永い、永い眠りについていたような気がします。何もない、ただひたすら空間だけが存在する場所にいたような気がします。
どちらが事実なのか、私にはわかりません。……私は、それをずっと考えている。答えはまだ、決まりそうにありません。
***
ふと気づくと、何も見えなかった。視界をなにかに遮られているわけではなく、ただとても暗い場所にいるのだということだけが理解できた。
慣れ、といっては良くないのかもしれないけれど、まあ今までにもこういう突然知らない場所にいることはよくあったし、今回もいつものやつかな、マシュはいるのだろうか。居なければ夢かなと、そんな事を考えていた。
しばらくすれば目も慣れてきて、周囲を見渡してみる。風に揺れる木々と手のひらに触れる冷えた土、空では星がいくつかキラキラと輝いていた。
「うーん、静かだな…。」
目を開けたら危険な場所だったわけでもなく、気づいたら目の前に魔獣が居たわけでもない。いつものようにどこか知らないところに来てしまったことだけはわかるが、この暗い夜道でどう行動すべきか頭を悩ませる。
「あれ、きみ迷子?…にしては結構大きいね、どうしたの?」
「うわっ!?」
思っていたよりも気を抜いていたのかもしれない。突然かけられた声に思わず大きな声が出てしまった。
振り向けば一人の少女がこちらを見ている。見た限りでは自分よりも少し年上といったところだろうか。青みがかった髪ときれいな黄色の瞳が印象的な、まるで夜空のような人だった。
…少し見惚れていたのかもしれない。彼女は首を傾げながら、もう一度どうしたのと尋ねてきた。はっとして口を開こうとしたとき、聞こえてきたのはグルルルといやな鳴き声。
「……下がって、獣がいる」
「きみこそ下がってるべきじゃない?丸腰だよね」
「でも、女の子を盾にするわけにはいかないし。」
「うーんかっこいいこと言う…。なら一緒にどうにかしよう。倒すなり、逃げるなりさ」
近づいてきた彼女はそのまま俺の隣に並んで、鳴き声が聞こえてきた方向をじっと見つめている。俺もそちらへと視線を向けた。…音はないが、気配はある。
「……来るよ!」
彼女の声と同時、ガサガサという大きな音と何かが近づいてくる気配。獰猛な唸り声が聞こえたとき、目の前に獣が現れた。
***
「ふぅ…なんとかなった…」
「ちょっと数が多かったけど。色々とサポートありがとう、助かったよ」
「こちらこそ。君が居てよかったよ」
少女と共に獣の群れを退治したあとに一息ついていると、目の前に広がる木々の向こうから先ほどとは違う気配を感じる。また敵か、と息を潜めようとしたけれど、よく聞き慣れた声が聞こえてきたので肩の力を抜いた。
「……ぃ、せんぱい…、マスター!ご無事ですか!」
「マシュ!…うん、俺は無事だよ」
「それはなによりです、こちらの方から戦闘音が聞こえたので急いで来たのですが。…もうご存知かもしれませんが、現在カルデアとの通信は通じず……先輩、またか。みたいな顔しないでください!…とにかく、何らかの異常がレイシフトに生じたと思われます。……それで、その、マスター。そちらの方は…?」
薄々気づいていたことが確信に変わったとき、マシュが目の前の少女へと目を向けた。
「あ、えっとね。俺がここで座ってぼーっとしてたら、どうしたのかって声をかけてくれたんだ。あと獣を追い払うのを手伝って貰った」
「一人でこんなとこにいるなんて不思議だなと思ってさ。夜の森は危ないからね。さっきみたいに突然獣が襲ってくることもあるし」
「それは…先輩がお世話になりました。ええと、あなたのお名前を伺っても…?」
「あー、そうだね。名前も知らないっていうのは不便だし。…私はシャンティ。よろしくね」
シャンティはそう名乗るとにこりと笑った。
「シャンティ、よろしく。俺は藤丸立香。こっちはマシュ」
「マシュ・キリエライトです。よろしくお願いします、シャンティさん!」
