姫担当でもいい。

荼毘と信時と渡我たち総じて優秀なクラスではあるらしいが、なんでも禪院分家長男、加茂家の分家長女、五条家分家の信時……御三家勢揃いのクラス。信時は比較的大人しそうだったが、加茂の方の子は少し扱いづらそうな印象がある。禪院の生徒にかんしてはまだよく知らない。炎を扱う術式と聞いたが、果たして。

五条はそう教室の扉を勢いよく引いた。

「はっじめましてー!今日から担任のグッドルッキングガイ五条悟でーす!」

しーん……と静まり返る教室に五条は大袈裟に怒鳴った。

「ちょっと!待ちに待った新学期だよ!?もっとテンションあげてこ!?」

黒髪の男子生徒は耳をかきながらそっぽを向き、もう片方の黒髪の女子生徒に限っては机につっぷしたまま眠っている始末。ウケる、入学初日からなかなか舐められてんね。ていうかあれ?加茂の子はどーしたの。

「はァー、先生寂しくて泣いちゃいそう」
「ハッ、五条家当主がよく言うぜ」
「お?僕のこと知ってる?」
「逆に聞くぜ、知らないヤツがいるのか?」

愉快そうに、それでいてやや警戒心を滲ませた声色で男子生徒がこちらを挑戦的に睨みつける。うーん、血の気が多くて大いに結構。

「それもそうか、っと」

五条は日誌で女の頭を軽くはたいた。むく、と女子生徒がぼさぼさの前髪のまま顔だけを腕から起こす。

「……ん」
「おはよう。入学初日から居眠りとはなかなか度胸あんねー!さてはドキドキして眠れなかった?」

ぱちり、と彼女がこちらを見上げたかと思えば、穏やかに笑う。

「おはようございます。ただの体質です」
「へぇ?聞いてた通りだ、眠り姫ちゃん」
「オイオイ知ってて聞いたのかよ、ろくでもねぇな」

トーヤの横やりに知らぬふりをしながら彼女を見つめる。彼女もまた青い瞳を持っている。だがそれはリクガンではない。彼女は横を見るなり、きょとんとした。

「あれ、トガちゃんは?」
「さァな、学校探検してくるってよ」
「子供か」
「なになに〜、もう仲良くなってんの?」
「あァ、前世からの仲だぜ」
「あっはは!……デタラメ言うなよハンザイシャ」
 ナマエのハイライトが消えた。
「おっと、ヒーローサマの前でご無礼を」
「うざ」

何だこの旧友みたいな空気感。疎外感半端ないんだけど。もっとモジモジしろよ。

「ねー!僕を仲間はずれにしないで!?それ何の話?君犯罪者なの?」
「前世ではな」
「いやいや今世でも普通に予備軍ですよ。この男、中学でやらかして留年してるんです」
「マジで?」
「マジです」

まあそれも知ってたけど。

「オイオイ、俺を虐めて楽しいか?ナマエチャン」
「ちゃん呼びするな馴れ馴れしい」

荼毘ってもしかしてトガちゃんにもそうなの?と笑うナマエ。

「いんや?お前だけ」
「あっはは、腹立つ」
「なになに、トーヤはナマエにご執心?入学初日から女の子口説くなんてやるねぇ。あとなんでダビ?お前トーヤでしょ。あだ名にしてはちょっと厨仁臭くない?」
 ダビって、まさか荼毘に付すの荼毘≠カゃないだろうな。
「通り名らしいです」
「え、ほんとに犯罪者予備軍?」
「ほんとほんと」
「心外だぜ、俺は今世は清く正しく生きるって決めたんだ」
「へぇ、そりゃ壮大な夢なっこって」
「あぁ、禪院の名に誓って叶えてみせるさ」
「それつまり嘘ってこと?」

ナチュラルに禪院家を罵倒し頬杖をつくナマエと、微塵も気にせずヘラヘラとニヒルな笑みを浮かべるトーヤ。大量についた耳のピアスが殊更その軽薄さを際立てている。僕もそこそこヤンチャしてた方だけど、さすがにピアスは開けたことないなぁ。あ、でも直哉のヤツはつけてたか。もしかしてアレか、禪院ってのは不良が多いの?やーねー。

「五条先生、そろそろ帰っていい?」
「いやまだ始まったばっかだわ。あと敬語」
「どうせ自己紹介するだけだろかったりィ」

もう顔見知りだから要らねぇよ。トーヤはそう目を細めた。
うーん、予想以上に扱いづらそうな学年だな、と五条は内心予想した。まだナマエはいい子そうで助かる。




どう思う
なにが
五条悟に決まってるだろ?

