それは、身籠った妻が妊娠期間中、七日置きに大篝火を見るという特殊なものだ。
煉獄家の人間の髪と瞳が燃え盛る炎のような色になるのは、この風習あってのものである。
ただし、それは男児に限り。
この物語は、煉獄家で唯一炎を纏わぬ長女、名前が織りなす煉獄家の日常風景だ。
煉獄邸の長い廊下を一人の少女がぱたぱたと慌ただしく走る。
その長い髪は夜の帳を下ろしたかのごとく黒く艶やかで、上等な花柄の着物を纏った彼女のかんばせは、煉獄家を古くから知る者ならば間違いなくこう言うだろう。「亡き奥方にそっくりだ」と。
煉獄名前。花も恥じらう十五歳。
鬼狩りという特殊な職を代々継ぐこの家で現当主の槇寿郎と瑠火にの間に生まれた第二子であり、三人兄弟唯一の女子だ。
亡き母、瑠火の忘れ形見の名に相応しく、母によく似た風貌の美人であるものの、年齢もあってかその顔立ちは母のそれより幾分もあどけない。
瑠火を淑やかに咲き綻ぶ赤椿だと評するならば、名前は乙女椿とでも言うべきか。美人、というよりは愛らしい、という言葉の方が似合う少女であった。
さて、そんな名前であるが、前述の通り二人の兄弟がいる。
兄の杏寿郎と、弟の千寿郎だ。
兄は剣術、弟は学問にと極めて優秀な兄弟で、器量良しの名前も加えて煉獄家の子息子女といえば近所で評判だった。
母親の死をきっかけに父親が塞ぎ込んでしまい、三人で寄り添って生きてきただけに兄弟の絆も強い。
名前自身も兄と弟を心底大事に思っているし、同時に誇らしかった。こんなにも慕える兄と弟を持てて幸せだと、一点の曇りもなくはっきりとそう言い切ることができる。
ただし、不満が一つもないかと聞かれれば、それはまた別の話だと答えるわけであって。
「兄上!お帰りなさいませ!」
広い邸宅の廊下を小走りで抜け、玄関で一足先に千寿郎と顔を合わせていた杏寿郎に明るい笑顔で出迎えの言葉をかける。
すると、「ああ、今帰った!」と杏寿郎も至極嬉しげに笑い、名前の華奢な体をぎゅっと抱きしめた。
腕力の強い杏寿郎でも流石に妹を潰さない程度のそれは心得ており、本来の力をほとんど使っていないながらも易々と離すつもりもない、絶妙な力加減だ。
千寿郎にも先程同じようにしており、最早兄からの抱擁は日課である。
やがて、漸く解放された名前は、おもむろに兄を見上げた。
これを言うつもりだったのだと、その言葉をはっきりと紡ぐ。
「兄上、今日こそはお手伝いお願いしますね」
仕事帰りな兄に向かって何とも人使いが荒い――と第三者が見ていたら苦言を呈されそうなものだが、今日は一応予定では非番と聞いているが故に今日を逃す訳にはいかないと、名前は考えていた。
ちなみに主語がないのは、この言葉を今日に至るまで何回、否、何十回も伝えてきたからだ。杏寿郎も千寿郎も、聞かずとも”それ”が何を指しているのか分かっている。
しかし、可愛い妹からの切実な願いに、杏寿郎はにこにことするばかりであった。
そして、これまた絶妙な頃合いに、「兄上。僕と姉上で食事の用意をしますから、兄上は先に湯浴みをしてきてください」と千寿郎が声をかけ、それに迷わず同意した杏寿郎は瞬く間に湯殿へと向かってしまった。
そして、千寿郎が今度は名前に愛らしい笑顔を向け、「姉上、行きましょう」と腕を引いて急かすので、結局杏寿郎は自分の頼みを今日こそ理解してくれたのか考える隙もなく、兄の食事を作るべく厨房へと歩みを進めた。
***
準備から始まり、食事、そして後片付けまでもを終えた名前は、先程とは打って変わって重い足取りで廊下をとぼとぼと歩いていた。
はあ、と、零すため息は本日もう何度目であるか、既に数えきれない。
