3話

03
リング争奪戦の後、リボーンさんから一旦ヴァリアーに戻してやるって言われたのに喜んでいいのかどうかわからなかった。ツっくん達とも打ち解けて友達もできて、普通の女の子していたからまたあの世界に戻るのかと思ったら少し帰りたくないなと思ってしまった。リボーンさんはそんな私を察して明後日のヴァリアーを経つまでに考えろ、って言われたけど今日を合わせて3日。普通の女の子として生活する自分なんて想像できないな。



『 恭弥くんの鳥かわいいね!名前はないの? 』
「 僕の鳥じゃないよ、勝手について回るんだ。 」
『 かわいいなぁ私も何かペットほしい* 』


場所は変わって応接室。ぴよぴよと飛ぶ黄色い小さな鳥は恭弥くんの頭の上に落ち着いて乗っている。かわいい。


「 今日どうしたの?元気ないね。 」
『 え” 嘘!?めちゃくちゃ元気じゃん! 』
「 空元気なほうのね。 」



朝からニコニコしていた。いつも通り悟られないように。なのに、恭弥くんはあっさり見抜いて、早く言ったら?と威圧感を出してきたので観念することにした。



『 私ね、イタリアに帰るの。普通の女の子じゃないから、帰るの。 』
「 そういえば君は殺し屋だったね。 」
『 そうだよ〜殺し屋歴10年!ボスに憧れてこの世界に入って普通の生活なんて捨てたつもりだったんだけどなぁ 』
「 ここに残って風紀委員したらいいんじゃないの 」

しれっとおつかいを頼むみたいにここに残ったら、と言ってくれた恭弥くん。ここに残り風紀委員として恭弥くんと学校通う想像をしたら楽しそうだなとは思う。男子は学ランだから女子はセーラー服になるのかな?


『 それはそれで楽しそうだね!応接室お菓子常に置いてるし 』
「 僕は君のお菓子係じゃないよ 」
『 ふふふ、あ!そうだ、この鳥の名前さ、ヒバードにしようよ!雲雀だからヒバード!我ながらいいネーミングセンスだ 』
「 好きにしたら? 」




なんでもないような会話。恭弥くんはきっとわかってるんだろう、私が選ぶことなんて。イタリアに帰っても友達でいてくれたら嬉しいな。








「 極限ー!!ついに、ついに、、!真白もボクシングに目覚めたか!! 」
『 もしもーし、もうすぐ帰るからお話しようって言ったのに話聞いてないな君は。 』
「 帰るとは沢田の家にか? 」
『 イタリアに!さっきも言ったよ! 』
「 なんだと!!なんで言わなかったんだ!! 」
『 言ったじゃん!言ったのにボクシングの話したの君だよ!! 』



同じクラスで席も隣同士。人の話なんてヴァリアーメンバーも全然聞かないけどそれ以上にこの子は話を聞かない。だけどいつも真剣で笑顔でここにきて初めてできた同い年の友達。



『 了平くんがどういう道に進むのかわからないけど、私たちずっと友達でいれるかな? 』
「 当たり前だろ!!どこにいてもお前と俺は友達だ!! 」
『 さすが了平くん!君のそういう所大好きだよ! 』
「 俺も大好きだぞ!!だから元気でやれよ!! 」



真っ直ぐでボクシング馬鹿で妹大好きな了平くん。多分私は迷ってると思いながらきっと自分が行きたい場所は決まっているんだなって思う。





その日は了平くんが家でご飯を食べていけ!って言うからお言葉に甘えて了平くん家にお邪魔した。京子ちゃんはとても悲しそうにしてくれたけどまたケーキ食べましょ!って笑顔で言ってくれて天使に見えた。








