02
土いじりをしたのは初めてだった。それは錦も同じだったようで、四苦八苦しながらスコップで土を耕していた。この面白味もない世界において、二人でスコップ片手に花壇作りに勤しむのはなんと滑稽なことか。ウルキオラは何故自分がこんなことをしているのだろうと自問してしまった。「あとは種を植えたら終わりだな」
嬉しそうにする錦を眺め、袋から小さな種を取り出す。こんなものから図鑑に載っていた花が咲くとは到底想像できない。中の構造はどうなっているのだろう。少しだけ不思議に思った。
二人で種を植え、ジョウロで水をやる。種が成長し、花を咲かせるには水と太陽が要るというのは知っていた。水は調達できるが太陽は虚夜宮の人工物で事足りるのだろうか。錦に言うべきか迷ったが結局言葉にはならなかった。楽しみにしている錦の笑顔をそんなことで枯らせる必要はない。たとえ芽が出ず、花が咲かなかったとしてもいざとなればどうにでもなるだろう。
と、らしくもなく彼女に対して気遣いの色を見せていると、背後に霊圧を感じた。
「なーにやってんの?」
男にしては少し高めの声。ルピ・アンテノールのものだと分かるやいなや、錦はぴくりと肩を震わせた。案の定、仲は上手いこといっていないらしい。
「四番さんまで一緒に花壇作り?アホくさ!」
「…私がウルキオラと一緒に何をしようが関係ないだろう。放っておいてくれ」
「はァ?僕、君のお守り任されてんだよ?放っておけるわけないじゃん!ていうか言われなくても藍染様の命令がなかったら放っておくしむしろ殺すよ!」
「お喋りな男は嫌われるぞ」
「ホンットにムカつくなお前!!」
錦の胸倉を掴むルピ。意外なことに錦は動じなかった。やられ慣れているのかそれとも度胸があるのか。いずれにしろ知る術はない。
「やめろルピ」
その腕を掴めば、彼は不満そうに歯軋りして睨みつけてきた。
「意味分かんない!いくら藍染様に言いつけられてるからってさァ!僕らがこんな奴護ってやる必要なくない?」
「それはお前が決めることじゃない」
「藍染様がお決めになることだ、って?ハッ…馬鹿らしい」
ルピは舌打ちをすると憤慨しながら踵を返した。どうやら花壇作りの邪魔をしに来ただけだったらしい。
六番を任される破面はどうしてああも気性が激しいのだろう。やれやれと息をついて、ちらと錦を見やる。そこに咲いてあった笑顔は萎んでいた。
「一々気にする必要はない」
グリムジョーならこういう時、何と声をかけるだろう。
「……残りの種をさっさと植えるぞ」
「……………、ああ」
無理に作った笑顔はあまり好ましくなかった。