同級生Sのとある休日
とある休日の昼下がり。
午前中に手早く課題を終わらせ、昼過ぎからは上鳴と切島と自主練をする約束をしていたから、俺は足早に身支度を済ませ部屋を出る。
鍵を閉め、エレベーターに向かおうとすると少し先に、隣部屋のイケメンくんが歩いているのを見つけた。歩みを連め、声を掛けようとしたその時―――誰かと電話していることに気付く。
盗み聞きをするつもりは無かったが、聴こえてくるその声に、なんとなく耳を済ましてしまった。
「ああ、今からそっち向かう。そんな謝るな、気にしてねえから。」
轟の話し方の雰囲気がいつもと少し違う。
普段、俺やクラスのやつらと話す時より、柔らかく優しい感じがするのは、きっと俺の勘違いではない。
「ゆっくり来いってなんでだ?いやそんなこと気にしなくていいだろ。前に起こしに行った時も祐佳の部屋……ふっ。分かったって、ゆっくり行く。ああ、またあとでな。」
そう言って電話を切る轟に、なんだかもう察してしまった。
お相手は、近頃いつにも増してうちのクラスに遊びに来る、噂の彼女という事か。
「………よっ轟!偶然だな。」
「瀬呂か。」
すっかりタイミングを失ったが、電話も終わったようなので、改めて轟に声を掛ける。
すると先程までとは違う、いつもの雰囲気で俺の呼び掛けに反応する同級生の姿がそこにはあった。
「さっき電話してたろ?もしかして最近噂の彼女?」
「ああ、そうだ。噂になってんのか?」
「そりゃ〜……雄英屈指のイケメンくんに彼女できたら噂になるだろ。轟の彼女って、前から結構うちのクラス来てる普通科の前田だよな?」
「そうだが、よく名前まで覚えてんな。」
「いや……若干怖い顔すんなって、"同級生の彼女として"気になって覚えてだだけだって。」
普段ポーカーフェイスの轟が、こんな嫉妬心丸出しのリアクションをするとは思わず、彼の彼女に対する"好き"が想像以上にひしひしと伝わってくる。
体育祭で、俺に大氷壁をぶっぱしたしょきろきくんからは想像も出来ない姿だな、なんてふと思ってしまった。
「これから彼女と会うのか?」
「ああ。祐佳の部屋で勉強する約束してんだが、寝坊したからゆっくり歩いて来いって言われた。」
いや、天然こわ。
さらっと彼女と部屋デートするって惚気けちゃってるけど、絶対に惚気けてる自覚ないだろ…。
そんな同級生に心の中で頭を抱えつつも、ひとつ純粋に気になっていたことを聞いてみたくなった。
「心配せずとも仲良くやってるみたいで何よりだけど、轟に彼女できるの正直意外だったわ。そういうの興味無いと思ってた。」
そう轟の方を向いて尋ねると、一瞬視線を下に向け、少し考えた様子を見せる。
しかし、すぐに顔を上げ、こちらを向いて俺の言葉に対する返事を切り出した。
「俺も正直言って恋愛とかよく分かんねえけど………あいつのことは、大切にしたいと思ってる。」
そう口にする轟は、俺もクラスのやつらもきっと見たことが無い、彼女を心の底から愛おしむような表情をしていて、言葉にせずともその想いが伝わってくる。
きっとその表情は、彼女だけに見せるものなのだろうなと、すぐ祭せられた。
「(いやなんで俺……ドキドキしてんだよ……)」
そんな始めてみる同級生の姿に、何故か胸の鼓動が早くなる。何だかもう自分でも意味が分からなくなってきて、今度こそ本当に頭を抱えた。
隣で「瀬呂、どうかしたか?」といつもの顔で尋ねてくる同級生に頭痛がしそうだったが、何とか堪えて「ああ〜〜〜もう、末永くお幸せにな。」そう伝えて、共にエレベーターに乗り込んだ。
2021/04 5期EDのせろろき見て思いついた寮生活の中でのしょーゆちゃん