ご機嫌な後ろ髪
「もー飽きちゃったよ真子くん」
「まだ始業開始から2時間しか経っとらんやんけ」
少し猫背な大きい背中に抱きついて、真子くんの手元を覗き込む。感心、感心。本日も隊長業務ご苦労である。
暖かい午前中。さらさらと紙を滑る筆の音を聞きならがら、楽しいことを想像する。
天気も良くて過ごしやすい日だなあ。お散歩でも行こうかな。そういえば最近できた甘味処、美味しいって評判だしそのうち行きたいな。中庭に遊びに来る猫ちゃん可愛いんだよね、抱っこさせてくれないかなあ。
そんなことを思いながら、目の前でキラキラ光る真子くんの髪の毛に指を通した。
「なんや今日の紬はご機嫌やな」
「やりたい事いっぱいあるなーって思い浮かべてたの」
「ほー。そん中に仕事は入っとらんのか」
「真子くんが離席するタイミングで執務室に戻るから許して?」
「しゃーない奴やな」
ため息を吐きながらも好きなようにさせてくれる真子くんに甘えて、編み編みと金色を編んでいく。
手を離すと簡単にしゅるりと解けるそれは、この世の中でいちばん大好きな大好きな色。
「どんな人なんだろうね」
「ああ、十二番隊の新しい隊長な」
「曳舟隊長はさ、すっごく朗らかでお母さん!って感じだったじゃん」
「ええ身体しとるしなあ」
「もー!男ってほんとに!」
煩悩の塊だ!変態め!
ぺしん、と頭を叩くと脛を軽く蹴られた。痛い。そんなやり取りをしつつ、時計に目を向けるともうすぐ式典の時間が迫っている。
「仕方ないからそろそろ仕事戻るね」
「なにがしゃーないねん。まあ、ぼちぼち惣右介が俺ン事迎えにくる時間やし、早よ戻らんと鉢合わせすんで」
「げっ!退散しまーす!またね、真子くん!」
あの人にバレたらまた口うるさく言われちゃう。苦手な副隊長の顔を思い出して、足早に隊長室を出る。
今日のお仕事が終わったら、また髪の毛触らせてもらおっと。