シロ
あァそうか、俺も同感だ
でも尚更分からなくなった


クツクツ笑う荼毘。私はさらに声を潜めた。

夏油傑にクローンがいる可能性
理由は

おいおいヒーロー、しっかりしろよ
うるさいな犯罪者

あと俺は荼毘じゃない、トーヤだ
それはマジでごめん、まだ慣れないや







この学年、想像以上に仲良しらしい。トガは相変わらずナマエにベタベタしているし、トーヤも表情は読みにくく口数こそ少ないが、見た目に反してこれといった問題行動を起こすわけでもない。女子二人に挟まれながら仲良く行動しているのを見ると正直羨ま、ゴホン、青春を謳歌しているなと思う時すらある。
そう、この僕が誰に一番手を焼いているかというとつまるところ残りの一人。生粋の問題児はまさかの信時ナマエだったのである。いやはや、先生もびっくり。ほんと見た目で人を判断しちゃダメだよね。
なにが面倒って、いかんせんこの子、僕のことをマジで舐めているのだ。確かにナマエは強いし、この僕にも術式ナシの1体1であれば勝てはせずとも負けもしないだろう。だがしかしそれはそれ、これはこれである。これはシゴかなければ。


ナマエ
はい
いい加減、その考えなしに突っ込む癖やめな

ナマエは悪びれもせず、むしろ心底不思議そうに首を傾げる。

別に治るからよくないですか?その方が危険性、情報収集の点において最も合理的です。
よくない、癖になるよ
もうなってます。安心してください
開き直んなよ馬鹿
馬鹿じゃないです、私座学は荼毘とトガちゃんより頭いいもん
友達をナチュラルに売るなよ

友達じゃないです、宿敵ですと内心言い返す信時。

あと昇級試験ね。ナマエの呪力センスと術式なら余裕で一級狙えるよ。もっと欲張んないと。
別に二級でもお金いっぱい貰えますし
なんかあった時、級が上ってのは説得力にもなる。舐められるよ。
別に舐められてもいいです


私今世ではゆるく生きるって決めてるんで
ゆるく〜?呪術師にゆるさを求められてもぶっちゃけ困るよ。なんせ万年人手不足なもんでね。否が応でも駆り出されるってワケ。
でもヒーローにはなりたくない
……ヒーローじゃない。呪術師だよ
私にはどちらも同じに見える、結局人のために生きてる人が一番最初に死ぬんだ。私はもう置いていかれたくないし、誰も殺したくない。
それは無理だよナマエ

力があるヤツは"それ"から逃れられない、一生ね

ナマエの顔が分かりやすく歪んだ。そうか、この子は恵みたいなタイプか。性格に対して強力な術式が追いついていない、宝の持ち腐れタイプ。とはいえ恵はあくまでも一般家庭出身。呪術師家系出身の人間でこれはかなり珍しい、というか初めてじゃないか?
こんなことなら親戚にもうちょっと目を向けておくべきだったな。なにかしらトラウマがある可能性が高い。


私に力なんてない
あるよ、術式ないヤツらに喧嘩売ってんの?それ術式ないヤツの前でも言える?言えないでしょ。
そういうわけじゃないですけど
最強の僕から見てもナマエは確実に持ってる側≠セよ
……たとえ持ってても、使う人間によってその価値なんて一瞬で変わるんだ。