それからマシュやシャンティから今いる場所のことについて少し教えてもらった。少し離れたところにレイシフトしたマシュは俺を探していたそうなんだけど、ここに来るまでに特に何も見つけることはなかったそうだ。見えたのは自分が踏みしめる土と、生い茂る木々たちだけだったのだと。
一方でシャンティも特に気になるものは見つけられなかったのだそう。…詳しくは教えてもらえなかったのだけど、彼女はちょっと人よりも目がよく、遠くの方まで見えるんだそうだ。
「…ところでさ、シャンティってサーヴァント、でいいんだよね?」
先程の戦いの身のこなしを見ればそうとしか思えない、のだが。どうしてだろう、どこか違う気もしている。…不思議な感覚だ。
「サーヴァント……うん、そうだと思う。気づいたらここに居たんだ、召喚…っていうやつなのかな」
「サーヴァントとしての記録などは、お持ちではないのですか?」
「うーん…、よく、わからない。…私がシャンティだということと、今は、アサシン…?とかいうのだっていうのはわかる。あとそうだな、昔の記憶は少しおぼろげな気がするけど…。…でもその、サーヴァントとしての記録、っていうのはちょっとわからないや、ごめんね」
「だ、大丈夫ですよ…!過去に召喚されたことがないのかもしれません。サーヴァント初心者なのは私もです。私はデミ・サーヴァントといいまして…」
少ししょんぼりとした様子のシャンティに、マシュが声をかけている。…サーヴァント初心者、か。英霊となってから初めて召喚されたのだろうか?近代にシャンティという名のアサシンになりそうな人物…居ただろうか。うーん、わからない。それにサーヴァントのクラスなどについての知識も少しあやふやみたいだ。特殊な召喚だったのかな。
「…まあ、いろんな事情をもった英霊もいるだろうし、あまり気にしなくていいんじゃないかな」
それよりこれからどうするか考えないと。そう声をかければ2人とも少し笑って頷いてくれた。やっぱり女の子は笑っている方がいい。
とはいえ、本当にどうしたものか。この謎の特異点らしき場所に飛ばされた理由が今のところ見当たらない。まわりには何もなく、目的地も不明。…もしかして詰んでる?唯一のヒントになりそうなのはここで出会ったシャンティというアサシンのサーヴァントだけど…。彼女についてもわからないことだらけだ。
「さっきおぼろげって言ってたけど、昔のシャンティはどんなだったの?」
何か手がかりにならないかという願いと、純粋な興味で聞いてみた。
「私は…どんな子だったかな。父と母…あと兄が居て、遊んだり、鍛錬したり。決して裕福ではなかったけど、幸せだったな。」
「ご兄弟がいらっしゃったのですね」
「うん、そう。気づいたら困ってる人に手を差し伸べてる、優しい兄様。…それなのに自分のことは大切にしようとしないから、何かあったら私が支えなきゃって思ってるの」
「いい妹だなあ」
「ふふっ、ありがとう。でも別にいい子ではなかったよ。兄様に内緒で夜に抜け出したりもしたしね」
***
世間話のようなものをしながら、少しほのぼのとした空気になっていたその時。何かが衝突するような激しい音が聞こえた。
「な、なに…!?」
「先輩、あちらを見てください!」
マシュが指さした先に目を向けると、もくもくと砂煙が上っていた。それほどまでの衝撃だったのだろう。
「…何かいる…、あ……、え?」
「シャンティ?どうかしたの」
「あ…ごめん立香、大丈夫。…音がした方に何かいる。人影…みたいな。2人分見えた」
シャンティは俺を見ながらそう言った。…一瞬困ったような表情をしていたと思ったのだけど、こちらを向いたときにはいつもの表情に戻っていた。
…とにかく、今はもうそれしか手がかりがない。
「よし、音の方に向かおう」
「はい、マスター。シャンティさんも、行きましょう」
うん。と頷いたシャンティとともに、俺とマシュは歩き出した。先程の音があまりに大きかったので気づかなかったが、思ったよりも離れた場所らしい。
