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 予告通り、東京スピリッツの優勝パレードの最中に爆発が発生した。幸い死傷者はなし。そして例のごとくあの眼鏡の少年と探偵団、沖矢昴がいた。
 そして――
「使用された爆弾はプラスチック爆弾…三年前の爆弾と同じですね」
 いや何でお前がいる。松田は思わず天を仰ぎたくなった。
 その青年、安室透は松田の視線などもろともせずに淡々と推理していく。
「時限式ではなく無線式、か」
 ぽつりと呟く片桐。「そういえは当時、素晴らしい手腕で松田刑事どころか米花中央病院にいた人々を救ったのは貴女でしたよね」あんな小さな声をよく拾えるものだと、自分にも刺さることを推理の傍らで考える。
 どうやら爆弾が仕込まれていた車に高木が近づいた瞬間に爆発したようで、爆弾の種類やその警察官を狙った特性を考え、過去の連続爆弾魔と同一人物である可能性が高くなった。
「おい」
 皆が推理中の最中、松田はこっそり安室に話しかけた。
「お前何でここにいんだよ」
「仕事の帰りですよ」
「…無闇に事件に関わって大丈夫なのか?」
 告げられてはいないものの彼の本業を既に察しているため、やんわり帰れと促す。しかし彼は首を縦に振らなかった。
「本当に過去の爆弾魔と同じなら、逃すわけにはいかない」
 こちらもびっくりしてしまうほどの正義感だ。これ以上は何を言っても無駄だろうと判断し、松田は引き下がった。
 その後、光彦が偶然録画していたビデオに何か記録されていないかと皆で観てみることになった。しかしながら特別怪しいところというものはなく、ごく普通のパレードの記録だった。
「そういえば郵便局は?」
「「え?」」
 片桐の不意の発言に安室と沖矢の声が重なる。安室はギッと沖矢を睨みつけたあと「郵便局がどうしたんですか?」と訊ねた。
「いやね、私の記憶では十四時半に郵便回収車がポストに来る筈だったんだが…」
「え、でも郵便の車が来てないだけなんでしょう?」
 高木の不思議そうな声に「それはそうなんだけどねえ」と片桐は苦笑した。「あの時道路は片側通行で、交通量はそこまで多くなかった筈です。それなのにこのビデオの最後、十四時三十八分までに回収に来てないのはおかしいですね」沖矢からの援護射撃に高木はそ、そうですか?と圧倒される。
「夕さん、その回収時間、間違いないの?」
「ああ、その筈だよ」
「すごいね!よく覚えてるね」
「何がヒントになるか分からないからねえ。目に入ったものを短期間でも覚えておくのは重要さ。特に諜報の仕事は頭(ココ)が一番の頼りなのだよ」
 覚えておくがいい、と片桐は嬉しそうに述べる。そんな彼女に、一瞬鋭い視線を向けた沖矢を松田は見逃さなかった。だが彼女はそれを気にすることなく本業に励んだ。
「さて松田クン、本庁に連絡して郵便回収車の行方を探ろう」