やがて、とある部屋の前で歩みを止める。
この部屋こそ、今の名前にとって悩みの根源であった。
障子を開ける気が重い。しかし、そうも言っていられない。
最後にもう一度ため息を吐くと、名前はおずとその戸に手をかけた。
部屋に入って、真正面に大きくその存在を主張するのは、七段の雛壇に飾られた老若男女の人形たち、そして雪洞や重箱といった小さくとも精緻な装飾が施された小物――そう、紛うことなき、雛人形である。
埃が溜まらぬよう毎日千寿郎が綺麗に掃除をし、花が萎れれば新しいものをと、それはそれは手間暇かけてきっちり管理されていた。
毎年忙しい時間に暇を見つけ、自分のためにと雛人形を出してくれる兄と弟には、感謝している。しているのだが。
「はぁ…」
名前は再びため息を吐き、開けっ放しの障子の先――縁側の外に視線を向けた。
庭に植えられた桜の木は既に儚い美を散らせていて、紅色の蘂が地に落ちている。
――そう、つまりそういうことだ。
桜蘂降る。今はまさにそんな季節である。
もっと言うと現在は四月の半ばだ。
つまり、三月三日――桃の節句はとっくに過ぎている。
昨年くらいから急浮上した名前の悩み。それは。
雛人形を出すだけ出して、一向に片付けてもらえないことだった。
雛人形には古より様々な言い伝えがある。
その中で最も有名なものは、『ひな祭りを過ぎても雛人形を出したままでいると嫁に行き遅れる』というものだろう。
名前とて年頃の少女。結婚願望がないはずがなく、そんな物騒な言い伝えが自分の身に起きようとしている状況を見過ごせるはずがない。
しかも、昨年は結局、漸くひな祭り仕様のこの部屋が片付いたのは、梅雨が明けた後だった。
二年連続ともなるといよいよ神様に情けをかけてもらえなくなるのでは、と名前は気が気でならない。
今年十五歳となった名前は結婚できる年齢を満たし、来年にはいよいよ適齢期と言われる年齢を迎える。
それなのに。それなのに、だ。今現在、名前には浮いた話の一つもない。
美しい母は少女時代から数多の男性から声をかけられていたという話を、贔屓にしている呉服屋の老店主から以前聞かされただけに、名前は早くも焦っていた。兄の元弟子であり今や名前の文通友達である甘露寺蜜璃とはもっぱら恋の話題が多いため、というのも少なからず影響している。
そんな焦燥の中、目の前に四月半ばとなって尚飾られたままの雛人形があるこの状況は、精神衛生上に大変よろしくなかった。
兄も弟も忙しいのだから、それなら自分で片付けてしまおうと考えたことも、もちろんある。
だがしかし。雛人形を片付けるための箱が、名前には到底手の届かない押入れの上の奥という嫌がらせを疑いたくなる場所に上げられてしまっているのだから、兄の手を借りなければどうしようもない。
否、正確に言うとどうしようもないことはなく、台に乗るなりして箱を取ればいいだけの話であるのだが、以前それをしようとしたところを弟に見つかり、「危ないのでやめてください」と窘められてしまった挙句、「姉上が怪我でもされたら、僕…」とあどけない瞳を潤ませたものだから、姉として弟を泣かせるわけにもいかずに引き下がる他なかった。兄にも怪我をするようなことはするなと日頃から言いつけられている。しかし、その兄は一向に協力してくれる気配がないのだから結果、季節外れの雛人形を見上げて途方に暮れるしかないというわけだ。
そして、その立派な七段飾りの傍らに添えられた花瓶。
そこには二月ほど前の当初、桃の節句を祝うそれらしく桃の花が挿してあった。
