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「で、何だい」
 公園から帰ってくるなり重い空気が二人を歓迎した。片桐はそんな警視庁の面子に不思議そうに笑みを深くした。いや、何でそこで笑顔なんだと松田は密かにつっこむ。
「七年前と三年前の爆弾魔です、夕さん」
 佐藤の言葉に片桐ではなく松田が顔色を変える。
 そう、七年前の爆弾魔といえば萩原の爆弾解体のことしかない。そして、三年前の観覧車。忘れるわけがない。爆弾の解除が成功したものの犯人を捕まえることに失敗した、忘れることができない事件だった。
「えっ何の話だっけ」
「「はぁ!?」」
 なのに、肝心の片桐の頭からはすっかり抜け落ちていた。思わず萩原と声を合わせる。
「お前マジで覚えてねえのか!?観覧車に爆弾仕掛けられてただろ!」
「あ〜、松田クンが馬鹿な自己犠牲で残りの爆弾の在り処を突き止めようとしていたあれか〜」
「………お前、根に持つタイプだな?」
 何のことかな?と白を切る片桐。「なになに?何の話?」「うるせえこっち見てニヤニヤすんな」からかう萩原を押し退け、その犯人から送られてきたらしきファックスに目をやる。そこには東京スピリッツの優勝パレードで面白いことが起こる、と印刷されていた。
「東京スピリッツって何だい?」
「サッカーチームのことですよ。夕さんってスポーツ観ないんですか?結構有名ですよ」
「生憎興味がないもんでね」
 片桐と佐藤の会話に「とにかく」と咳払いをして、目暮が割る。
「模倣犯やイタズラの可能性もある…いずれにしても当日は、周囲の警戒に当たる。各自気を引き締めるように」