サイタマ

「巷はハロウィン一色ですがサイタマさん」
「え?」
「この状況をどう思われますか」
「いや知らん」
 そう答えて再び漫画に視線を戻すサイタマ。その態度が気に食わんとばかりに、名前は机をバンと叩く。
「まったくもう!最近の若い奴ときたら…!何がハロウィンだよただのコスプレパーティーじゃねーか!ゴミを散らかして帰るし…!テメーらの存在がゴミなんだよコノヤロー!!」
「誰の代弁をしてんだお前は」
 呆れたようにつっこむサイタマは至極会話をする気が無さそうだ。さっさと会話を終わらせたいのたろう。つっこみにも微妙にキレが無い。
「だぁーってさあ、街でたむろして写メしてSNSで“みんなで仮装テヘペロ”とかうぜーんだよ!」
「は?……なにお前、嫉妬してんの?」
「今の言葉をどう受け取ったらそうなるんだよ!」
「いやだって…名前、俺と似て友達少ないし、一応女子だから女友達とそういうことしてみたいのかと思って」
「一応って失礼だな…」
 するとサイタマは漫画を置いて名前を向き合う。どうしたのだろうと首をかしげると、サイタマは手を差し出した。「は?」行動の意味が分からない。名前の気持ちを察してかサイタマは口を開く。
「トリックオアトリート」
「……は?」
「お菓子くれなきゃイタズラするぞ」
「え?…………ええっ?!」
 名前は咄嗟に鞄の中身を確認したがお菓子は入っていなかった。
「…じゃ、イタズラされても文句はねえな?」
「…………………………え」
 にや、と笑うサイタマから距離を取るために後退するが、あっという間に壁際に追いやられてしまい逃げ道が無くなる。
「覚悟しろよ名前」
「いやちょ、待…うっ……うはははははははははははは!!」
「こちょこちょこちょこちょー!」
「やぁー!も、むりっあははははははは」
 その下らない戯れは、ジェノスが帰ってくるまで続いた。