しかし、そこから月日が経つ毎に当然桃の季節は終え、代わりに後を継いだのは桜の花。そしてその桜も散ってしまった現在、この一角を彩っているのは乙女椿である。
最早なんの催しなのかわかったものではない。
可愛い弟のすることに水を差したいわけでは断じてないものの、それならば一緒に片付けるなり兄に口添えするなりしてほしい…とは、なかなか口に出せることでもないが。
ちなみに昨年は、乙女椿の見頃が終えれば今度は紫陽花が飾られ、その後向日葵の季節に差し掛かったところで漸く兄が重い腰を上げ、片付けてほしい私の訴えに承諾してくれた。今年もそれでは困る。
もうなりふり構ってなどいられない。
食事を終えてすぐ、休むのかと思いきや千寿郎に稽古をつけるのだと張り切って庭へ出た兄と、そんな兄を心配そうにしつつどこか嬉しそうに続いた弟。完全に雛人形の件はなかったことにされている。
ということで、だ。
今日という今日はという気でいた名前は、もう誰の指図も受けずに自分だけで雛人形を片付けることにした。
――が。
「名前!」
「姉上!」
「きゃあっ!?」
押入れの前で台代わりにと木箱を裏返して乗り、あと一歩というところで届かないそこへ手を伸ばしつつ恐る恐る踵を上げた、刹那――突然兄と弟の声が重なって響き渡り、驚いた名前は足元の安定を失ってしまう。
あ、倒れる――。大きく傾く身体にひゅっと息を呑み、咄嗟に目を閉じた。
が、しかし。
いつまで経っても衝撃は訪れない。
恐る恐る目を開けると、秒速で移動してきたらしい杏寿郎が、名前を抱き留めていた。
「あ、兄上…」
「危ないだろう!」
ありがとうございます、と続けようとした名前の言葉を杏寿郎は遮って怒鳴りつけた。
鼓膜が揺れるほどの大声に名前は杏寿郎の腕の中でびくっと縮こまる。
千寿郎もこれは庇いきれないとばかりに黙って眉を下げている。
「怪我でもしたらどうするんだ。高いところの物を取る時は俺に言えと何度言ったら――」
「っい、言いましたよ何度も!兄上が手伝ってくれないんじゃないですか!!」
今のは鈍臭い自分が悪かったとはいえ、さすがにこれは聞き捨てならない。名前は兄を睨みつけながら、負けじと声を張り上げた。
そもそも、杏寿郎にとって名前はいくつになっても可愛い妹なのだろうものの、いい加減子ども扱いはやめてほしい。まあしかし、これは今すべき話ではないだろう。
それは飲み込みつつ、名前は今言いたいことだけを続けた。
「去年だって何かと理由をつけて先延ばし、最終的にお雛様を片付けたのいつだったか覚えていますか!?七月ですよ、七月!」
まさか逆切れされると思っていなかった杏寿郎は、見開いた目を更にまん丸くして唖然とする。千寿郎もあわあわと姉と兄の顔色を交互に窺っている。
しかし、一度爆発した名前の口は止まってくれなかった。
「お雛様を出しっぱなしにしているとお嫁に行けなくなるんです!知っていますでしょう!?兄上は私が行き遅れてもいいんですか!?」
「いいに決まっているだろう!!」
「そうでしょう―――え!?」
普段の淑やかさはどこへやら、早口で捲し立てる名前に、杏寿郎はこれまた大声で即答した。
行き遅れの娘がいるなど、家の恥だ。まさか肯定されると思っていなかった名前は思わずたじろぐ。そして、瞳の中の怒りがみるみるうちに困惑へと変わった。
しかし、杏寿郎は全く悪びれもない態度で、名前を見据える。
「この際だからはっきり言っておこう。名前、お前は嫁に行く必要はない!ずっと煉獄家でこの兄と共にあるといい!」
「何故そんな話になるのですか!?」
突然の理不尽な言いつけにぎょっとしながら、兄の腕を振りほどいて距離をとる。
