ダイゴ(CR主)

 その日、ダイゴは自宅で寛いでいた。仕事も珍しく全て片していたので、誰にも邪魔されずに石磨きに専念していた。しかしふと、意識が別の方向に向く。遠くのほうでがちゃりと音が立ったのだ。玄関だろうか、誰かが開錠したらしい。この家の鍵を持っているのは家主であるダイゴと、助手の名前しかいない。ということは名前が家にやって来たのだろう。
「? 名前?」
 一体どうしたのだろうと、石をテーブルに置いて立ち上がる。リビングのドアを見るが開けられる気配は一向に無い。不審に思いダイゴはドアを開けた。
 ぽたり。廊下に何かが滴り落ちる。
「は、…?」
 薄暗い廊下に名前は立っていた――血まみれの状態で。
「なっ……」
「ァ…だ、いご、さ…」
 絶句。体が硬直して動かない。目を見開き、眼球が血まみれの名前を捉えて離さない。どうすればいい、どういう行動を取ればいい。考えてみても答えは出なかった。

 ――ぱしゃッ。

 刹那、間抜けなシャッター音が響いた。
「え?」
「ナイスですよポワルンー。いやーダイゴさんのあんな間抜けな顔、中々拝めませんよー」
 するとそれまで微動だにしなかった名前が、普通に動いていつの間にいたのか頭上にいたポワルンの頭を撫でていた。が、ハッとして彼女は手を退ける。
「済みません、血糊がついてしまいますねー」
「は……ええええええええええ!?」
 カメラを持ったポワルン、血糊をかぶった名前。そして、
「ル、ルカリオくん…」
「がう」
 “ドッキリ大成功”と書かれた看板を持った彼・ルカリオは「ざまあみろ」とばかりにあくどい笑みを浮かべている。
「いやー結構良い表情でしたよダイゴさーん」
「〜〜〜〜〜君ねえっ!!本当にびっくりしたんだから!!」
「びっくりしてもらわないとこっちもやった意味ないですよー」
「ぐっ…」
「で、本題はこっちです」
 名前はスッと手をこちらに差し出す。
「トリックオアトリート、です」
 もう充分イタズラしてるんだし勘弁してくれよ、と思ったものの、ダイゴはなんだか疲れてしまったので素直にお菓子をキッチンに取りに行った。
「来年はどんな風にダイゴさんを陥れましょうかねー」
「がう!」
「お願いだからやめてッ!?」