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「そういえば片桐、お前本当のところの年齢はいくつなんだ?」
 某日、松田は久しぶりに降谷を交えて片桐と一緒にのんびりしていた。仕事とは関係ない他愛ない話の途中、不意に降谷がそんなことを言い出したのである。一体何の話か分からず、松田は首をかしげる。すると降谷が説明してくれた。
「ああ、お前は知らなかったよな。実は片桐が書いた履歴書、殆どが嘘で、その一つが年齢らしい」
「は?」
「つまりこいつ、多分俺たちより歳下だ」
 なんだと?思わず彼女に顔を向ければ、彼女は特に動揺も見せず笑っていた。
「お前俺より歳下なの?」
「多分ね〜」
「ほらな」
 呆れまなこの降谷。「ていうか歳まで嘘だって、何で分かったんだい?」「ベルモットから聞いた」「あのオバサン変なところで口が軽いねえ」いや――そりゃ年齢の割に随分若々しい感じがしたが、そういう人種もいるだろうと納得していた。まさかそれは嘘の年齢で、いざ本当に歳下だと明かされたら戸惑いが半端ない。
「…で、お前実際いくつなんだ?」
 我慢できずに訊いた。「んー…」片桐は暫し考える素振りを見せてから言った。
「24、5くらいじゃない?」
 こいつ五歳も逆サバしていたのか。
「何で年齢ごまかしてたんだよ。別にする必要なくねえか?お前それでからかわれていただろ」
「まあね。でもそういうネタがあるほうが周りと親しみやすくなる」
 一応ちゃんと理由があったらしい。
「と、いうのは建前で」
 は?と口を開ける。
「本当は西暦のところ間違えて書いちゃって、訂正するの面倒だったからそのままでいった、っていうだけの話だねえ」
 つまり――片桐はにやっと悪戯っ子の笑みを浮かべた。
「特に理由はない!」
 瞬間、降谷の拳骨が片桐を襲った。