トーヤ、ちょっといい?
なんだ
トーヤはさ、ナマエのことどう思う

トーヤは五条の質問に愉快そうに笑った。

どうって?
ぶっちゃけさ、死にたがりだと思う?
思うぜ、むしろそれ以外ありえない
なんであーなったか知ってる?
それはお前の方が知ってるだろ?五条悟

知らないから聞いてるんだよ、あの子がウチに来た時は僕とっくに家出てたからね。あんまり関わりないんだ。あとなんでたまにフルネーム呼び?
そりゃトーゼンだな
ん?どーいうこと
お前の言うとおり、信時ナマエはいつまでも過去という幻想に呪われている。……ここはもう"違う"ってのに。結局善良なヤツってのはカワイソウだよなァ、人の死をいつまでも背負い続けるんだ。誰に頼まれたわけでもないのに、な。



あいつの術式は規格外だ。それこそ、世界の理を壊すことができる
へぇ、お前は知ってるんだ
もちろん知ってる。なんて言ったってナカヨシだからな、俺達は

俺達、ね。

ヒミコも知ってる?
アイツの方がよっぽど知ってるだろうよ。好意をもってるヤツには術式ごと変身できるんだ。"全部"知っててもおかしくない。
やっぱり術式か






僕には言えない?
言っても無駄だよ
なんでよ
だって五条先生デリカシーないし、意外と厳しいし
はは、と笑う五条
たしかにナマエはしんどいこと嫌いだもんね、ヒミコの方がよっぽどストイックだよ
あの子のはただの体質でしょ

あの子はまた違うでしょ、あれは先天的なイカれ体質だ。この人に言うまでもないけど。


ナマエはどうなりたい?
一生楽して生きたいです
ほんと低燃費だねぇ
疲れることは嫌いです
ならなんで呪術師続けるの?
戦うことは苦じゃないので。どうせ働くならより適正のある方をって、七海さんが
なるほど、七海か

繊細で、脆くて、イカれてるわりにどこかまともであることを夢見ている。呪術師になるには少し繊細すぎたとは言え、社会人として生きるには少し普通になれない。

七海を人間の手本にするのはいいだろう。だが呪術師の手本にするのはいささかオススメしない。なぜならアイツは正しくイカれていながら、どこか繊細だからだ。
人を殺しても眉ひとつ動かさないし、呪力も一定。でも仲間が怪我したときは面白いくらいに呪力がブレる。ほんと、つくづくお人好しってカワイソウだよね。

お前センスあるんだからさ、無理にとは言わないけど、呪術師続けるつもりならやっぱり上目指してよ。いっそ僕のために。
なんでそこまで
このままだと、オマエがいつか呪詛師に堕ちそうで怖いんだよ

するとナマエがキョトンとした。

呪詛師に?私が?
うん
トガちゃんや荼毘じゃなくて?
うん
なんで

目を丸くさせるナマエに、僕は笑ってから答えてやる。

そりゃ、お前はイカれてないからね
イカれてない?
うん
……ぷっ、
え、なんでそこで笑うの

くく、と笑うナマエにさすがの僕も戸惑う。

あぁ、なるほど、そういうことか
まってまって、今ので何に納得したの
呪術師って本当にイカれてないと駄目なんだ
そうだよ、今更?僕散々言ってたよね?
はい、でもやっと今ちゃんとその意味が理解できました。他人の為に人を殺せるかどうかとか、そういうことだけかと思ってたんですけど、全然違いましたね。呪術師ってほんとにヒーローじゃないんだ。

ナマエ、ヒーローと呪術師を同じに見てたの
はい
マジか
だって自己犠牲で人を救うじゃないですか
自己犠牲だなんて大層なものじゃない。非術師を嫌ってるヤツらが、せめて人の枠からはみ出ないように、非術師のために呪霊を払って体裁保って社会不適合者やってるってだけだよ。
あはは。イカれてるな。トガちゃんみたい。

つまり呪術師は全員犯罪者予備軍ってこと?
うーん、まぁそのレベルでイカれてないと無理だろうね。特に二級以上は。あとは才能。
はー、マジかー

先生、もう大丈夫
うん、どうやらスッキリしたみたいだね
はい
はー、つくづく思うけど、君ほんと箱入りだね
よく言われます、すみません
まさか呪術師を崇高な役職だと思っていたなんて。道理でナマエの口からヒーローって単語が多く飛び出してくるわけだ。まったく。