歩きだしてから数回、また大きな衝突音が聞こえてきていた。そのたびにシャンティがまた少し困ったような顔をしては、すぐにもとに戻る。…彼女には、何が見えているんだろう。
「…ねえ、シャンティ」
「うん?なにかな」
「もしかして、この先に行きたくない?」
「……えっ」
シャンティは目を大きく見開いて、またあの困った顔をした。そして視線をさまよわせながら、小さな声でわからない。とだけ呟いた。
「わからない、ですか?」
「そう…。さっきから見える人影が、誰だかわからなくて…。でも知ってる気がして。会いたい、ような…会いたくないような、そんな気持ち」
「シャンティさんのお知り合い…なのでしょうか。喧嘩別れをされた方がいらっしゃるとか?」
「喧嘩……。どうだったかな、仲の悪い人は居なかったと、思うんだけど…。覚えてないだけなのかも」
「どうしても嫌だったら、俺達だけで向かうよ。無理はさせたくない」
「………。ううん、私も行く。人間のきみが頑張ってるのに、サーヴァントの私が逃げるわけにはいかない」
まだ少し迷いのある声だったけれど、しっかりと俺の目を見てそう答えたシャンティは覚悟を決めた顔をしていた。
「そっか。じゃあ、行こう!」
「うん」
「はい、行きましょう」
***
木々に囲まれた森から抜けて、少し開けた場所に出た。少し先には湖が広がっている。
「ここは…」
「―――来たか」
シャンティが隣でぽつりと呟いたとき、前方から声が聞こえた。はっとして声が聞こえた方に目を向ければ、2つの影。見覚えがあるような、違うような、不思議な気持ちになる。シャンティと出会ってすぐに感じたものと似たようなものだ、正反対の感覚が共存している。
「…君たちは、ここで何を?」
「お前たちに用があったわけではない、半ば巻き込む形になったことは謝罪しよう」
「私も巻き込まれた側なのだが?…まあいい、今回だけは見逃してやる」
「…ところで、お前はそのように常に視線を下げている奴ではなかったはずだが」
男に話しかけられたシャンティの肩がビクリと跳ねた。2人の姿が見えてからずっと顔を伏せ、視線をさまよわせている。
「わ、私は…」
「オレは、お前の知っているオレとは違う。この男もそうだ。」
「…正しくは、貴女が記憶の片隅に封じ込めた私達、です。今の貴女に本来の私達のことは思い出せない」
「ま、待って…!話が見えないよ…彼女の記憶とか、どういうことなの」
「―そのアサシンのサーヴァントだが。ひどく不安定だ、いつ消えるかもわからない」
「なっ…」
「ふ、不安定とは…そんな、シャンティさんが消えるなんて、そんな事あるわけが!」
驚きすぎて声も出なくなっていたら、隣りにいたマシュが男に向かって声を上げた。…獣を倒した戦いぶりや、家族との思い出を幸せそうに語っていたあの姿は、不安定になど見えなかった。……けれど。この2人の姿を見てから、シャンティの様子が少し違ったというのは確かな事実だ。
「…そうか。自身の名前は覚えているか」
「……」
「では問おう、シャンティ。――おまえの兄の名は?」
「………え、?」
「おまえの母は誰だ?父は?」
「ぁ……、ま、待って」
「おまえの兄は、どうやって死んだ?」
「や、やだ…!」
「――おまえは、どうやって死んだ?」
「もうやめて!カルナ兄様!」
「……えっ、カルナ兄様?」
色々と気になることはあったけれど、最後の一言が衝撃的でオウム返しするように声に出していた。―その瞬間、俺の視界から影が消えた。代わりに現れたのは、2人のサーヴァント。
「カルナさん、アルジュナさん…!」
マシュにも2人の姿が見えているらしい。…ということは、シャンティにも見えているだろう。
「…その様子だと、思い出したようですね」
「ああ。そうだな」
「に、いさま…わ、私…」
