アンタレス/内面を見つめる瞳(ゲルシャーク)

地球歴○月×日。
本日はデストロンガーの恐ろしさを地球人共に知らしめるべく、A-856ポイントにあるエネルギー発電所を襲撃。半径1キロメートルを火の海にする計画である。圏内には地球人の居住区もあるため甚大な被害をもたらし、平和ボケした地球人共に我らの力を示し恐怖と絶望を植え付けることが目的だ。作戦はゲルシャーク、ガスカンク、ギルドー、グッシャーに一任され、サポートとしてモノクロキラーも出撃。ポイント到着後すぐに作戦を開始するも、駆けつけたサイバトロンに邪魔をされ計画は難航。挙句にはブラックコンボイとコンバットロンの乱入によって統率が乱れたその隙にファイヤーコンボイの追撃であえなく撃沈。撤退を余儀なくされ、今回の作戦は失敗に終わった。

『──追伸 ブラックコンボイのアホには忍耐力の訓練またはプログラミング、双方無理なら脳内改造を徹底すべし。報告者:モノクロキラー…と』

やれやれ、と私はコンピュータの電源を落とした。
地球へやって来て月日が経つのに宇宙征服の野望は一向に進まず、平行線を辿ったまま。
サイバトロンの連中の所為もあるけれど、デストロンガー内の組織にも多少…いや結構問題があるかも。

サイバトロンのプロトフォームから生まれたブラックコンボイ・コンバットロンとゲルシャーク達ビースト軍団の折り合いが悪い。

特にブラックコンボイとゲルシャーク。

あの2人の仲は地球の言葉で言う「犬猿の仲」「水と油」のようなものだし、それがエスカレートすると私達まで巻き込むから大変なのよね。
今日の作戦だって、ブラックコンボイが出しゃばらなければ簡単な作戦だったのにね、失敗してギガトロン様に折檻されてたし。

…あら、今日は早く終わったみたいね。

「モノクロキラー!!」
『はいはいどうしたのゲルシャーク』
「く…っ今日の作戦はギガトロン様から直々に賜ったものだったのにブラックコンボイの奴が突然割り込んで来たんだ!発電所の中枢を破壊しようとした時にだ!あと少しで破壊できたのに!」
『…それでファイヤーコンボイの攻撃を受けてこんな大怪我負っちゃったのね。リペアまだなんでしょ?私がやってあげるわ』
「おおっ、スマンスマン」

カチャカチャと手慣れた手付きで彼の破損したパーツを直していく。
研究員という位置づけではあるけど、医療の知識もあるからリペアの時にはかなり頼られる。

『私もあの場にいたんだけど、大したことできなかったわね。ごめんなさい』
「いやいやモノクロキラーがいてくれて助かったぞ。邪魔なサイバトロン共を抑えられたのはモノクロキラーの能力と発明品「溶解爆弾」のおかげだからな」

私のスキャンした動物はシャチ。
可愛らしい外見ではあるけど、知能は他の動物に比べて高く、多くの生物を捕食することから非常に獰猛で貪欲な捕食者「海のギャング」として有名らしい。「キラーホエール(殺人クジラ)」とも呼ばれているように、クジラの仲間が使える音波をシャチも持っており、この特性を生かしてサイバトロンが合体する時に発生させる周波を乱す「キラージャミング」が新たな能力として加わった。
また、私自身が作戦参謀兼研究員というのもあって、元々の頭脳とシャチの知能数が合わさって戦略・研究・開発の能力が以前より飛躍的に伸びていた。
白黒のボディは多少地味であるけども、外見よりもその特性を選んだ甲斐はあった。

『そう言われると照れるわね。本当はブラックコンボイの頭に投げてやりたかったわ』

「本当だな」

こうやって作戦の後に話をするのは地球に来る前から変わらない。
仕事の内容から始まり、成功した、失敗した、ギガトロン様に褒められた、叱られた、作戦の反省、愚痴も全て私に話してくれる。
同じ作戦に参加していても、ね。
元々ゲルシャークは意地っ張りで見栄っ張りだから自分の弱いところはたとえギガトロン様の前でも見せたくない。
同期でゲルシャークと1番付き合いの長い私しか知らない、彼の本質。
義理堅くて、生真面目で、優しくて。

『ゲルシャーク』
「ん?」
『今日は2人で飲もうか。知り合いからいいお酒を貰ったの』
「酒か!久しぶりに2人で飲もう「なんやなんや、酒盛りでっか?ワテも入れてーな」……か?」
「そうよーいいお酒を2人だけで飲むなんてズルいじゃないの」
「拙者も混ぜろでござる」

どこから嗅ぎつけて来たのやら、ビーストトリオの面々も部屋に押しかけて来た。

せっかく2人で飲みたかったんだけど、これじゃあ無理かも。

「お前ら!俺はな、モノクロキラーと飲むつもりでだな、」
『まぁいいじゃないの。お酒は大勢で気の合うトランスフォーマーとって言うし、みんなで酒盛りしましょ』

ゲルシャークは些か不満そうだけど、納得はしてくれたみたいで棚から人数分持って来てくれた。
全く、素直じゃないんだから。

そういうところが、好きなんだけどね。

(せっかくモノクロキラーと2人きりだったのに…!)
(あら、このお酒本当に美味しいわね)
(ホンマやで。銘柄は何や?)
(美味い。誰から貰ったんだ?)
(惑星ガイアの航空参謀から。銘柄は確か、「大帝殺し」)