雄英高校には職場体験がカリキュラムにあり、体育祭で成績が優秀だった奴にはプロヒーロー事務所から指名が来る。体育祭で1位だった俺にももちろん指名が大量に来た訳だが、選ぶ事務所を間違えた。
 No.4ヒーロー、ベストジーニストの事務所。職場体験というほどプロのヒーローの活動を経験出来た訳でもなく、何かを学べた訳でもない。何が一番腹立たしいかって、俺が無駄な時間を過ごしていた間にデクの野郎が確実に成長していた事だ。俺はと言えば、訳の分からない七三の髪型にされただけ。
 いくら洗ってもクセがついて取れない髪に苛立ちながら、朝の通学路を歩く。変な髪型を見られなくなくて、いつもより歩くスピードを早めた。

「あれっ、かっちゃんイメチェンしたの?」

 後ろから声をかけられて振り向くと、そこには一番見られたくなかった奴、名前。俺のことをかっちゃんと呼ぶのはデクの野郎以外に名前だけだ。同じクラスなので見られない訳にはいかないのだが、それでも名前にはこの変な髪型を見られたくはなかった。どうせコイツも馬鹿にするんだろう。隣に並んできた名前に、いつもより三割増の不機嫌さで返事をする。

「あ?ンだよ悪りぃか」

 眉を寄せて名前を睨むと、慣れているのか特に怯む事もなく名前はからりと笑った。

「ううん、全然。七三もかっこいいと思うよ」

 平然とそう言うので、逆に呆気にとられる。自分では似合っていないと思っていたが、名前がそう言うなら悪くないかとすら思えた。
 「今日は一限目なんだっけ?」と、既に別の話題に移っている名前。深い意味があるのか無いのかは知らないが、本当に思ったことを口にしたのだろう。
 七三も、と言うことは普段からかっこいいと思ってるって事か?もやもやと考え出すと止まらず、教室までの道のりの間名前は一人で喋っていたが半分以上耳に入らない。
 後ほど切島と瀬呂に散々馬鹿にされて髪型は戻るのだが、名前に言われた言葉が無性に気になってしまうのだった。