「シャンティさん…。英雄カルナの義理の妹とされ、ともにその身を天へと還したと言われている…あのシャンティさん、なのですか?」
「シャンティ…」
シャンティはずっと兄様…や私…と呟いていて、こちらには意識も向けていない。傍から見ても混乱しているのだろうということがわかる。…そうなるのも仕方がない、と思う。どうしてかはわからないが記憶の一部を忘れていて、…おそらくそれはあまりいいことばかりではないもので、それを今ほぼ強制的に思い出したのだから。
「…シャンティ。顔を上げなさい」
「……?」
「貴女が知っているアルジュナと、このアルジュナは別の存在です。このカルナも同じく。今の私達はサーヴァント、加えて言うのならば…」
―――貴女達の敵です。
時が止まったような感覚だった。俺もマシュも、シャンティも同じようにアルジュナを見つめた。
「……敵」
「そう、私達は貴女たちの敵。貴女もサーヴァントであるのならば、私達を倒さなければなりません」
「アルジュナ、と…カルナを、倒す…」
「ええ、そうです。サーヴァントとして現界したのであれば、己のマスターを守りなさい。できないのであれば、――私は再び、貴女の大切な人の命を奪うことでしょう」
「―――!」
アルジュナの言葉の直後、何かが飛んでくる気配がした。…何か、ではない。矢だ。アルジュナが放った矢がこちらに向かって飛んできている。マスター!と叫ぶマシュの声が聞こえた。
「…それは、だめ」
気づいたときにはもう直前に迫っていた矢は、シャンティによって弾かれた。彼女は俺の目の前で、背中に俺を隠しながら強い眼差しでアルジュナを見つめている。
「立香は、あなたと戦いたいと思っているわけじゃない。…なら、あなたの攻撃を、通させるわけにはいかない。」
「シャンティ…!」
「たとえ兄様……カルナであっても、立香を傷つけるというなら許さない」
「シャンティさん…」
「…私はサーヴァント、だから!ここまで一緒に来てくれたマスターを守ってみせる!」
「そうですか。では、全力で」
「ああ、手加減はしない」
「立香、マシュ。多分私が2人を巻き込んでしまったんだと思う。…申し訳ないと思うんだけど、もう少し、付き合ってもらってもいいかな」
「もちろん。ね、マシュ」
「はい!最後までお付き合いします」
「…ありがとう。じゃあ、思い切りやっちゃうよ!」
***
「シャンティ」
キラキラとした光に包まれながら、カルナがシャンティを呼ぶ。
「…なあに」
「おまえは、おまえが生きたいように生きるといい」
「どうしたの今更…もう死んじゃってるよ」
「それはそうだが。…おまえ自身を大切に、過ごすといい」
「あはは……兄様、それこっちのセリフだよ」
シャンティの顔にもう困惑はなく、カルナと話すその様子は、本当に仲のいい兄妹だった。
「今回は、巻き込んでしまい本当にすみませんでした」
「アルジュナさん…」
「アルジュナも巻き込まれたって言ってたでしょ、気にしてないよ。…それに、あのときの矢、当たらないようにしてくれてた。ありがとうね」
「気づいて……ああ、いえ。たしかにあのときは本気ではありませんでしたが。…けれどきっと、本気であったとしても彼女に防がれていたと思いますよ」
「…アルジュナは、今回のこと、どこまで知ってる?」
「私はほとんど何も。私と彼女は生前さほど関わりがなかったもので。多少察するところはあれど、というところでしょうか。…心配せずとも、彼女が話してくれるでしょう、安心なさい」
「そっか、そうだね…。シャンティとはここまで一緒に来たし、信頼もしてる。だから大丈夫」
アルジュナは俺の言葉に頷くと、少しだけ視線をシャンティたちの方に向けてから座へと還っていった。向こうでもカルナが同じように座に還っていく。シャンティはしばらくカルナの居た場所を見つめていたが、1つ深呼吸をするとこちらを向いた。
「立香…うーんと、マスターって呼んじゃおうかな。さっきも呼んでたけど」
