日録Blog

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■添付画像は向かって左が1枚目。

ある警官の手記。

[ 2020/06/18 5時 創作設定 ]

 イル・メ・トーラの地下街で自殺したと思われる警官の話。


 イル・メ・トーラと呼ばれる人間は驚くほど長寿である。

 全員がそうであるか、と言われるとそうではない。まちまちだ。しかし、私達が通常想像する寿命ではないのは確か。
 スリの被害にあったと言う、立ち姿はまるで高貴な出の老人。詳細を記録する時、名前だけでは他人と被る事がある。生まれ街や年齢を必ず聞くのだが、その老人は「280歳だ」と答えた。私は一瞬呆けて、再度聞き直したが「280歳」は間違いではなかった。

 信じられない。信じられなかった。老人とは言ったがまだ初老に足を掛けたぐらいの見た目だ。私の驚き様を見ていた老人は笑って「外の方だと60とか70でも長生きだそうだな。驚くのも無理はない。けれど私はまだ若い方だよ。もっと長生きする人もいる」
 「若々しい姿のままね」と少し悲しそうに語った。

 「若くして」亡くなるイル・メ・トーラもいるそうだ。彼らにとっての「若い」がどこまで含まれるのかは分からない。
 これを書いている手が震えて仕方ない。憧れなのか、恐怖なのか。少なくとも私は未知の存在と運命を共にしたくはない。

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(2017.5が最古)