―――そのあとのことは、正直よく覚えていない。彼の指先で翻弄され、鳴き、身を捩り、視線で灼かれ、ただいっぱいいっぱいだった。怠い感覚に気づいて目を開ければ知らない間にカーテンの隙間から日差しが入り込んでいて、昨日の出来事が既に過去のものなったことを知った。
「おはよう」
 少し髪が乱れたギーマがベッドに肘をついてこちらを眺めていたその姿は、起きたばかりの名前には刺激が強すぎた。
「なんだ、そんなに恥ずかしがることもないだろ」
「………」
「布団をかぶっても私もかぶれば何も変わらないぞ」
「……な、…んでそんなにふつうなの…」
 思いの外掠れた声に自分でも驚く。布団から少し顔を出せばギーマも虚を衝かれたようで、ちょっと待っていろという言葉を残しベッドから出た。
 戻ってきた彼の手にはミネラルウォーターのペットボトルが握られていた。
「昨夜ははしゃぎすぎたね。済まなかった」
「げほっ…」
「でもまあ、君も満更じゃなかっただろ?」
「まっ満更とかそういう問題じゃないんだけど!?」
 こっちは初めての経験で許容量オーバーなのだ。余裕の彼とは違う。
「……私もらしくなく緊張したよ」
「えっ…あれで緊張してたの」
「してたな」
 意外だ。昨夜はあれだけ余裕で笑い、名前を翻弄したというのに――。
 思わずあの情景の一部が朧気ながら思い浮かんで頬が熱くなる。目敏く見つけたギーマが何で赤面してるんだとからかってきたので無言で水を飲んだ。
「なんだ、素直になれば良いのに。昨日の君はあんなに可愛かったのに」
「ひゃっ」
 すすす、と剥き出しの肩を指先で撫でられる。あの行為を連想させるそれについ身を引けば今度は腰を抱かれた。逃げるなよ、と目が言っている。
「名前」
「ちょっと…いま、朝なんだけど!」
「そうだな」
「いやそうだなじゃなくて…あっ、やだって…」
「嘘をつくな」
 散々いじめられた耳を舐められ、またもや萎縮する。それが合図であるかのようにギーマは名前からペットボトルを受け取ると乱暴に放り投げ、名前をベッドの中へ引き摺り込んだ。
 どうやらまだ、熱は冷めていないらしい。
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