次の日奈々さんのお手伝いをしながら奈々さんがツナを呼んでアルバムを引っ張り出した。





『 あ!これ、ツっくんが私守ってくれたやつ!写真に残してくれてるんだね!』
「 泣きながらってかっこ悪いな俺、、 」
『 当時はすっごいかっこよかったよ!あ、これツっくんが目の前で水たまりに転んだやつだ 』
「 なんでこんなの残してんだよ! 」
「 小さい時からお前はダメツナだな 」
「 う、うるさいっ、あ、 」




いつの間にかいたリボーンさんの言葉に反論するツっくんは何かを見つけて私や奈々さんリボーンさんはそれを見ると私の家族と奈々さんの家族が写っている写真だった。




「 懐かしいわね、みんなで集合写真撮りたいって春奈が言い出したのよ 」


春奈、とは私のお母さん。つまり奈々さんの双子の妹だ。だから私と奈々さんは似ていてツっくんと双子みたいに見える。私のほうが1個年上なのになぁ。久しぶりに見る両親の姿は懐かしく思える。イタリアには写真なんて残してないから久しぶりに見れて嬉しい。お父さんとお母さんは私がマフィアになることをわかっててイタリアに連れていったのかな。


『 もう10年経つんだね、あっという間だったな〜 』
「 この頃シロちゃんの事本当の姉だと思ってたから引っ越しするって聞いたときに姉弟じゃないって知ってびっくりしたよ 」
「 ツナったらずっと泣いてたものね〜 」
『 、ツっくんかわいい! 』
「 昔の話だから‘!! 」

10年前までは普通の女の子だった私。きっと日本に残って平和に暮らしたかったんだろうなと両親は思ってたけど私は雪の守護者だからそうもいかなくなったんだろうなって予想がつく。だけど普通の女の子としても楽しいし、こうしてツっくんの家族と本当の家族のように過ごすのもいいけど、少し物足りないのは私が普通の女の子じゃないということだろうか。




アルバムを見ながら思い出話もそこそこにツっくんが思い出したかのように獄寺くんが風邪だからお見舞い行ってあげて!と下手くそな演技で家を追い出されてしまった。ツっくんはこの先マフィアになるとしたらちゃんとそんな下手くそな演技でやっていけるのか心配だったけど私も隼人くんが心配だったのでお家に行くことにした。



『 あ、隼人くん!発見! 』
「 ゲホッゲホッ!ま、真白さん!?な、何でここに!? 」
『 明日帰るからそのご挨拶で回ってるの。ツっくんには下手くそな演技で隼人くんが風邪だからお見舞い行ってとか言われたけどね 』





隼人くんの家に行くまでに近くの公園のベンチに座ってタバコを吸う隼人くんを見つけた。声をかければむせて苦しそうだったけどその背中をさする為に隣に座りさすってあげた。





「 じゅ、10代目が俺の為に、、、 」
『 隼人くんはツっくんが好きだね* 』
「 そりゃもちろん10代目は素晴らしい方なので!!真白さんのことも俺は、、、あ 」





〈 リング争奪戦が終わったら真白さんに伝えたい事があります。 〉





ツっくんの素晴らしさと共に私の名前を出して言いそうになった言葉を顔を真っ赤にさせてとめた。恐らく私と隼人くんの頭には先日リング争奪戦のときに隼人くんに言われた言葉が流れているだろう。伝えたい事。恐らくうっかりさっき言いそうになった言葉だと思う。




隼人くんはツっくんの血縁者だと知ると私にも尊敬する先輩のように接してくれた。武くんやディーノさん達には口悪くてガラ悪い見た目なのにツっくんの為に一生懸命で、きっとツっくんがマフィアにならないと言っても着いていくぐらいにはツっくんを慕っている。そんな隼人くんが私は好きだった。恋情ではない気持ちで。かわいい弟みたいでちょっかいかけたり怒ったりタバコを一緒に吸ってみたりして、楽しい時間を過ごせたと思う。