荼毘とトガとアオハルする。


ナマエちゃん、今日もカアイイね!
ありがとう、トガちゃんも可愛いよ
荼毘くんは今日もかわいくありません
失礼だな。俺はいつでもカワイーだろ
ほんと丸くなったな……"轟燈矢"
お前はつくづくこっちに染まっちまったなブルーアワー


夜明けはきたか?
うん、お陰様で
感謝しろよヒーローサマ
……荼毘のヴィランの時の記憶が薄くてよかったとつくづく思うよ




一人しかいないんですか?
うん、そうだよ

顔を顰める

ナマエって意外と顔に出るよね
よく言われます

オールマイトと同じ。個によって支えられている世界はいずれ綻びが生まれる。それまでなんもしなかったあんたのせいと言えばそうなのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。少なくとも私は五条先生の傘下に入るつもりはない。なぜならそれはアンタに守られるという前提だから。私は私が救いたいと思ったものだけ、自分の力で救う。
なら、君のことは誰が守ってくれるの?
……貴方がそれを言うんですか。
だって僕は最強だもん、誰に守られなくても生きていける。でも君は違うでしょ?たしかに負けることはないだろうね、でも簡単に勝つこともできない。
私はアンタのそういうところがムカつくよ。それで見えたものだけで私を解った気にならないでください。破壊以外はなにもできないくせに。
ふふ、シンラツだなぁ。僕のこと嫌い?
別に……それなりに好きですよ。
アハ、僕も大好き。
そうですか、光栄です。
あっれ、耳赤いよ?ウケる、もしかして照れてる?
うざいなあ







タイプ?

んー、夏油傑
ごふっ
ウワ、きたな

なに?どうしたんですか
どうしたはこっちのセリフだよ、なんでそこでよりによって傑なの
え、だってあの人まともそうだし
まともな奴は教祖なんかしねーよ
そうですかね?まともな奴ほど呪術師続けないでしょう。特級だったのにわざわざ辞めたってことは呪術師や呪術界隈になにかしら負の感情を抱いていた可能性が高い。なら夏油傑はまともだ。ただ少し、一般人になるには力がありすぎた。できることが多すぎたんだ。

あいつ、こんないたいけな少女まで虜にするなんて、恐ろしいやつ

悪いことは言わない、七海にしときな。それか僕。あいつだけはずぇっーたいやめときな
え?別に私はこっち側なんで、寝返ったりはしませんよ。ただ恋人にするならまともな人間がいいでしょ?
七海がいるから、間違うなよ







アハハ、たのしぃね!!


領域展開 時間旅行





はじめ五条のことが嫌いなトガ。

「ヒミコってさ、僕のこと嫌い?」
「嫌いです」
「なんで?」
「声が私の大嫌いな人と似てるからです」

性格じゃなくて声なんだ、とやや意外そうに首を傾げるナマエの横で荼毘は薄く笑った。

「お前は知らねぇか」
「なにを」
「鷹の目の男だよ、分かるだろ?」
「鷹?……ホークス……あぁ、なるほどね」

ホークスはたしか、ヴィランのえーと、一味だったたしかトゥワイスという男を殺していたはずだ。ホークスの声と五条悟の声は、どこか重なるものがある。なるほど、声。

「なになに、勝手に納得しないでよ」
「残念ですけど、五条先生にできることはなにもないですね」
「えー、その嫌いな人が誰かくらい教えてくれたってよくない?僕の知ってる人?」
「まさか。もう二度と会うことはないでしょうね。……同じ地獄に堕ちてさえなければ」

「ヘェ、いたらどうするんだよ」
「別にどうも。私は会いたいけどね」
「次会った時は殺します」
「うお、殺気すごいね、トガちゃん」

「トーヤ」
「あ?」
「ホークスって誰?本名?通り名?球団?」
「強いて言うなら、営業名だな」







交流会。なにも黄金世代は五条たちだけではなかった。

「なぁ、どんなヤツらだと思う」
「さぁ?全員御三家の分家筋の家庭だって言うし、どれも変わんねぇだろ」
「五条家の子もいるんだろう?」
「あー、そういえばいたな。そこそこいい術式もってる女。なんかすげー地味な顔だった気がするわ」
「へぇ、女の子」
「加茂の方はすげー変わりモンって話」
「というと?」
「なんでも、」

