暖かな、というよりは少し強めの日差しを見上げ、手で影を作る。陀艮、もう少し日差し抑えてくれないかな。というか領域展開って天気も操作できるのかな?
 そんなどうでもいいことを考えながら、真人が寝転がるビーチベッドの縁に両手で頬杖をつく。地面は砂浜なのでちゃんとレジャーシートを持ってきた。陀艮の領域展開は呪霊みんなが集まる場所としてよく利用されているので、前回連れてきてもらった時に学んだ。人間は嫌いだけど便利なものを考えるところはすごいと思う。

 ベッドに寝転がったまま本を読み続ける真人の顔を眺めて、改めて好きだなぁと思う。
 呪霊になったばかりの私を拾ってくれた真人。人への嫉妬、特に恋愛の醜い感情から産まれた私が何かと世話を焼いてくれる真人のことを好きになるまで、時間はそうかからなかった。
 むしろ真人以外全部どうでもいい。真人が居ればそれでいいし真人が嫌いなものは私も嫌い。だから人間も嫌い。

「ねぇ真人ぉ。遊ぼうよ」

 折角の海だ。いつもは狭い隠れ家で過ごしているので自然に触れられるのは素直に嬉しいと感じる。呪霊なのに嬉しいって感情はおかしいのかな?
 真人曰く、私は人間の感情により近いものを持っているらしい。人間に寄ってしまった結果、戦闘がからっきしでいつも後方支援ばかりになっている。そこは真人の盾とかになりたいんだけど、いつもお留守番。

「ねぇねぇ、真人」
「あー、うるせぇな。陀艮と遊んで来いよ」

 海でぷかぷか浮いている陀艮を顎で指す真人。だって陀艮、あんまり喋らないからつまらないんだもん。
それより何より、真人と一緒に居たい。

「むぅ。じゃあ真人眺めてるからいいもん」
「お前、本当に俺のこと好きだね」

 好き。好き。自分の存在意義と言えるくらいに好き。大好き。愛してる。愛?人を呪うはずの存在が愛なんて。自分でも笑える。
だっておかしいよね。でも真人は何にも代えられないくらい好き。多分私は、そういう呪いなんだ。

「私は真人のために生きてるもん」

 笑顔で答える私に真人は心底面倒臭そうな顔をした。けれどそんな顔も好き。
多分それを伝えるとうるさいって怒られるからやめておく。

「…名前。」

 ベッドサイドに本を置き、珍しく私の顔をまじまじと見る真人。そんなに見つめられることがないから、つい照れる。
これはもしかしてキスの予感?なんて真人の顔を見つめ返しながら目を瞑ろうとした瞬間。

「お前はさ、俺が死ねつったら死ぬの?」

 表情を変えずに質問を投げる真人に思わず口が開いた。なんて質問をするんだこの人は。人じゃないけど。
そんな質問、答えなんて一つに決まってる。

「うん、死ぬよ」

 迷わず笑顔でそう答えた私に、真人は「ふーん」と興味なさげにまた本を取った。
真人が聞いたんじゃん!そんなに興味なさそうにしないでよ!!
ぽこすかと真人を叩くと、また面倒臭そうに手であしらわれた。
どうやったらこの気持ちが伝わるんだろうか。それともやっぱり呪霊なのに恋愛なんてするのがおかしいのかな。

 口を尖らせたまま俯いていると、不意に真人の手が私の頭を乱暴に撫ぜた。撫ぜるというよりはもう混ぜるみたいな、犬にするようなくらい乱暴。
髪の毛が乱れに乱れてしまったので、文句の一つでも言ってやろうと真人を見ると、珍しく笑っていた。
きゅん。自分の胸の高鳴りが聞こえる。それだけで全部許してしまう。好きって怖い。私たちのような存在を産んでしまう人間の感情って、すごいんだ。

「お前は死なせねーよ」

 また本に視線を移したまま、真人はぼそっと呟いた。次はきゅんどころじゃない。ギュン、だ。心臓がドキドキしてはち切れそう。むしろもう、今死にそう。

 ねぇ、これ以上好きにならせて私をどうするの?