「 ……真白さん、俺は、あなたが好きだ。 」
『 ……うん 』
「 俺の事を対等に接してくれて、一緒に笑ってくれた真白さんが、俺はずっと好きでした。 」
『 うん 』
「 でも真白さんは、あのナイフ野郎が好きですよね? 」
『 へ!?ナ、ナイフ野郎ってベルのことかな?好きとかどうかは違うと思うけど 』
「 じゃあイタリアに帰らないで、俺のそばにいてください。真白さん 」




こんな熱烈な告白は初めてだ。顔が熱い。恭弥くんもここにいなよって言ってくれた言葉とは違う。私の目を真っ直ぐ見て隼人くんは言った。私のこと好きなのかな、とは思ったけどこんなにハッキリ伝えられると思わなかった。




『 あの、ね。私、恋とこそーいうのイマイチわからないんだけど一緒にいたい人がいるの。あいつ私がいないと遊ぶ相手いないからつまらないって言うし私もあいつといるとむかつくけど、強くてぶっ飛んでるヤツだけど、楽しくて、……好きとかじゃないよ!?だけど、負けたくないの。あいつより強くなりたいの 』




ベルとはヴァリアー入隊時からずっといる。ナイフ投げてくるしイタズラもされるし寝込み襲われそうになるしキスだってされたし、だけど泣いてたら頭なでてくれるし落ち込んだら一緒にケーキ食べよって言ってくれるし、楽しいことは一緒にやろうとしてくれる。隣にベル以外がいることが想像できない。







「 それ、好きって言ってるようなもんですよ 」
『 っ、……隼人くん、私は隼人くんの気持ちに答えられない。だけどこの1年、隼人くん達と過ごしてすごい楽しかった!ツっくんを、よろしくお願いします。 』



そう言って私は頭を下げれば、隼人くんは私の頭を静かになでて、当たり前ですよと言って少し悲しそうだった。








少し気まずい私だったけど隼人くんはイタリア行った時また会いに行きます!あなたに惚れてもらえるような男になります!あんなナイフ野郎から奪ってやりますよ!と宣言された私はなんだか恥ずかしくて隼人くんと別れた今も少しドキドキする。生告白とはあんなに緊張するものだからした本人はどれだけドキドキしてるんだろう。






「 真白みーっけ 」
『 は? 』
「 回収っ! 」
『 ちょ、ベル!?一体なにって何で抱えるの!?? 』



奈々さんの家への帰り道。隼人くんからの熱烈な告白の余韻でドキドキしていた私は突然目の前に現れたベルに別の意味でドキドキした。かと思ったら急に私を抱えて屋根をつたって走り出したから驚かないほうが無理だろう。



散々どこいくの!?降ろしてよ!偽王子の馬鹿!と言っても降ろしてくれる気配はなくて、やっと降ろしてくれたと思ったら日本にあるヴァリアーの拠点である別荘だった。談話室にはスクアーロやレヴィやマーモンがいた気がするけどそこを通って1つの部屋に入り( ちゃっかり鍵閉めてた )ベッドに降ろされた。






『 ちょっとベル一体急に、 』
「 真白は特別に俺のお姫様な 」
『 は? 』
「 ししし、あのエースくんにもボクシングのやつにも沢田にも爆弾野郎でもなくお前と一緒にいるのは俺だし。ずっと一緒にいるなら俺のお姫様ってことにしてやるよ 」




エースくんは恭弥くん、ボクシングのやつは了平くん、沢田はツっくん、爆弾野郎は隼人くん。その順番は昨日私が会いに行った人の順番だ。もしかしてずっとつけてきたのか?そんな怪我で?しかも隼人くんの告白絶対バッチリ聞かれたんだろうな。だから、告白まがいのことを今ベルは伝えてくれてるのかな。