「ワタシの話ですか?」

「「!?」」

気配が、なかった。

「ふふふ、噂されるなんて嬉しいです」

金髪の女は頬を染めて喜んだ。

「貴方が五条悟くん?カッコイイね!オトモダチになりませんか?」
「はぁ?誰だよオマエ」
「私はトガヒミコ!ねぇねぇ、私強い人とオトモダチになりたいのです!チュウチュウさせてください!」

「これはうーん。これまた個性的な、」
「気持ちわりーな」

変わってる。顔色が変わる。

「私、貴方キライ」

飛んでくるナイフ、それを避ければ素早い反射神経で懐に潜り込まれた。

(早い!)

ナイフが頬を掠めた瞬間。

「こら。ヒミコちゃん、駄目だよ」

鈴のような声。ピタリ、とトガの勢いが止まる。


「ナマエちゃん、なんでとめるの?」
「喧嘩は先に手を出した方が負けだからね、どうせやるなら合法の場でやろうよ。その方がいっぱい吸っても怒られないから、きっとヒミコちゃんも楽しいよ」
「ふーん、ナマエちゃんがそういうならそうします」
「えらいね、あとで私のあげる」
「きゃー!いいの?」
「いいよ、とりあえず挨拶と謝罪をしよう」

「こちらは渡我被身子ちゃん、ちょっと個性的だけど悪気はないから、許してくれると嬉しいです」
「オトモダチになりましょう!」
「私はミョウジナマエです。五条様、と呼んだ方がいいですか?」
「いや、そういうのウザイからいらない」
「そうですか。じゃあ五条君で」

「そちらは」
「俺は知ってると思うけど五条悟、こっちは夏油傑」
「よろしくね」
「はい、よろしくお願いします。あ、頬の手当てをさせて頂いても?」
「いや、あとから硝子に直してもらうから、今は遠慮しとくよ」
「そうですか。じゃあ、また後ほど」


ぺこり、お辞儀をした女に抱きつく金髪の女。


「な、地味だったろ?七海みてぇな」
「まぁ、うん、そうだね。隣の子のインパクトが強すぎて」
「加茂の女はやべーね、あれは頭イカれてる。まぁでも、さっきの身のこなしからして呪術師としてはそれなりに優秀な方ではあるだろうけど」

「残りの禪院は、男だったっけ」
「おう、ま、イチバン雑魚だけどな」
「へぇ?」
「炎系の術式、のわりになんでも肌が弱いらしい」
「それはまた難儀だね」



「はぁ、肩こった」
「ナマエちゃん、別人みたいでした!」
「仮にも五条サマの前だからね、あとで失礼があったとかなんとか言われても困るし」
「荼毘くんはどこ?」
「さぁ、どっかその辺でサボってるんじゃないかな」







「えーっ、私が五条サマ?嫌だな、痛そう」
「五条サマがまだ取得してない瞬間移動でも見せてやればいい、傑作だぞ」
「私呪霊じゃ駄目?」
「呪霊はオレ」
「荼毘は意外と弱っちぃよね、ほんと」
「一撃必殺型って言ってくれよ」

「あの感じだと夏油はトガちゃんでいけそうだね、私の血を使わなくても勝てそう」
「油断ダメです、私呪霊ニガテなので」
「ヤバかったら治すよ」
「つくづくお前は便利だよな」
「有能って言って欲しいかな」

「トガちゃんは夏油、荼毘は呪霊、私は五条で」


スタート

五条


「よお、お前さ、今までよく俺んちに見つかんなかったな」

首を傾げる。

「お前、一歩間違ってたら五条行きだよ」
「知ってます、知ってて隠してたってことくらい、その眼があれば分かるんじゃないですか?」
「生憎、俺の術式はあくまでその術式の可能性しか見えねーの。本人がどこまでできるかまではみえない。……オマエ、どこで習った?」
「独学、強いて言うなら、睡眠学習です」