兄弟仲が良いことは近所でも有名な煉獄家。
兄は妹と弟をこれでもかと大事にし、妹と弟も兄を心底慕っていた。
…が、明らかにこれはやりすぎだ。
つまるところ。
昨年も今年も、雛人形を出すだけ出して一向に片付けようとしないのは、可愛い妹を嫁にやりたくない兄の、神頼みにも近い嫌がらせであった。
「そもそも、お前は男を寄せ付けすぎだ!兄も常に傍にはいられんのだぞ。お前に来た縁談や恋文を一掃するのにもなかなか骨が折れ――」
「あ、兄上…それは姉上には……」
次々に事の真相を明かしていく杏寿郎に、千寿郎は青褪める。
これは流石にまずい、と兄の着物の袖を制するように軽く引く。
が、時既に遅し。
「………どういうことですか」
周辺温度が十度は下がっただろう中心で、名前がかつてなく低い声を漏らした。
そんな名前の般若のよう表情を目の当たりにした、してしまった千寿郎は、「ひっ…」と心底恐ろしげに息を呑む。
しかし、怯える弟に今回ばかりは怒気を緩めることをしないのは、先の口振りから千寿郎も全てを知っていたと判断したからだ。
名前はここ一年ほどの出来事を静かに思い出す。
雛人形は先述の通り夏まで片付けてもらえず、その他、何故か街で名前に声をかける男性がぐっと減った。友人として仲良くしてもらっていたはずの人たちも含めて、だ。
何故か顔を見ただけで逃げ出す殿方もいた。その時は急いでいるのだろうかなど、あまり気には留めていなかったのだが。
それが全て、この兄の仕業だったとするならば――。
「兄上なんて……大嫌いです!!」
持てる力の限りを振り絞って張り上げた大声は、思いの外屋敷中に響き渡った。
言われた側の杏寿郎は案外けろっとしている一方、千寿郎の方はこの世の終わりのような表情だった。
それらに構わず、大股でずかずかと部屋を出た名前。
最後に杏寿郎をひと睨みし、バタン!と乱暴に障子を閉めると、淑女らしからぬ大股で自室へと戻っていった。
「あ、兄上…どうしましょう姉上が…」
「大丈夫だ、千寿郎!名前はただの反抗期だ」
わたわたと慌てふためく千寿郎を安心させようと、腕を組んで仁王立ちしていた杏寿郎がその頭を撫でる。
反省するどころか、自身の将来を壊されそうになった怒りをただの反抗期扱いされたことなど、名前は知る由もない。
(信じられない…信じられない!兄上は私の将来をなんだと思って…!)
一方、名前は自室にて、座布団をバシバシと叩きながら絶賛八つ当たり中であった。
まさかずっと尊敬していた兄が自分の将来を邪魔するようなことをするなんて。軽く裏切られた気分だ。怒りが収まらない。
普段は名家の息女として相応しい振舞いを心掛けているものの、実際の中身は年相応の少女。特に、唯一甘えることができる人物である兄の前ではそれが如実だ。だからこそ、先の名前の怒りも兄の杏寿郎にとっては可愛い反抗程度としか捉えられていないのである。さすがに「大嫌い」と声を荒げたのは初であるが。なんとも世知辛い。
「姉上、大丈夫ですか…?」
苛々が収まらない中、障子の向こうから弱弱しい声がかかった。誰か聞くまでもなく、千寿郎である。
名前は千寿郎にも物申したいことはあったが、今まさに障子の先で極限まで眉を下げて泣きそうな顔をしているに違いない弟を思うとそんな強気な姿勢は瞬く間に萎んでしまった。
「ええ、大丈夫よ。ごめんね千寿郎、嫌な思いをさせてしまって」
極めて穏やかにと努めながら千寿郎に優しく応えてやる。
先程の怒りは落ち着いていることを確認した千寿郎は、「いえ!」と反射的に否定しつつもわかりやすくほっと息を吐いていた。
