疲労の所為か眠気に襲われていた。やっとの思いで帰路に着き、名前はポストを確認する。
「ん?」
 写真が入っていた。それはポラロイドといわれるもので、デジタルとは違うフィルム独特の風合いが感じられた。被写体は、向日葵。「なんだこりゃ」物は理解できるが、何故これが入っているのか、そもそも封筒にも入れずに写真剥き出してポストに投函するなど失礼じゃないのかなど、様々な感情が生まれた。
 とはいえ、素人目に見ても綺麗に撮れていると思う。捨てるか迷ったが、ただ向日葵が写っているだけで無害ということもあり、結局捨てずに引き出しにしまっておくことにした。
「変なの。ていうか何で向日葵?」
 季節でもないというのに。真夏を思わせる濃い青空の下で咲き誇る向日葵。それをぼんやり眺めながらエレベーターに乗り込む。
 名前が住む1LDKのマンションは賃貸物件で、オートロック式である。女の一人暮らしも安全だ。常々そう思っているからなのか、写真を見ながらふらふらと歩いていた所為で前方から来ていた住民とぶつかってしまった。恥ずかしい。済みませんと一言述べ合って部屋に入り込む。
「はぁ…」
 最近疲労と眠気が酷い。寝不足のつもりはないが、知らず知らずの内に浅く眠ってしまっているのだろうか。疲れも、多分それが原因だろう。
 もう一度溜息をついて、何気なく写真に目を落とす。
「…にしても本当にキレイ」
 この写真を見ているだけで、不思議と疲れが癒やされてくるようだ。花にはセラピー効果があるのだろう。うちにも花を置いてみるかとぼんやり考え、写真を引き出しにしまう。
 少し名残惜しく感じたのは、この写真を撮った人物の腕が相当良いからだったのだろう。
- back -