瞬間移動


「チッ、ンなこともできんのか」
「簡易領域、時間停止」



「すみません、ちょっと眠っててください」




「もしもし、五条は潰れたよ」
「ハ?はえーな。さっすがヒーローサマ」
「トガちゃん、首尾はどう?」
「苦戦中です、助けてナマエちゃん」
「了解」




「おっと」
「なに?悟はどうした」
「さあ?」

先程とは打って代わりタメ語の黒髪の少女、信時はふわりと笑ったのち、至近距離に迫る。カチャ、と目の前にナイフが振りかざされた。

「っと、やるね!」
「チッ、呪霊が邪魔だな……荼毘!」


「ハイハイ」



「3対1は少し、意地悪だな」
「荼毘、いいよ、好きに燃やして」
「あぁ、好きにやるさ」

トガちゃんを回収、のち離脱。



「夏油の血は?」
「もらいました」
「よかった。ごめんね、五条悟の方はこれだけしかないよ」
「十分です」









「クソッ、なんだあの女」



「反転術式じゃなかったんだよね」
「あぁ、あくまで術式の応用……でもあんなの聞いてねぇ。あんなのいたらとっくに俺ん家で重宝されてんだろ」

なんで今まで隠してやがった。

「相当、君の家が嫌いだったのかもね」
「いや、それはねーよ。あいつの分家の方がよっぽど腐ってる。唯一可能性があるなら、あの男だ」
「トーヤ、だっけ」
「昔、あいつらが縁側で喋ってたところを見たのを思い出した。たぶん、なんかある」


「付き合ってるとか」
「……そんな一筋縄じゃねー気もするけど、」




「オマエ、なに?」
「なに、というと」
「その喋り方うぜぇからいいよ、別に告げ口とかしょーもねぇことしねーし」
「そっか、ならお言葉に甘えて」


「五条様は何が聞きたいの?」
「それだよ、その術式。拡張術式まで使えてんのになんで五条家に来なかった。あとそれで二級とか舐めてんの?どう考えても一級レベルだろそれ」

眉を寄せる信時。

「別に見せろって言われたことなかったし」
「は?」
「大体の傷は治るけどそれに気づくような人間は五条家にいなかったし、御三家にはいい印象ないし、階級が低い方が呪霊は弱いから楽だからってだけ」
「……それだけ?」
「え、うん」
「その間に非術師が救えるかもとか考えねぇの?」
「……そんなこと考えたことない。呪術師はヒーローじゃないし、人なんてほっといてもいつか勝手に死ぬでしょ」

何言ってんだこいつ、という顔で五条悟を見つめるその黒い瞳に、五条のこめかみが苛立つ。あれ、もしかしてコイツ思ったより人でなし?今のセリフ傑に聞かせたら卒倒しそー。

「オマエ実は人でなしだろ」
「呪術師はみんな人でなしでは」
「なんでわざわざ弱いフリすんのか意味分かんねぇ」
「私から言わせてみれば、なぜわざわざ強くありたいと思うのか理解不能だなぁ」

「お前のそれ、反転術式?」
「そう見えたの?」
「いーや」
「なら違うんじゃない?」
「……なぁ」
「なに」
「メアド交換しね?」
「え、なんで?」
「交流会だし交流しねーと意味ねーじゃん」

「……まぁ、いいけど」

荼毘の教えとこうかな。

「あ、でも私今携帯持ってないから。手、出して」
「あ?」

ペンを取り出して荼毘のメアド教える。


「はい、これでいい?」
「おう」
「荼毘のもいる?」
「……いや、アイツ禪院だし、やめとくわ」
「そこまで悪いやつじゃないけどね、ヤバいやつではあるけど」
「好きなの?」
「それなりに好きだけど?」
「ふぅん」
「言いたいことあるなら遠慮なく言って貰っていいんだけど」
「別に、メアドサンキュ」






五条悟に荼毘のメアド教えたけどいい?
あ?いいけど、なんでだ
メアド教えてって言われたからさ
へぇ?ナンパか?
どうだろう、送られてきたら中身見せてね。盛大に笑って今度の揺するネタにするから
いいぜ

