「聞いてくださいよ赤井さん」
「何だ?」
「私実はね、高校生までサンタさん信じてたんですよ」
「ホー、健気な女子高生もいたものだな」
どう考えても笑いたくて仕方がないといった感じの声音に、名前はむぅと頬を膨らませた。
「だって普通信じるじゃないですか!どうせ赤井さんも信じてたでしょ?」
「まあな。だが俺は小学生でサンタがいないことを悟った」
「うわぁ嫌な小学生!」
小学生に“サンタさんって本当はいないんでしょ?”なんて死んだ目で訊かれたら悲しすぎる。一人そう納得していると赤井が「今年はサンタは来ると思うか?」と相変わらずのからかい口調で質問してきた。
「…いや、サンタさんもういないから」
「俺がプレゼントをやろう」
「申告してきたよこの人。もうサンタさんでもないよ」
にやりと笑うその表情は男らしくて素敵だが、「いや結構です」と名前はばっさり断った。
「赤井さんのプレゼントってなんか怖い……沖矢さんのほうがまだ常識的なものをプレゼントしてくれそう」
「ホー、お前は沖矢昴のほうが良いのか」
「いやそういうことを言ってるんじゃなくて…」
すると赤井はソファから立ち上がるとゆったりとした歩調でこちらに近づいて来た。――嫌な予感がする。
名前は本能的に後ずさった。
「何故逃げる?」
「いやぁ、私の本能が今の赤井さんと一緒にいるのは危険だと信号を発して…」
「よくできた本能だ、大事にしろ」
「えっちょっ…ぎゃああああああ!!!」
後日贈られてきたクリスマスプレゼントはネックレスであった。
――疑ってごめんね赤井さん。