こころに寄り添う言葉たち

※明確な一織表現あります。苦手な方はブラウザバックをお願いします。
※一護が結構情けないです。
※ただのギャグ。
※小説「BLEACH Can't Fear Your Own World」後。



 その日、黒崎一護は重苦しい表情をして虚圏へと降り立った。すぐさま彼の霊圧に気づいたネリエル・トゥ・オーデルシュバンクが飛びついてきたが、生憎今日の一護はそれに対応できるほど心に余裕はない。
「ネル、グリムジョーってどこにいるんだ?」
「えっ?グリムジョー?自分の宮にいると思うけど…」
 まさか一護がグリムジョーに会いに来るなんて思いもよらなかったのだろう、ネリエルは大きな目を更に大きくして一護を見つめた。
「あいつに用事なんて珍しいね?…はっ!何か嫌なことされたの!?」
「いやちょっと話というか…………まあいいや、ありがとな!」
「あっ一護!」
 詮索されると困るため、一護は瞬歩でかつては藍染の城だった虚夜宮へ向かった。
 虚夜宮はところどころ外壁が崩落していたものの、よく見ると補修されているところもあり、ハリベルやネリエルが修繕を誰かに頼んだことが予測できた。頭上は相変わらず模造の空だが、本物と遜色ない蒼さだ。一護は澄んだ蒼を一度仰いでからグリムジョーの霊圧が感じられる方向へ歩を進めた。
「ここか」
 損傷が少なく綺麗な宮から破面と死神の霊圧を感じる。もしかして錦が来ているのかもしれないと思い至り自分の間の悪さを申し訳なく感じたが、ここで戻るという選択肢はない。今日の一護は強い決意で虚圏へ踏み入れたのだ。この程度で帰るわけにはいかない。彼らがいるであろう部屋に向かう途中、花壇を発見し虚圏にもこういうものがあるのかと一瞬視線を奪われた。
 さて、どうやら目的の部屋まで辿り着いたらしい。ドクドクと心臓が嫌に鳴っている。一度深呼吸をしておそるおそるドアノブに手をかけたその瞬間―――ばん!と大きな音を立ててドアが開いた。
「何の用だ」
 とんでもなく不機嫌な声で一護を威嚇するのは、目的の人物であるグリムジョー・ジャガージャック。だが彼はいつもと違い、上半身は裸で下は黒いズボンを履いており帯刀していない。髪が濡れて前髪がいつもより垂れていることから、直前までシャワーを浴びていたのだと察せられた。
「と、突然来て悪いなグリムジョー。ちょっと話したいことがあってよ」
「帰れ」
「いやそんなこと言わずに頼む!このとおり!」
「あァ?!うぜえ!帰れ!」
「うぜえ?!人が頭下げてんのにその言い方はねえだろ!」
「誰も下げろなんて言ってねえだろ!てめぇが勝手に下げたんじゃねえか!」
 今日はいつにも増して取りつく島もない。そんなに邪険にしなくてもいいだろうと流石の一護も苛つく。そんな折ふとグリムジョーの背後から「……るさい…」と小さな声が聞こえた。次いで何か布が擦れるような音と、ペタペタという素足の音。
「………ん〜………………なあに……………」
 部屋が暗くて分かりづらいが、錦が寝ぼけ眼を擦りながら近づいてきた。「よぉ錦、突然悪い…」挨拶をしようとした一護はギョッとした。
 おそらくグリムジョーの服だろう白いシャツを着ている錦。当然ながらサイズは合っていないので首や肩が丸出しだし、下を履いていないので短いワンピースでも着用しているような感じで太ももまで露出している。更に見えている部分には噛み跡やらキスマークやらが付いていてどう考えても―――。
 答えに至る瞬間、凄まじい痛みが一護の顔面を襲った。完全に不意打ちだったため派手に後ろに倒れて壁に激突した。痛みのあまり悶えるが間髪容れずにグリムジョーの罵倒が飛んでくる。
「見てんじゃねえ殺すぞッ!!!」
「おっ俺の所為じゃねえだろ!」
「チッ!!ンのバカ錦!お前何でいつも寝起きはそんなバカになんだよ!!」
 グリムジョーに両頬を掴まれ漸く目が覚めたらしい錦が、漸くまともに一護を認識する。
「ひゃわーーーー!!くくく黒崎!!何で!?!」
 首まで真っ赤になった錦が慌ててグリムジョーの背後に回った。
 そして、数分後。宮外。
 服を正した錦がものすごい剣幕で一護の胸倉を掴む。
「さっきのは見てない何も知らない。いいな?」
「お、おう…」
 一護としても己の身の為に知らなかったことにしたい。危うく彼女の先程の姿を思い出しそうになって赤面しかけた。
「で、わざわざ何しに来たんだよ。てめぇがここに来るってことは余程のことだろ」
 意外にも脱線した話を戻すグリムジョー。
「実はお前に相談があって来たんだ」
「あァ?」
 意を決し、一護は口を開く。
「ッお前!どうやって錦に告白したんだ?!」
「…………………………………は?」
 そう、これだ。これが訊きたいが為に一護はわざわざ虚圏にやって来た。
 黒崎一護は井上織姫に告白しようと考えていた。だが決意したは良いものの、何と言えば良いのか非常に迷うのだ。相談したくとも学友たちに恋バナなんて恥ずかしくて話せないし、恋次や浦原は絶対にからかってくる。父親は論外。他に頼れる者といえば―――と考えを巡らせた折、グリムジョーを思い出したのだ。
