朝目が覚めると目の前には大好きな人が居て、温もりに安心感を覚える。すーすーと静かに眠る彼の寝顔はあどけなく、いつもよりずっと幼く見えた。
閉じられた瞼を縁取る白い睫毛に、本当に日本人?と疑問を抱きたくなる。
それは高い鼻と形の良い唇も手伝って、いっそ人工的に作られたものなのでは、と思うほど綺麗な寝顔だった。
彼はいつもサングラスをかけているから、こうやって素顔をまじまじと見られるのはレアかもしれない。
カーテンから薄らと漏れる陽の光に透ける彼の髪はきらきらしていて、幻想的にすら見える。
ふと動こうとした時に、彼の腕が自分の身体に周っている事を思い出し、彼を起こさない様にそっと手だけ伸ばした。
彼の顔に柔らかく手を這わせる。するすると指が触れる頬には無駄がなく、この手が触れていることが嘘のようにも感じられる。
彼は本当に此処に居るのだと、自分にそう実感させるように彼の頬を撫でた。
彼には謎が多い。ふらっと私の家に帰ってきたかと思えば、二ヶ月姿を現さないなんて事もざらにある。
それでも彼は私のことを好きだと言ってくれるので、私もそれ以上は追求しない。こうやって一緒に明かせる夜があって、迎えられる朝がある。それだけで充分だった。
やわやわと頬を触り続けても一向に起きない彼に少し心配になりながらも、撫でる手は止めない。このまま起きなかったらどうしよう。まぁ、それはそれで。一緒に居られるからいいか──
そんなことを考えるくらいに思考が鈍っているってことは自覚しているつもり。どうしようもないほど好きなのだ。
彼の頬に触れたまま、唇を寄せる。近寄れば近寄るほど彼の匂いでいっぱいになる。私だけの幸せな時間。
ちゅ、とリップ音を立ててキスすれば、流石に少し声を漏らして身動ぎする。反応が可愛くて、つい悪戯心が芽生える。だってこんな彼、滅多に見られないもの。
もう一度唇を寄せようとした時、突然彼が動いて、私からするはずだったキスが彼からのものになった。むに、と唇を押し付けるようなキスに息がしづらい。酸素を取り入れようと口を開けると、待ってましたと言わんばかりに彼の舌がぬるりと侵入する。
目は瞑られたままなのに、私の位置なんて全てお見通しのように彼は角度を変えて奥へと進む。
更に息苦しくなってしまった私はなんとか逃れようと身を捩るけれど、いつの間にか彼の手が私の頭を抑えていて、どうやら逃げ出すことは不可能なようだ。
散々好き勝手に咥内を遊ばれ、行き場のない手が彼のシャツにシワを作る。息苦しさと気持ち良さに涙を浮かべれば、彼は満足した様子で唇を離した。
息も絶え絶えに彼を睨むと、形の良い唇をぺろりと舐めて悪びれもせず笑みを浮かべる。
そもそも私が先に触り出したのだから、仕返しされても文句は言えないはず。そう言いたげな顔で次は私の頬を存分に撫でる彼。
むにむにと形を確かめるような手つきにろくな抵抗もできず、されるがまま。彼は私の表情が面白いのか、楽しそうに笑っている。そんな彼を見て、私も笑ってしまう。
ずっとこの時間が続けばいいのに。そう願わずにはいられないくらい幸せな時間。
後の寂しさを無理矢理追い出し、涙が出そうになるのを堪えながら、今はただ彼の温もりだけを追った。