2023/06/20

Untitled

 豊穣の呪いを受けた女の話。
 

 女の手を取ることを許された人間は数多く居たが、その指先を染めるのは男にのみ許された行為だった。女に抱く印象とはまるで合わない赤の染料を小筆でひと塗り、ふた塗り。

「私以外にはしないでね」

 そんなことを言っていた女は、壊れてかえってきた。天才クラブのナンバーなんてのは星神の前では無意味だ。女が運良く/運悪く出逢ってしまったのがよりにもよって、ここ仙舟では蛇蝎の如く嫌われる「豊穣」だった。

 朽ちることの無い身体に残されたのは崩壊した精神だった。

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