おい、きたぞ




「ブッハハハ!それでずっとやり取りしてたのは轟だったのか!?」
「ナマエちゃん最高!」
「笑ってんじゃねー!」


あの女、いつか殺す。






大人


「お、同期が呪詛師の五条悟じゃねぇか」
「あ゙?」


「さすがにデリカシーがなさすぎると思います荼毘くん」
「賛成、殺されても治さないからね」


「弱いのに大口叩くとこ、つくづく小物感満載だよね荼毘って」
「うるせーな、あと俺はトーヤだ」








「五条悟」
「うん?あ!ナマエだー!どしたの」
「私を一級に推薦したのは、お前か」
「あは、よくわかったねー」
「そう、正直なのはいいと思うよ。今日から夜道を通るときは背後に注意しておいてね」



「ナマエさ、東京こない?」
「やだ」
「えー、おねがい」
「私来年から独立するからどの道無理だよ」
「えっ、マジで」
「まじまじ」
「なんで?」
「え?誰かさんに一級に推薦されたから」
「まじか」

「冥冥さんみたいになるの?やだなー」
「今の言葉、冥冥さんに伝えておくね」
「いやいや、冗談だよ、ジョークジョーク」

「海外で占い師でもはじめるよ」
「それは違法だろ、規定に触れんなよ」
「私がそんなヘマすると思う?」
「たまにやらかすからなーナマエは」
「荼毘は禪院家でぐうたらしてるし、私もそろそろぐうたらしよっかなってね」

それつまり隠居ってこと?

「お金は」
「余裕だけど」
「ふーん、貯金?」
「うん」
「トガヒミコとはまだ連絡つかないの?」
「うん。ま、死んではないでしょ、多分」
「寂しくない?」
「別に」
「ドライだねー」
「そう?五条君が寂しがり屋なだけじゃないかな」

彼女は笑う。心底興味ないみたいな顔で、いや、本当に興味ないんだろうなぁ、この子は。

「ばいばい、五条君」
「またね、ナマエ」

会えなくなるなら、探せばいい。でも本当に永遠に会えなくなるのなら、それは僕の中で永遠の後悔になりそうだと思った。


「ねぇ、連絡先交換してよ、本物のやつ」
「もう知ってるでしょ」
「プライベートのやつ」
「…………えー、やだ」
「うわ!ガチの顔じゃん傷付いたー」
「うん、ごめんね、嫌」

「じゃあ勝手に会いに行くからね」
「来てくれるんだ」
「うん」
「そっか、なら楽しみにしとく」
「忘れないでね」
「さすがに忘れないよ、リクガンを」
「五条悟を忘れんなって言ってんの」
「はいはい、しってるよ、君って意外と寂しんぼだよね」




「日本は終わりだ、ばいばい」





轟乱入


「信時……まさか信時埜杏か?」
「え、知ってる?」
「知ってるもなにもソイツは俺の、」

「オイオイオイ、何でお前がここにいる?」

「……燈矢にぃ」
「ハハ、なるほどな、お前がそうか」



「荼毘?なにして、」
「……信時?」
「……焦凍くん」

くん、下の名前、それが意味する関係性。

「埜杏!」
「きゃ、」

「嘘でしょ、感動の再会?」
「随分とドラマチックね」
「待て待て、あの人たち止めねーと」

「生きてたのか、よかった、よかった」
「待って、焦凍くん、荼毘の殺気が、んむ」

「あら」
「キャ」
「……五条先生が見たら卒倒しそうだな」




「は?恋人?」
「生き別れの恋人です」

五条先生が少しの間ポカンとした。

「焦凍くん、その」
「待って待って聞きたくない、え、なにそれ、ナマエの口から男の下の名前ってフツーに無理なんだけど」


「焦凍くん、離れて、ここ公共」
「悪ぃ」
「思ってないでしょ」
「ナマエが可愛すぎて我慢できなかった」
「はぁ、そういうのはあとで」


「五条先生どんまい、あれは邪魔できんわ」
「」