1 Prolog
▼▲▼
「そうだ。雛には苦労をかけるが、此度の話を受けてはくれぬか」
*かぐや姫もかくや、と言わしめる美貌の少女は僅かに柳眉を寄せて父君を見つめた。
「しかし……」
「何、心配は要らない。奥州には小竜もおわすれば」
「……」
「彼奴はお前に会うのを楽しみにしておられる」
*−−北は雪国、小さな小さな小国の城主は此度の会談にて奥州と同盟を結び、かの国主は交換条件として雛の身を望んだ。桐生家の一人娘である雛と伊達家の家督を継いだ政宗は幼い頃より顔見知りだが、最近はこれといった交流はなかった。それにも関わらず、伊達政宗は同盟締結に際して雛を寄越せと宣ったのだ。当然、雛は混乱せざるを得ない。
「……国の為とあらば、お受け致します」
*国の為、政の為、民の為。いずれを取っても、この同盟は結ばねばならないと彼女とて分かっていた。独眼竜と名を馳せる政宗の不興を買うわけにも、はたまた敬愛すべき父に仇なすわけにもいかない。
「何かあったら、すぐに言うように」
「はい、父様」
*雛が頷いてくれた安堵と共に、父君は彼女の行く末を案じるような親らしい表情を覗かせた。
▲▼▲
- 2 -