本当に可愛い弟である。名前も千寿郎にはとことん弱い。
意識せずとも自然に頬が綻んでいくのを感じつつ、外で遠慮している千寿郎に中に入るよう促そうとした、その時だった。
「あの!」と意を決したように千寿郎が声を上げたのは。
「姉上は…もうすぐ結婚してしまうのですか……?」
威勢の良い切り出しから随分と弱気になったその問い掛けに、名前は面食らう。
何故そんなことを聞くのかと尋ねようとした刹那、千寿郎が俯きながらもじもじと落ち着きなさげにしている様が障子の影に映し出されていることに気が付き、なるほど、と名前は眦を細めた。
弟も、姉の嫁入りが近いかもしれないとなると、寂しくてたまらないのだろう。
名前とて、千寿郎がいつか好い人を見つけて結婚してしまうことを考えると、嬉しい半面少しばかり複雑でもあった。
これまで兄弟三人で寄り添って生きてきたのだから、尚更――。
「好い人ができれば、いつかはそうなるでしょうけれど……今はそんな人いないもの。まだまだ千寿郎の傍にいるから大丈夫よ」
「姉上……」
柔らかに微笑みながら答えると、千寿郎が顔を上げる。その頬は上気し、瞳は取り戻した希望にきらきらと輝いていることだろう。
やはり、こんなに可愛い子を置いて結婚など今はまだできないな、と名前は考えを改めかけた。
「では、このまま好い人ができなければ、姉上はずっとこの家にいてくださるのですね!」
が、その期待に満ち溢れた嬉しげな声音に、名前は固まる。
そういう話ではない。そんな事態になったら困るのだ。この先、結婚した兄か弟がいる家にいつまでも未婚の自分が小姑となって住み着くなんて、そんなの冗談ではない。
しかし、今の今までひどく落ち込んでいた千寿郎にそれを否定することは―――できなかった。
「え、ええ……」
なんだか言ってはいけない肯定のような気はしつつも、引き攣った顔でそう発する。
障子の向こうで、ぱああっと華やぐ千寿郎の満面の笑みが見えた気がした。
「よかったです!!」
千寿郎は明るい声音でそう告げると、気が済んだのか足早にその場を去っていった。
天使のように純粋で可愛い我が弟がそんな計算するはずないと思っているのだが、なんだか言質を取られたような、物凄くすっきりしない心地だ。
まさか千寿郎がその足で、兄の元へ今のやり取りを報告しに行っているとは、夢にも思うまい。
結局は兄も弟も、名前に結婚してほしくないという志を同じくした者なのである。
本日の一連のやり取りを思い返してげっそりしつつ、名前はとあることを脳裏に蘇らせた。
今や文通友達である甘露寺蜜璃が以前、自分に対する兄と弟の態度を西洋の言葉で言い表していたが、なんと言っただろうか。横文字に触れる機会があまりないせいか、上手く馴染めずに思い出せない。
そして翌日、もう一度兄に掛け合うと、何故か今回はあっさりと片付けに承諾してくれた。かくして、ひと月と十日ほど遅れて漸く雛人形は押入れへと眠りにつくことが叶ったのだ。
思ってもいない大嫌いなどという台詞を言い放ってまで、しつこく交渉した甲斐があったものだと名前がほっと胸を撫でおろす傍ら――。
「名前は今後、好い人ができなければ結婚しないと千寿郎に約束してくれたとのことだ!つまり、好い人とやらを作らせなければいい!」
「シスターコンプレックスですね、煉獄さん!」
後日。その意味を純粋な兄妹愛のことだと勘違いしているらしい蜜璃が、杏寿郎の妹想いな近況もとい、名前にとっては悍ましい他ない宣言に対し、キュンと胸を高鳴らせたという若干ずれたやり取りは、その場にいたこの二人のみが知る逸話なのであった―――。