 種族の違いがあっても錦と心を通わせた彼なら、何か良いアドバイスでもくれるのではないかと。
「そういうわけでお願いします!!!」
「チッ、くだらねえ。帰れ」
「そこをなんとか!!!!」
 ものすごく呆れた目を向けるグリムジョーに対し怯みそうになるが、こんなところで負けるわけにはいかない。
 睨み合いの末、遂に彼が溜息をついた。
「んなもん適当に部屋連れ込んでヤッとけよ」
「はぁ!?できるわけねーだろ!!テメー錦にもそうしたのかよ!?」
「するわけねえだろ」
「じゃあ何で言ったんだよ!?!?」
 とんでもない発言に顔を真っ赤にして怒鳴れば、グリムジョーは思案げに目を細めじっと一護を見つめたのち、つまらなさそうに
「…てめぇ童貞かよ」
 と呟いた。
「はぁ!?どっどっドーテーじゃねえし!!」
 動揺のあまり声が震えた。それを聞いた彼の表情は“あ、コイツ本当に童貞なのか”と物語っており、先程と違い少し面白がっている節があった。
「お、俺のことはどうだっていいだろ!ったく碌でもねーなお前!……錦!」
 このままではアドバイスも何もないのでまだ眠そうな彼女に声をかける。
「お前なんか良い案ないか?こう、言われたら嬉しいワードとか…」
「……黒崎」
 名を呼ぶやいなや、錦はゴン!と一護の頭に拳を落とした。突然の凶行にグリムジョーでさえ「…お前急にどうした」と目を丸くして彼女を見つめる。
「ッてぇえええ!!何しやがる!!!」
「その時点で駄目だ」
「はぁ!?」
 仁王立ちし、拳を解いて一護を指差す錦。
「異性におすすめの告白の言葉を訊くなんて本当に駄目なやつだ!お前は!!」
「えっ」
「ふん、このままだと贈り物でさえ、他所の女が選んだものをそのまま恋人に贈りそうだな。……却下だ!!」
「なっ……それのどこがダメなんだよ」
「じゃあ訊くが黒崎、もし井上の心を打つような告白の言葉を言ったとしよう、『黒崎くんは素敵な言葉を知ってるね』と言われた時『ああ、錦におすすめの告白の仕方を訊いたんだ』だなんて返せば井上はどんな気分になる!」
「え?そりゃ…錦は物知りなんだなーと…」
「馬鹿ッ!!!!」
 ズドン!
「ぐぼぇっ!!て、テメェ……いきなり膝入れてんじゃねえぞ……」
「貴様まさか、自分の好きな女が清廉潔白、純粋で嫉妬なんてしない者だと思ってるのか?」
 最早侮蔑すら含んだ目を向けてくる錦に、一護はぐっと喉を上下させる。
 織姫は嫉妬などといった感情と無縁そうに見えるのが正直な感想だ。しかし、考えていみれば人間だし、一護が知らないだけでそういうわけはないのだろう。
「しかも告白なんて大事な場面をわたしに相談するなんて、余程親しいと思われても仕方ない!贈り物も然り!どこぞの馬の骨とも知らぬ女の趣味嗜好が入ったものを渡すなんて言語道断!」
「な、ナルホド…!」
 急に暴力的になって一体何なんだと思ったが、確かに錦の言うことには一理ある。一護も、もし織姫が自分の為に贈ってくれたプレゼントが知らない男の趣味嗜好が入り、それどころか一緒に買いに行ったともあれば嫉妬でおかしくなりそうだ。二人っきりで大事な相談という点も、肝心なところではその者に頼ってしまうという意味だ。つまり心理的に依存していると言っても良い。
 考えもしなかったことなので思わず錦に尊敬の目を向ける。
「……終わったか?」
「うわグリムジョー!いたのか!」
「殺すぞ」
 元々彼に相談を持ちかけたことをすっかり忘れていた。だが思わぬところで尻を蹴られたおかげでヒントを見つけることができた。「ありがとな錦。ちゃんと自分で考えてみるよ」「…別に下手でベタだったとしても井上はそれを馬鹿にしたりしない」「そうだな」自分で考えて伝えるということが大事なのだ。
「あ、そういえば」
 そこでふと、思いつく。
「結局お前らはどうやってくっついたんだよ?」
 ピシリ。同時に硬直する二人。その様子に一護は先程の仕返しとばかりにニヤニヤと口角を上げた。
「参考までに教えてくれよ?」
 するとおもむろにグリムジョーが腕を上げ、掌を一護に向けた。破面特有の霊圧が収束してゆく。キュォ、と独特な音が鼓膜を揺すぶった。
 ―――おいちょっと待て。
「虚閃」
「テメー!!!!!!」
 慌てて瞬歩でその場を去った直後、一護の少し頭上を青い閃光が通り過ぎた。危なかったと息を吐き、適当なところで立ち止まる。もう宮は随分離れてしまったし、また彼らの元へ戻るのも変な話だ。このまま帰ることにした。
「にしてもちょっとくらい教えてくれても良いのによ〜」
 あの二人がくっついた経緯を一護は知らなかったため、何気に気になっていたのだ。だがまあ、二人だけの秘密というのも良いだろう。
 告白が終われば今度礼のつもりで菓子折りでも持ってこようと、気分良く踵を返した一護なのであった。
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