「うん、好きに呼んでよ」
「じゃあマスター、それにマシュ。…私の話、聞いてくれる?」
「もちろん。マシュもさっき言ったでしょ、最後まで付き合うってさ」
「はい。聞かせてください。シャンティさん」
にこりと笑ったシャンティは、そのまま俺たちに生前の話をしてくれた。記憶の一部を忘れていたときに話してくれた内容と変わっていた部分も確かにあったけれど、幸せそうな表情は同じだった。
「…それで、前にも言ったと思うんだけど。やっぱり私、今回が初めてサーヴァントとして召喚されたんだと思うんだ」
「そうなんだね」
「それでね、クラスとか色々と知識がおぼろげだったこと、考えたんだけど。私、座っていうのが確定されてないんだと思う」
「えっ、ま、待ってください。英霊は死後座に招かれ、そこから召喚されるのでは」
「うん。でも私、死後っていうのがよくわからないんだ。…私ってあの戦いの後、カルナみたいに母様のもとに行ったって言われてたり、解脱してこの世から消えたって言われてたりするみたいなんだけど。自分でもさっぱりわからなくて」
「…それは」
「今回こうしてサーヴァントとして現界したことで、逆説的にああ私死んだんだなってことはわかったんだけど。なんか、色々考えちゃってさ。自分の終わりのことすらあやふやなのに、英霊になんてなっていいのかなとか。私はあの後、どうなったんだろうとか」
目を伏せたシャンティは、そこまで話すと口を閉ざしてしまった。自分が生きてきた記憶の最後が不明というのは、どのような気持ちなんだろう。俺はまだ生きている途中で、その気持ちをわかってあげることはできないけれど…悩みに悩んだ結果、自分自身のことすらよくわからなくなって、生前の記憶も所々変わってしまったのだろうか。
「……そんなにも、死後どうあったかは大事なことなの?」
「えっ…」
「せ、先輩…そのような言い方は」
「俺はね、シャンティ。どっちでもいいと思うよ」
「どっち、でも」
「うん。だってシャンティにはたくさんの生きていたときの素敵な記憶がある。それにこうやってサーヴァントになってるっていうことは、それだけシャンティのことを大切に思っている人が居る証だと思うから」
「確かに、その通りかもしれません。シャンティさんはここまでたくさん私達のことを助けてくださいました。とても素敵な英霊であると感じます」
「……そう、かな」
そうだよ、という俺の声とそうですよ!というマシュの声が重なった。少し面白くなってしまって笑うと、マシュとシャンティもつられて笑ってた。憑き物が落ちたような顔で笑う彼女を見て、ああこれがシャンティの素顔なんだなと、そう感じた。
「そっか、そうだね。…うん。まだちょっとだけ思うところはあるけど、覚悟はできた。過去がどうだったとしても…今、私はここに居る。それでいいんだよね」
「うん、少なくとも俺は、シャンティに会えてよかったってそう思うから」
「私も、シャンティさんに会えてよかったです!」
「ありがとう…私も2人に会えて、よかった」
もう一度シャンティが笑ったとき、視界が明るくなっていくのに気づいた。見れば空がだんだんと色を変えている。
「夜が明けるね…。お別れの時間かな」
「また会えるかな」
「うーん。私は私の存在を認めたけど、やっぱり私の死後はあやふやなままだからなあ。…でも、そうだね、きっと会えるよ。立香が私を必要としてくれるならね」
「なら、カルデアに戻ったらすぐにでも会えそうだね」
「ふふっ、楽しみにしてるね」
シャンティの体が光に包まれていく。またね、という声とともに、俺達の意識も途切れた。
***
永い、永い眠りについていたような気がします。何もない、ただひたすら空間だけが存在する場所にいたような気がします。
どちらが事実なのか、私にはわかりません。……でも、それでいいと思うのです。私は今ここに居る、それが重要で、いちばん大切なのだと教えてもらったから。