『 っいつもはブスとか言う癖に、 』
「 真白は世界一かわいいぜ 」
『 っ!あとつけてきたとか馬鹿じゃないの、 』
「 他の男に会ってるお前が悪い 」




これは誰だろうか。聞いてるこちらが恥ずかしい。こんなにハッキリ言ってくるとは思わなかった。しかも平然としているのがずるい。




『 は、はっきり、…言ってくれなきゃわからないじゃん 』
「 ……俺にそれ言わせるってわかってる? 」
『 あ、やっぱりストップ!今日色々あって混乱してるからまた今度! 』
「 今度とかねぇし 」




ベッドに押し付けるように唇を塞がれた。腕も掴まれてるから何もできない。最初は触れるだけ、離れたと思ったらまたくっついて舌が入る。前髪の隙間から見えるベルの綺麗な目が真っ直ぐと私の目を射抜く。これは、ダメだ、降参だ、何に対しての降参かわからないけどそう思った。






「 真白、王子の姫になるんだから別の男に目移りすんなよ 」
『 はいはい、わかりましたよー 』
「 お、素直じゃん 」
『 私はどこぞの王子と違って不誠実じゃないので好きだと思った人としかキスなんてしませーん 』
「 へー俺の事好きなんだ 」
『 っ!ベ、ベルもそうでしょ!てか腕離せー!! 』




離れて、ベルはいつものように笑いながらそう言った。平気そうなフリをしてるけど内心心臓がバクバクしてうるさい。恥ずかしい。なんでこいつは余裕なんだ、その年であれやこれやと慣れているのか。いやスクアーロもベルぐらいのときから女遊び激しい言ってたからベルもそうなのかな。なんて思い始めたら暗い気持ちになりそうになったから腕を離せと暴れてみるけど離れようとしない。ベルの顔が近づいて、またキスかなと思ったら違った。





「 Ti amo、Tu sei mio per sempre( 愛してる、お前は永遠に私のもの ) 」
『 っっ!! 』





耳元で囁かれたイタリア語の告白。隼人くん以上の情熱的な告白に顔が真っ赤になるのがわかる。ずるい、ずるい、ずるい。そんなことを言われて、堕ちない女なんて、いないだろう。いや私の場合はすでに、






「 王子にここまで言わせたんだから…、 」
『 Ti amo anche io、Sono tuo( 私も愛してます、私はあなたのものです ) 』
「 っ 」
『 あ、ベルの顔赤い! 』
「 うるせー 」



イタリア語で返事をしたら、不意をつかれたように顔の赤いベル。それを指摘すればまた唇が塞がれた。1年前とは違う、気持ちの通じたキスは幸せな気持ちになった。









『 ちょ!何服の中に手いれてんの! 』
「 そーいう流れじゃん。 」
『 早い!早いよ!私したことないのに早急すぎる!! 』
「 ししし、真白処女なの? 」
『 っ直球でそんなことを聞くなー!!! 』

















「 迷いはなくなったみたいだな。ま、最初からわかってたけどな。 」
『 リボーンさんには叶いませんな*。けど普通の学生できて楽しかったです!ツっくんにも会えたしいい思い出になりました 』
「 あんまりイチャイチャばっかりするなよ 」
『 え‘ なんで知って、、、、いやリボーンさんですもんね 』


見送りはいらないと言って今朝奈々さんに改めて挨拶に行ったら「 ここはあなたの家なんだからいつでも帰っておいで。いってらっしゃい 」と言われて泣いた。ちなみに昨夜沢田家に帰る予定だったのに結局ベルが帰してくれずヴァリアー邸のベルの部屋に泊まった。後で合流したベルには泣いている姿に笑われたけど奈々さんはお母さんに似ているから第二のお母さんと思っている。空港にはリボーンさんがわざわざ来てくれて、何もかもお見通しだったようだ。


「 真白、お前は雪の守護者だ。頼むぞ。 」
『 任せてくださいよ!もっと強くなって戻ってくるので期待してください! 』





日本とはしばらくおさらばとなるがボスの為にツっくんの為にボンゴレを支える守護者として強くなろうと思った。